出産時に”コンニチハ”した「いぼ痔」…どうしたら引っ込んでくれる?
便秘がひどくてトイレで長時間息んでいるうちにすっかり痔になってしまい、痛くてさらに排便しづらくなった、出産を機に痔になって、そのまま治らずに悩んでいる…。
30〜60代の幅広い世代の女性のなかには、こうした「痔」の症状に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
そんな自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「痔疾患」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
産後のデスクワークでアソコに激痛が…誰にも言えない「痔」の悩み!
綾子さん(38歳女性)、会社員の方からご質問をいただきました。
一昨年、待ち望んだ第一子をようやく出産し、昨年、慣れ親しんだIT企業に職場復帰した私。時短制度も利用しているので以前ほど激務ではないものの、同僚より早い退社時間までに仕事を終わらせなければと焦りながら日々デスクワークをこなす毎日です。そんなわけで、仕事自体はやりがいがあって楽しいのですが……。
最近私、人には言えない悩みを抱えているんです。
それは、ぴょこん、とお尻の穴から飛び出す”いぼ痔”の悩み。妊娠してお腹の大きくなった頃に肛門部に違和感を感じたのを皮切りに、出産時の息みで見事に”コンニチハ”してしまったいぼ痔が引っ込まなくなってしまったんです。産後もバギーなど重い荷物を持っての移動などが続き、治らないまま仕事に復帰したせいか、座っていると痛みが……。
周りにはキラキラ女子的な若手の後輩が多く、こんなことで悩んでいるのは私だけでしょうし、痛む場所が場所だけに、気安く誰かに相談することもできません。
1日も早くこの不快な痔を改善して穏やかな気持ちで過ごしたいのですが、何か良い方法はないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
妊娠・出産期を経た女性は痔になりやすいため、痔の症状に悩む方はまれではないのですが、肛門周辺の疾患でもあり、相談できないまま悪化させてしまう方も多いようです。
今回は痔疾患の原因や改善方法について詳しくお伝えしていきましょう。
妊娠・出産期と便秘による肛門部うっ血が痔の誘引に
痔には、「いぼ痔(痔核)」「きれ痔(裂肛)」「痔ろう」などいくつか種類があり、患部の位置によって肛門の内側に発生する内痔核と、外側に発生する外痔核に分けられます。
原因としては、冷えや長時間のデスクワークなどによる肛門部のうっ血などが挙げられますが、女性は特に痔になりやすいといわれています。
これは妊娠中〜後期や出産時に大きくなる子宮によって肛門が圧迫されたり、肛門周辺がうっ血しやすくなったりすることや、便秘によっていきむことが増えることが原因だと考えられます。
また東洋医学では、肛門周囲の「血(血液)」の巡りが滞って血瘀(けつお)が生じ、「気(生命エネルギー)」の巡りも悪化するために痔疾患が起こると考えられています。
次の章では、「痔疾患」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきます。
痔疾患を予防・改善する3つのセルフケア
1.便通の改善をし、規則正しい排便習慣を
痔を悪化させないためには、長時間のいきみの原因となる便秘を解消することが大切です。
食物繊維や発酵食品などを取り入れた栄養バランスの良い食事に加え、水分をしっかりと摂るようにしましょう。
特に女性はダイエットのために厳しい食事制限をしたり、食事回数を減らしたりする傾向から便秘に悩む方も多いため、注意が必要です。
規則正しい排便習慣を身につけるためには、朝ごはんを抜いたりせずに毎朝決まった時間にしっかり摂ることや、起床後すぐに白湯や水などの水分を摂って腸の働きを高めことが良いでしょう。
2.体を温めて肛門部のうっ血を改善しましょう
冬の時期には痔が悪化する方も多いことからも、冷えと痔疾患には密接な関係があると考えられています。体が冷えることで肛門周囲の筋肉や血管が収縮し、うっ血から痔ができやすくなったり、痛みが出やすくなったりします。
入浴はシャワーで済ませず、ゆったりと湯船に浸かって全身の血の巡りをよくすることで、肛門部のうっ血を改善させるように心がけましょう。
3.長時間のデスクワークや心身の緊張に注意
デスクワークや作業など、同じ体勢で長時間作業をすることも、痔疾患を悪化させる原因になります。
長い時間座り続けることで肛門部が圧迫されると、肛門周囲の細かい毛細血管の血流が滞ってしまうため、血流が悪化してうっ血を招いてしまいます。
仕事中であっても、こまめに休憩をとってストレッチなど軽い運動をするようにしましょう。
また、肉体的な疲労や精神的ストレスによって筋肉が緊張することも血流の悪化につながります。日頃からオンとオフのメリハリをつけ、心身ともに休める時間を持つことが大切です。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
痔を改善するためには、軟膏を塗布するなどのセルフケアや肛門科での治療に加えて、体質の改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、乙字湯(オツジトウ)です。いぼ痔や切れ痔により排便時に痛みを生じる方の肛門周囲の血の巡りを良くしてうっ血を取り、便通を良くして症状を改善する効果があります。
また硬いコロコロした便が出がちで、切れ痔の症状のある方には、腸を潤して便を軟らかくし便を出しやすくしてくれる麻子仁丸(マシニンガン)も良いでしょう。
便通を改善し、体を温めて「うっ血」体質の改善を
今回は、痔疾患の改善方法や漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、便通の改善に加えて体を冷やさないようにすること、長時間のデスクワークやストレスを避けることなどが大切です。
食習慣や生活習慣を見直しをしつつ、全身の血の巡りを良くするように心がけましょう。
また、こうした痔の症状にまつわる悩みには、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。