冷え性の女性のお腹の痛み、月経痛には当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)

漢方事典

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は、下腹部の痛みや月経痛、痔などに用いられる漢方薬です。主に虚弱体質で冷え性の女性の月経痛に処方されます。

当帰建中湯を構成する生薬

当帰建中湯は、腹痛や下痢などに用いられる桂枝加芍薬湯芍薬(けいしかしゃくやくとう)に、婦人病の漢方薬によく配合されている当帰(とうき)という生薬を加えた漢方薬です。

芍薬(しゃくやく)、桂皮(けいひ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、そして当帰の計6種類の生薬で構成されています。

痩せる?お腹の冷えには?当帰建中湯の効果

当帰建中湯は血色の悪い人や、手足が火照る、あるいは冷える人に適しています。具体的に期待できる効果や、飲み方のポイントを紹介します。

当帰建中湯は食欲不振や下痢症状に適している

当帰建中湯の「建中」とは不調を建て直すという意味合いがあります。生薬のひとつとして含まれている当帰には体を温める効果があり、よくお腹が冷えてしまう人(とくに女性)に適しています。食欲不振や下痢など、消化器の冷えが原因で起こる症状に対して効果的です。便通をスムーズに排出する作用もあり、緊張型便秘に処方されます。

当帰建中湯に過度なダイエット効果を期待してはいけない

当帰建中湯は身体を温め、血行を促進する働きがあります。お腹の緊張を取り、大腸の活動を正常化するために用いられることもありますが、いわゆるダイエット薬とは異なります。便秘が改善され結果的に痩せることはあっても、「飲めば飲むほど痩せる」といった類のものではありません。

過剰な服用は身体のバランスを崩すことにもなりかねないので、必ず医師や薬剤師に相談し、服用しましょう。

当帰建中湯と当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の違いは?

当帰芍薬散は、当帰建中湯と同じく当帰や芍薬が含まれる漢方薬です。身体を温め、血の巡りを良くする効果があります。当帰建中湯との使い分けは、体力低下がポイントです。疾患や術後で体力が落ちている場合は当帰建中湯を、体力低下はそこまで目立たずめまいや貧血、むくみなどを伴う場合には当帰芍薬散を使用します。

当帰建中湯の副作用

当帰建中湯は甘草を含んでいるため、偽アルドステロン症による高血圧やめまい、低カリウム血症、ミオパチー(筋肉疾患)などが現われる場合があります。甘草を含む他の製剤との併用には注意が必要です。異常を感じた場合は、ただちに医師や薬剤師に相談してください。

処方のポイント

消化器を温め痛みを軽減する「小建中湯」に、血行改善と止痛作用をもつ当帰を加えたもの。
食欲不振や下痢等、消化器の冷えから起こる症状に適応します。
打撲痛などにも応用されます。
甘辛味で、温服が効果的です。

当帰建中湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

疲労しやすく、血色のすぐれないものの次の諸症:月経痛、下腹部痛、痔、脱肛の痛み。

漢方的適応病態

血虛の腹痛。すなわち、顔色がさえない、不活発、やや疲れやすい、食が細いなどの体質で、ときに腹痛(臍周囲の痙攣性疼痛が多い)があり温めたり押さえたりすると軽減するものです。
さらに皮膚につやがない、しびれなどの栄養不良状態(血虚)を伴うもの、特に産後の衰弱や月経困難症に適しています。

当帰建中湯の組成や効能について

組成

「小建中湯」+当帰9

効能

温中補血

主治

産後血虛

解説

「小建中湯」に補血作用の優れた当帰を加えた処方です。
女性の産後虚弱、腹痛など血虚症状をともなうときに用います。
出産直後5日間ぐらい服用すれば、出血による産後の脾虚体弱を回復することができます。

臨床応用

◇産後虚弱

補血作用の強い当帰が配合されているので、産後の虚弱症状、特に顔色が白い、力が入らない、眩暈など血虚症状が強いときに適しています。

「小建中湯」には止痛作用があるので、腹痛と食欲不振の症状をともなうときに使いやすいでしょう。

◇月経不順・月経痛

当帰は婦人科疾患によく用いられる薬です。
桂枝の温通血脈、芍薬・甘草の緩急止痛作用も婦人科の症状を改善します。
温補中気の「小建中湯」は脾胃虚弱症状に効果があるので、食欲不振胃痛などの症状をともなう生理痛、生理不順に適しています。

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