逆流性食道炎におすすめの漢方薬…薬が効きにくいタイプとは?

お悩み

逆流性食道炎は、萎縮性胃炎の減少ならびに生活様式の欧米化に伴って近年急激に増加している疾患であり、高血圧症、糖尿病、肥満とも深く関連していることが指摘されています。

胸焼け以外にもさまざまな症状を訴えて、重篤な場合には日常生活を著しく障害します。

ここでは逆流性食道炎の検査と治療に加え、効果的な漢方薬について解説していきます。

逆流性食道炎の検査と診断

逆流性食道炎は医学用語で胃食道逆流症(GERD)といいます。逆流性食道炎(胃食道逆流症)の診断では逆流の有無を確認します。そのために食道内におけるpH測定や内圧の測定が推奨されていますが、現実的には患者さまの負担が大きく、どこでも実施できる検査ではありません。

そこで他の上部消化管疾患と同じように、簡便に施行できる医療検査として上部消化管X線検査や内視鏡検査が実践されることが多いです。

ただし、これらの検査で逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアが必ず指摘できるとはかぎらず、実際の診断場面では患者さんの症状を重視することもあります。

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療について見ていきましょう。

生活習慣の改善

日々の食事内容や生活様式は胃食道逆流症の罹患率と深く関与していることが分かっています。

逆流性食道炎の症状を悪化させる食品・飲料としては、

  • 高脂肪食
  • チョコレート
  • アルコール
  • コーヒー
  • 炭酸飲料
  • 饅頭

などが知られており、これらの摂取をできるだけ避けることが大切です。

喫煙も下部食道括約筋の圧を低下させて、逆流性食道炎の増悪因子となるのでできるだけ回避するように心がけましょう。腹圧の上昇そのものが逆流のリスクファクターとなりますので、普段から食べ過ぎに注意し、食後すぐ横にならないようにしましょう。

また、日常的に前屈姿勢を避け、就寝時に上半身を挙上させることで胃酸逆流を多少なりとも抑制させることが期待できます。

薬物療法

胃食道逆流症の治療手段として薬物療法も一つの選択肢となります。

具体的な薬物の代表例としては、胃酸分泌を抑制する作用のあるプロトンポンプ阻害薬(以下略称、PPI)や、H2ブロッカーが投与されます。ただH2ブロッカーはあまり症状改善につながらないことが多く、実際にはPPIが広く用いられています。

また、胃内容物の逆流防止や食道運動を促進させる作用を狙って消化管運動機能改善薬を用いたり、食道粘膜を直接的に保護する薬剤もあわせて処方したりします。

近年では、特にPPIによって多くの症例で逆流性食道炎に伴う症状のコントロールが制御しやすくなってきたといわれています。これらの薬物を主治医やかかりつけ医の指示のもと、決められた量を規則正しく服用するように心がけましょう。

外科的治療

これまで述べてきた薬物治療を実践しても症状が改善しにくい、アレルギーなどが原因で薬を服用できない、あるいは服薬を中断すると症状が再燃しやすいなどの場合には手術治療を検討することになります。

手術治療によって症状の改善効果が期待できるかを判断するために、24時間pHモニタリング検査や食道内圧検査といった術前評価検査が必要になってきます。

手術は基本的には全身麻酔下に腹腔鏡を用いて行われます。腹部の皮膚を数か所小切開して、そこから内視鏡や細い手術器具を挿入します。まず、ゆるんだ食道裂孔を縫縮して、胸の中にずれ上がった胃部分を腹腔内に戻し、胃の一部を食道に巻きつけて固定することで機能不全に陥った逆流防止機構を改善させます。

手術時間は2時間程度で、入院期間は通常数日間で済み、退院後しばらくはお粥などの軟らかい食べ物をゆっくり咀嚼して摂取するようにします。

こうした外科的治療の症状改善効果は比較的高いとされ、術後に多くの症例で胃酸分泌を抑える内服薬の服用が不要となるメリットもあります。

胃食道逆流症の分類と薬の効き方

日本消化器科病学会によれば、胃食道逆流症を上部消化管内視鏡検査で粘膜障害のある「びらん型胃食道逆流症」と粘膜障害のない「非びらん型胃食道逆流症」のふたつに大きく分類されています。

粘膜障害を認めるびらん型胃食道逆流症は、ロサンゼルス分類としてGERD:A,B,C,Dに分類されている一方で、粘膜障害を認めない非びらん型胃食道逆流症はGERD-MやNERDと呼ばれています。

胃食道逆流症に関連する症状を呈する患者さんのおよそ40%程度がびらん型であり、残りの60%が非びらん型逆流症(NERD)であるといわれています。

びらん型胃食道逆流症と非びらん性胃食道逆流症の特徴を確認しましょう。

びらん性胃食道逆流症の特徴

上部内視鏡検査で食道粘膜にただれや潰瘍などを認めるタイプが、びらん性胃食道逆流症(いわゆる逆流性食道炎)です。

びらん性胃食道逆流症とは、胃酸が食道へ逆流することにより、食道の粘膜がただれてびらんが引き起こされる病気です。

通常、胃と食道の間には逆流を防止する機能を有する括約筋がありますが、生活習慣や体型などが影響して括約筋の機能が低下することで胃酸や胃の内容物が食道に逆流することでびらん性胃食道逆流症を発症します。

有意な症状としては、胸やけ、胃酸が逆流してあがってくる感じ、むかつきや気分不良、みぞおちや胸の痛みなどの症状がみられますし、喉の違和感や慢性的な咳、それによる不眠などを認めることもあります。

びらん性胃食道逆流症は、早期に治療介入して、生活習慣を改善すれば多くの場合には症状が改善しますが、長期に症状を放置すれば薬が効きにくくなる、あるいは食道がんの発症リスクが上昇します。

非びらん性胃食道逆流症の特徴

びらん性胃食道逆流症と異なり、上部内視鏡検査で明確な異常はないにもかかわらず、胸やけなどの症状のみを認めるタイプを非びらん性胃食道逆流症と呼んでいます。

非びらん性胃食道逆流症は、主に女性、やせ形の人に多い傾向があると言われています。

びらん性胃食道逆流症が、胃酸によって食道粘膜が炎症を起こして罹患するのに対して、非びらん性胃食道逆流症は食道粘膜に炎症は起こしませんが、食道の知覚が過敏になっていて、少量の胃酸や酸以外の液体が逆流しても症状を自覚すると考えられています。

薬が効きにくい非びらん性胃食道逆流症

胃食道逆流症に対する治療方法は、びらん性胃食道逆流症であっても非びらん性胃食道逆流症の場合であっても、同じように胃酸分泌を抑える薬を使用するとともに、生活習慣の改善も行います。

一般的に、胃食道逆流症の治療場面では、胃酸分泌抑制薬が処方されることが多いですが、胃酸以外の液体でも症状を自覚する非びらん性胃食道逆流症では知覚過敏なども影響していることから、びらん性胃食道逆流症と比較して薬物治療が効きにくい傾向があります。

その場合は、胃酸分泌を抑える薬物以外にも、他の薬剤や漢方薬を併用することで自覚症状の改善が見込めるケースもあります。

逆流性食道炎の改善に役立つ漢方薬

逆流性食道炎においては一般的には胃酸分泌を抑える薬を処方しますが、症状がなかなか改善しない場合には漢方薬を使用することもあります

逆流性食道炎に対してよく使用する漢方薬としては半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、六君子湯(りっくんしとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)などが挙げられます。

半夏厚朴湯

半夏厚朴湯の内容構成を見てみると、ほとんどが気の流れを良くする作用を持つ理気薬であり、気の流れを良くすると同時に胃腸の流れも良好にするという発想から生まれた薬剤です。

生薬の数は5つと比較的少なくシンプルな処方内容であり、特にこの薬がマッチしやすい人は逆流性食道炎の中でも、胸や喉のつまる様な感じが強いタイプです。

典型的には、喉に何か引っかかって取れない感じを訴えている場合、のどに異物がへばりついたような違和感があるときなどにも良い適応となり、咳やしわがれ声などの症状を改善する効果も期待されています。

半夏瀉心湯

半夏瀉心湯の特徴は、気を補う薬と流れを良くする薬、そして熱を冷まして炎症を抑制する成分が混入されていることであり、主に胸やけ症状を改善する効果が期待されています。

げっぷなどの症状が強い方が適応になりますが、他にもみぞおちがつかえて気持ち悪い感じがある方、お腹がゴロゴロ鳴って消化不良で下痢をよく起こすケースなどにも多く用いられています。

六君子湯

六君子湯は気を補う作用が非常に強いのが特徴で、四君子湯(ニンジン、ビャクジュツ、ショウキョウ、カンゾウ、タイソウ)と呼ばれる補気剤の基本成分に加えて、二陳湯(ハンゲ、チンピ)という理気剤をさらに複合させた薬剤です。

逆流症状より胃もたれや食欲不振などの消化器症状が強く、気の不足状態(気虚)が背景に存在して普段から気がぜい弱で胃腸の流れが悪くなっている人が服薬の適応となります。

また、日常的に倦怠感を自覚しやすく疲れやすい、食後すぐ眠くなる、手足が冷えるなどの所見を呈しやすい場合にも良い適応と考えられています。

六君子湯は胃の内容物を腸へ送り出す効果も認められることがあり、みぞおちのつかえ感などの症状改善効果が期待されており、特にやせ型の男性で効果的であるという報告があります。

六君子湯は漢方の中でも数多くの臨床研究がされている薬であり、近年では食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌量を増加させる薬理作用も指摘されており、治療ガイドラインでも状況に応じて逆流性食道炎に対する使用が推奨されています。

小柴胡湯

小柴胡湯の特徴は「柴胡」という生薬が配合されていることで、柴胡の入った漢方薬は「柴胡剤」と呼ばれ、小柴胡湯はその代表例と言えます。

小柴胡湯はもともと「お腹に入った風邪」症状に対する基本処方であると考えられており、口が乾いて苦い、吐き気があって胸苦しいなどの症状がある場合にも処方されます。

それ以外にも、食欲不振、みぞおちが詰まった感じ、胃弱、舌に白い苔がつく場合などにも服用がすすめられます。

さらには、半夏厚朴湯にこの小柴胡湯の成分を複合させた「柴朴湯(さいぼくとう)」と呼ばれる近年我が国で生み出された漢方薬もあり、逆流性食道炎の症状緩和に有効的に働く場合も散見されます。

まとめ

逆流性食道炎は再発しやすい病気であり、治療困難な場合も多く認められることから、個々の患者さんに適した治療を選択することが重要になります。

多くの場合、胃酸分泌を抑える内服薬や個々人に適した漢方薬が処方されます。薬物治療で明らかな改善が得られた際には胃食道逆流症である可能性が高く、上部消化管内視鏡検査などで食道粘膜に炎症や異常所見が認められればさらに正確な診断となります。

胸焼けなどの気になる症状があるときは消化器内科を受診して、担当医師と良く相談して検査や治療を受けるとよいでしょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

プロフィール

関連記事