慢性疼痛には運動が効果的?自分でできる痛みの改善方法とは

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痛みはもともと体に対する危険な侵襲を脳が理解することで起きる反応です。痛みを伴う危険な事態をそのまま放置すれば命に関わることもあります。痛みは危険のセンサーなのです。

しかし、痛みのセンサーが誤動作で入りっぱなしになってしまうことがあります。そうなると体に対する侵襲はないはずなのに、痛みを感じ続けてしまいます。ここでは、そのような慢性疼痛について解説します。

慢性疼痛と急性疼痛の違い

疼痛は慢性疼痛と急性疼痛に分かれます。急性疼痛は体に対する危険な侵襲を脳が理解するための反応です。現在体のどこかに傷がついたり、異常なことが起こっていたりすることを示します。急性疼痛では多くの場合、鎮痛薬がよく効き、原因の治療が行われることで痛みが消退します。

一方で、慢性疼痛は3か月から6か月以上続く疼痛のことです。一部は痛みの原因となる異常(癌の存在や、内臓の異常、膠原病など)が持続しているために痛みを感じ続けている場合もありますが、痛みの原因はすでに無くなっているのに痛みを感じ続けている場合もあります。

この場合、痛みの原因を治療すれば痛みがなくなるというものではありませんから、なかなか治療に反応しない痛みを感じていることも多くあります。

慢性疼痛の種類と原因

慢性疼痛にはこれから見ていくように、いくつもの原因があります。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は痛みを伝える神経が傷害されることによる疼痛です。「ジンジン」「ビリビリ」と表現されるような痛みのことで、正座をした後の足のしびれと同じような痛みになります。

この神経障害性疼痛は、急性痛でも慢性痛でも引き起こされます。神経が障害を受けたまさにそのときに感じる痛みも神経障害性疼痛です。この場合、軽度の神経損傷であれば痛みは数分で引きます。正座して足がしびれても数分したらしびれが収まるのと同じことです。

神経が断裂したり、神経自体に傷が入ったりした場合は、実際にその損傷が起こったときにも痛みを感じますが、その後神経が修復される間も痛みを感じることになります。数週間から数か月続くこともありますが、ある程度修復されてくると痛みは徐々に引いてきます。

しかし、一部の神経損傷では修復が終わっても痛みが持続する場合があります。しかも、元々の痛みよりさらに強い痛みを感じることもあります。

神経の修復過程で異常な修復が行われたために起こるとも言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。他の神経異常も合併する複合性局所疼痛症候群と呼ばれる症状を呈することもあります。

中枢性疼痛

中枢性疼痛とは、脳や脊髄が損傷を受けることで引き起こされる疼痛のことです。頸椎症や頭部外傷などで引き起こされます。

皮膚などに痛みを感じる原因はないのに、その部分の感覚を脳に伝える経路の途中で神経に異常が起こることで痛みを感じることが主な機序です。

慢性の中枢性疼痛の中には特殊な状態として、抑制系経路の抑制という特殊な状態が関わる場合があります。元々、痛みを感じることは人体にとって非常に重要なセンサーであることは間違いありませんが、あまり痛みを感じすぎると強いストレスを感じます。

そのため、強すぎる痛みが脳に伝わったとき、それ以上強い痛みが脳に届かないように少し痛みの信号を弱めるように脳は脊髄に指示をします。これが抑制系経路です。痛みを感じすぎないようにブレーキをかけているということです。

しかし、疼痛がずっと続くと、抑制系経路自体が役割を果たさなくなってしまい、痛みの抑制が効かなくなってしまいます。すると、普段であれば痛みと感じない程度の侵襲でも抑止されることなく脳に伝わり、痛みを感じてしまうのです。

心因性疼痛

痛みの場所にも問題が無く、中枢神経にも問題が無い場合には、心理的な理由で痛みを感じている場合があります。

誘因となる痛みがないのにストレスや不安など精神的・心理的問題で生じることが多いのですが、慢性の痛みで長い間悩まされていた人の場合、脳が痛みのある状態が普通だと思い込んでしまい、痛みの原因がなくなっても痛みを感じるという心因性の疼痛が出現することがあります。

一部には前述の抑制系経路の抑制によって起こされる場合もありますが、そうではないこともあり、診断が難しくなります。

その他

線維筋痛症という病気があります。以前に心因性疼痛と診断されていた人の中にはこの病気だった人が多く含まれているのではないかと言われています。線維筋痛症自体はあまり原因や病態がはっきり分かっているわけではなく、現在も研究が進んでいる病気になります。

症状は全身の色々な場所に痛みを感じるのが特徴です。一説では疼痛を感じる脳内での炎症が原因とされ、抑制系経路の抑制も関わっているといわれています。

痛みの悪循環とは

急性疼痛は安静にすることが第一の治療になります。安静にすることで、障害を受けた体の部位の修復を促し、それによって痛みの改善を期待します。

しかし慢性疼痛の場合は、安静にすることでかえって痛みが強くなる場合があります。痛みを感じているときに安静にすると、周囲の筋肉は緊張し、固くなります。固くなった筋肉周囲は血流が悪くなり、修復が阻害されます。

また、収縮して緊張した筋肉はエネルギーを消費しますから、疲労しやすくなり、体を動かすのが大変になります。さらに安静にしていることで精神的にもストレスを感じ、体が重く感じられるでしょう。

痛みやストレスは自律神経の異常を引き起こします。生活リズムの異常による睡眠障害も引き起こされますし、便通異常など、内臓の異常も認められます。

これらの自律神経の異常自体がさらに上記の反応を惹起し、悪化させます。つまり、慢性痛を放置すると体中に影響が出て、どんどん体力が落ち、痛みもさらに悪化するという悪循環に陥るのです。

自分でできる痛みの改善方法

慢性痛の治療には薬物療法やペインクリニックで行ういろいろな治療がありますが、自宅でも行える痛みの改善方法があります。痛みの悪循環を断ち切ることが大きな目的になります。

運動

運動は最もわかりやすい痛みの改善方法でしょう。痛みによって凝り固まった筋肉を動かし血流を良くすることで、周囲の筋肉の痛みを緩和します。

また、ずっと安静にしていることによる精神的なストレスの解放も行われますし、体を動かした後は良質な睡眠が期待できます。自律神経活動の改善も認められるでしょう。

運動と言っても激しい運動である必要は無く、ウォーキングや散歩程度でも、全く運動をしないことに比べたら雲泥の差で効果が認められます。

認知行動療法・瞑想・マインドフルネス

認知行動療法とは、精神的に感じる否定的な気分や感情、ストレスに対して対応するための治療法です。原因をどのように捉えるのか、そしてそれに対してどのように行動するのかを考える方法です。精神疾患に対してのみではなく、身体疾患に対しても行われる治療です。

慢性痛の場合は痛みの原因が何なのかを自身の日々の生活の中で考え、認識します。その際には瞑想やマインドフルネスを行います。マインドフルネスとは、過去や未来のことではなく、今の自分自身のことを深く考えることと考えてください。色々なことを考えるのではなく、今の自分自身を考えることで、何が自分に起こっているのか、何がストレスになっているのかを考えます。認識から始めて、次に行う対策へとつなげていくのです。

痛みに対する理解を深める

認知行動療法を行うためには、痛みがどのような原因で起こるのかを知らなければ現在の自分自身の生活の中で何が痛みの原因になっているのかを認識することができません。

そのため、痛みとは何か、どのように感じるのかといった痛みに関する基本的な知識を得ることで認知行動療法の礎を作ります。その上で認知行動療法を行うと効果が得られやすくなりますし、もしかしたら生活の中で明らかな痛みの原因となっている行動を見つけられるかもしれません。

まとめ

慢性痛の原因はさまざまで、なかなか診断がつかないことも多くあります。そのこと自体がストレスとなり、痛みをより強く感じてしまうこともあるかもしれません。

ですが、種々の検査で痛みが見つかることもありますし、もし痛みの原因が見つからなくても心理的なアプローチで痛みを軽減することもできます。慢性痛に悩まされている方は痛みの悪循環でさらに痛みが悪化する前に、ペインクリニックや心療内科を受診されることをおすすめします。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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