牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は女性の頻尿、過活動膀胱の症状に

泌尿器症状

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、中国南宋時代(1127年~1279年)の漢方書『済生方(さいせいほう)』に記載されている漢方薬です。

冷えに適応する八味地黄丸(はちみじおうがん)に、水分循環を改善し余分な水分を取る牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)という生薬を加えたものです。八味地黄丸より水分代謝力が強化され、夜間頻尿、下肢のむくみ、冷え症、腰痛等に適応します。

酸味のある甘辛味で、温服が効果的です。

頻尿や過活動膀胱に対する効果

牛車腎気丸は、体力がなく、冷え症で痩せ型タイプの「虚証」体質の女性の頻尿に対して、効果が期待できます。尿路感染などの器質的疾患がない場合の過活動膀胱の症状に対して、用いることがあります。

また、閉経後の女性の細菌性膀胱炎に対しても、虚証体質の場合は牛車腎気丸が適しているとされます。

牛車腎気丸を服用し、効果が出るまでの期間は、体質や症状により異なります。一般的に、1か月ほど使用し、症状の改善が見られない場合は、漢方薬の服用をやめ、医師や薬剤師などに相談してください。

牛車腎気丸と八味地黄丸の使い分けは?

牛車腎気丸と八味地黄丸の生薬構成は似ていて、一部共通しています。牛車腎気丸には、牛膝、車前子など、利尿作用のある生薬が加えられています。

牛車腎気丸と八味地黄丸の主な使用目的は排尿トラブルなどですが、浮腫や末梢神経障害が目立つ場合は牛車腎気丸を、尿量減少や夜間頻尿、浮腫、下肢痛が軽い場合は八味地黄丸を使用します。

漢方薬の使い分けは体質によっても異なるので、飲む前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

牛車腎気丸で副作用は起こる?

牛車腎気丸で起こり得る重大な副作用として、間質性肺炎と肝機能障害があります。これらの副作用は非常に稀で、めったに起こるものではありませんが、間質性肺炎は空咳、呼吸困難、肺音異常などが、肝機能障害は黄疸などが症状としてあらわれます。

また、比較的軽度な副作用としては、胃部の不快感、食欲不振、吐き気、動悸、のぼせ、発疹、かゆみなどが起こる場合があります。

漢方薬を飲んで不調がみられる場合は、すぐに服用を中止し、なるべく早いうちに医療機関を受診してください。

牛車腎気丸が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少。
尿で時に口渇のある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、むくみ。

漢方的適応病態

腎陽虚の水腫。すなわち、八味地黄丸の症候に、下半身の水腫を伴うもの。

牛車腎気丸の組成や効能について

組成

「八味地黄丸」+牛膝3 車前子3

効能

温陽補腎・利水活血

主治

腎陽不足・水湿停滞

解説

牛車腎気丸の出典は『済生方』であるため、「済生腎気丸」とよばれることもあります。
腎陽を温補する「八味地黄丸」に活血の牛膝と利水の車前子を配合することによって、活利水作用が増強され「八味地黄丸」の各種適応病証にも使用することができます。

臨床応用

◇腰痛・膝痛

膝痛治療の専門薬である牛膝が配合されているので、腎虚、あるいは老人性の腰痛、膝痛に用います。
利水作用も強いので膝に水がたまる症状にも効果があります。

◎痛みが強いとき+「疎経活血湯」(活血通絡)

◇慢性腎炎

活血作湘によって腎機能が改善され、利水作用によって浮腫を治療することが持されます。

◇前立腺肥大

補腎作用によって疾病の根本を治療し、活作用によって前立腺を縮小させ、利水作用によって停留している尿を排出することができるので、老人性の前立腺肥大に適します。

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