ニキビやシミなどの肌トラブルには桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)は、血(けつ)が滞った状態の「瘀血(おけつ)」に対処する桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)と、水(すい)の巡りが悪い「水滞(すいたい)」を改善する薏苡仁(よくいにん)を合わせた処方です。
目次
桂枝茯苓丸加薏苡仁を構成する生薬
桂枝茯苓丸加薏苡仁は、桂枝(けいし)もしくは桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)を中心に、芍薬(しゃくやく)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)で構成される桂枝茯苓丸に、ハトムギの皮を除いた種子である薏苡仁を加えたものです。
桂枝茯苓丸加薏苡仁はどんな効果が期待できる?
桂枝茯苓丸加薏苡仁は瘀血・水滞状態を改善する目的で、さまざまな不調に用いられます。代表的な使用目的を見ていきましょう。
ニキビやシミ治療に
血の巡りが滞ると、肌に必要な栄養素が十分に行き渡らなくなり、肌トラブルの原因になります。ニキビや吹き出物ができやすくなったり、新陳代謝が低下した結果メラニンが蓄積され、シミの原因にもなります。
桂枝茯苓丸加薏苡仁で血行不良を解消することでターンオーバーを正常化し、栄養素を行き渡らせることができます。
利水作用によってむくみを改善
不要な水が排出されず、身体に溜まって停滞した状態が水滞です。水滞はむくみの原因になります。顔だけでなく、ふくらはぎや足首など下半身もむくみやすい場所です。また、頭痛、頭重、めまい、頻尿などの要因にもなります。
水滞は手足の冷えの原因にもなりますが、頭がのぼせて下半身が冷えるといった「冷えのぼせ」にも桂枝茯苓丸加薏苡仁が処方されます。
婦人病にも用いられる
桂枝茯苓丸加薏苡仁は月経時や出産前後、更年期のイライラや精神不安などにも用いられ、婦人薬としても有名です。
また、子宮筋腫や卵巣嚢腫等の治療にも使用されます。中医学では子宮筋腫や卵巣嚢腫は瘀血の症状であり、血の巡りを改善することによって、それらの症状を軽減したり、和らげていきます。
卵巣機能を活発化させることによって女性ホルモンの分泌を促す効果があり、不妊治療にも用いられます。
桂枝茯苓丸加薏苡仁と他の漢方薬との違い
ここからは、桂枝茯苓丸加薏苡仁とよく比較される漢方薬との違いについて解説します。
薏苡仁と桂枝茯苓丸加薏苡仁の違い
桂枝茯苓丸加薏苡仁は「桂枝茯苓丸+薏苡仁」の処方です。薏苡仁単体では、主に肌荒れの改善を目的として使用します。肌の血行不良を改善し、新陳代謝を高め、ニキビやシミ、肌荒れを改善します。
桂枝茯苓丸を加えた桂枝茯苓丸加薏苡仁は、瘀血に伴う頭痛や肩こり、冷えのぼせなどの諸症状にも用いられます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)と桂枝茯苓丸加薏苡仁の違い
月経異常、頭痛、めまいなどの症状は共通していますが、体力に余裕がある場合は桂枝茯苓丸加薏苡仁を使い、体力が低下し、不安やイライラなどの精神神経症状が目立つ場合には加味逍遙散を使用します。
痩せる?副作用は?桂枝茯苓丸加薏苡仁の疑問と回答
続いては、桂枝茯苓丸加薏苡仁を使用する上での注意点などを解説します。
桂枝茯苓丸加薏苡仁を飲み続けるとダイエットになる?
桂枝茯苓丸加薏苡仁は、むくみの改善は期待できますが、過食や運動不足などが原因の皮下脂肪の蓄積による肥満の改善は望めません。むくみを改善することによって、ある程度見た目がほっそりする可能性はありますが、痩せ薬とは根本的に異なるため、ダイエット薬としては使用できません。
桂枝茯苓丸加薏苡仁の副作用は?
桂枝茯苓丸加薏苡仁の副作用としては、発疹や痒み、胃の不快感などがあります。また、重篤な副作用のひとつとして肝機能障害があります。
桂枝茯苓丸加薏苡仁はいつまで飲み続ける?
桂枝茯苓丸加薏苡仁の服用の目安は1か月程度です。もし効果が全く現れない場合は服用中止して医師に相談しましょう。効果が認められる場合はそれ以上の期間服用する場合もありますが、自己判断せずにまずは医師や薬剤師に相談しましょう。
処方のポイント
血行を調える桂枝茯苓丸に、皮膚の赤みを取り排膿作用をもつ薏苡仁を加えたもの。
冷え症で血行が悪く、膿のあるにきび、シミを始めとする皮膚トラブルにも応用されます。
甘苦味があります。
桂枝茯苓丸加薏苡仁が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどがある次の諸症:月経不順、血の道症、にきび、しみ、手足のあれ。
漢方的適応病態
下焦の血瘀。
すなわち、下腹部の痛みや圧痛抵抗、あるいは腫瘤、月経不順、月経困難、不正性器出血などに、下肢の冷えや静脈のうつ滞あるいは、のぼせ、頭痛、肩こりなどに、炎症、腫瘤などを伴うもの。
桂枝茯苓丸加薏苡仁の組成や効能について
組成
桂枝3 茯苓3 芍薬3 牡丹皮3 桃仁3 薏苡仁6
効能
活血化瘀・利水
主治
瘀血内停・水湿内停
解説
桂枝茯苓丸加薏苡仁は「桂枝茯苓丸」に薏苡仁を加えた日本の経験方です。
利水作用が増加されるので、瘀血と水湿が同時にみられる病証を治療します。
臨床応用
◇痺証
薏苡仁は経藉に侵入した風湿の邪気を取り除くことができ、経絡痺証(手足のしびれ、関節、筋肉の疼痛など)に用いられます。
活血作用があるので、生理痛などの瘀血症状をともなう痺証に適します。
◇浮腫
茯苓、薏苡仁(利水)、桂枝(通陽)、牡丹皮、桃仁(活血)、芍薬(養血)などによって血と水の停滞症状を治療できます。
例えば、肝臓疾患の浮腫、婦人科疾患の浮腫に用います。
◇皮膚疾患
薏苡仁は皮膚疾患に使用されることが多く、瘀血による皮膚のシミ、そばかす、にきびの他、いぼなどの症状に用いられます。