辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)は蓄膿症によく使われます

漢方事典

「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)蓄膿症によく使われます」

処方のポイント

呼吸噐の熱を下げる石膏・黄芩・山梔子を中心に、呼吸器を潤し鎮咳作用をもつ麦門冬・百合・枇杷葉、鼻の通りを改善する辛夷等多くの呼吸墨の炎症を抑える作用の生薬で構成されます。鼻づまり、汁が黄色い蓄膿症、黄色い痰等の呼吸器の炎症に適応します。甘辛味です。

辛夷清肺湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症。

漢方的適応病態

1)肺熱の鼻淵。すなわち、鼻づまり、膿性の鼻汁、頭痛、口渇、咽痛などの症候。

2)肺熱、肺陰虛。すなわち、咳嗽、粘稠で黄色の喀痰、呼吸促迫、口渇、咽痛などの症候。

辛夷清肺湯の組成や効能について

組成

辛夷3石膏6黄芩6山梔子6知母6枇杷葉3麦門冬6百合6升麻1.5

効能

清肺瀉熱・散結

主治

肺熱蘊結(鼻痔)

◎清肺瀉熱・散結:肺に停滞した熱邪を清し、熱邪による積滞を取り除く治法です。

◎肺熱蘊結:肺経に熱邪が滞っている病証を示します。

◎鼻痔:鼻腔内に生じる贅肉の腫れものの総称で、症状は鼻づま、鼻水が多い、臭覚の減退などです。主に肺経の風邪、熱邪、湿邪が鬱結したためにおこる病気で、西洋医学の鼻ポリープに相当します。

解説

辛夷清肺湯は湯液のほか、散剤の「辛夷清肺散」と飲剤の「辛夷清肺飲」の2種があり、主に「鼻痔」を治療する処方として広く活用されています。

適応症状

◇鼻づまり

熱邪、風邪、湿邪が鬱結して、肺気の流通を塞ぐと、肺の竅である鼻腔がつまります。既存の「鼻制も直接に鼻づまりの原因となります。

◇鼻水

肺経に熱邪が停滞すると、肺の宣発・粛降機能が乱され、津液の流れが滞り、鼻水が出ます。肺熱が強いときは、鼻水が黄色く粘って濃くなることが多いです。

◇頭痛・頭重

肺熱と湿邪が上昇し、清竅(清陽の集まる所頭部)を塞ぐと頭痛、頭重などが現れます。

◇舌尖紅・舌苔黄

舌尖部は心、肺を代表する部位です。舌紅苔黄は邪気の性質が熱であることを示します。湿邪が多い場合には膩苔となります。

◇脈滑数

滑脈は鼻腔内に鼻痔などの異物撕在することを示し、数脈は熱邪を示します。

辛夷は辛夷清肺湯の主薬で、その芳香性により肺気を宣発し、風邪を発散し、鼻竅を開いて鼻づまり、鼻水など鼻の諸症状と頭痛を治療します。石膏、黄芩、山梔子、知母、枇杷葉は肺熱を清します。熱邪の除去により、肺の宣発·粛降機能が回復すると、鼻の症状が消え特に黄色い鼻水がきれいになります。知母、枇杷葉麦門冬、百合は潤いのある潤肺止咳薬です。肺は乾燥を嫌い湿潤を好む臓腑で、肺疾患の治療には潤いのある薬を配合することが多いです。潤性によって、鼻腔の乾燥備燥症状)を治療します。4薬はすべて止咳作用を有しているので、鼻の症状がなくても、咳嗽、痰(特に黄色い痰)がみられれば用いることができます。升麻は清熱解毒作用によって、熱毒による鼻瘡などを治療します。また上昇の力によって、薬効をひきあげ上部の疾患に作用させます。

臨床応用

◇鼻の諸症状

清熱薬が多く配合されているので、鼻淵(蓄膿症)、鼻鼽(アレルギー性鼻炎)、鼻窒(慢性鼻炎)、鼻痔濞ポリープ)、鼻瘡(鼻のおでき)などに広く用いられます。主として熱証(鼻水がやや黄色い、鼻に熱感がある、頭痛、口渇、舌紅苔黄、脈滑数など)に対して適応します。

潤肺薬も多いので、鼻が乾燥する、鼻が臭うなどの萎縮性鼻炎に用いてもよいです。

◇咳・痰

潤肺止咳薬が多く配合されているので、肺燥、肺熱の症状(咳嗽、痰が黄色い、あるいは痰が少ないなど)にも用いられます。例えば感冒による気管支炎などを治療することもできます。

注意事項

辛夷清肺湯は寒凉薬が多いので、寒性症状(悪寒、痰が薄く白い、舌淡白など)には不適当です。この場合は「小青竜湯」を用います。

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