チアノーゼの症状の特徴と、貧血や多血症との関係

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チアノーゼという言葉を聞いたことはありますか。チアノーゼは指先や唇が青紫になる状態で、全身への酸素の供給が低下していることを示す所見です。

ここではチアノーゼを取り上げ、症状の特徴や、貧血や多血症との関係について解説します。

チアノーゼの症状の特徴

チアノーゼというのは唇や指の爪が青っぽい紫色に見える状態を言います。指先や唇は皮膚の色が薄く、皮膚の直下を走行する動脈の色が反映されやすいため、普通であれば赤々としたきれいな色に見えます。

しかし、何らかの原因で動脈血中のヘモグロビンに異常が起こると、動脈血の色調が変わり、皮膚の色の変化としてみられるようになるのです。

ここで注意していただきたいのは、皮膚の色は血液の色とは異なるという事です。確かに血液の色は皮膚の色に反映されますが、血液は血管壁、皮下組織、そして皮膚を透過して体表上から見る事になります。そのため、実際に動脈血が変化すると言っても血液そのものの変化は微々たるものですが、血管壁や皮下組織、皮膚の特徴によって若干の色合いが変化して、体表上ではより強く変化があるように見えるのです。

では、どのような原因で動脈血が変わってくるのでしょうか。

チアノーゼのメカニズム

チアノーゼがどのようにして起こるのか詳しく見ていきましょう。

ヘモグロビンとは?

チアノーゼの説明をする上で欠かせないのが、ヘモグロビンに関する説明です。ヘモグロビンというのは血液中の赤血球という成分の中に存在する物質です。ヘモグロビンは非常に酸素に結合しやすいという特徴を持っています。しかもただ単に結合するだけではなく、周囲の酸素などの濃度によって酸素との結合しやすさが変化するという特徴があります。

例えば、周囲に酸素が多く存在する場所では、ヘモグロビンには酸素が非常に多く結合します。このように、酸素が結合したヘモグロビンを酸化ヘモグロビンと言います。一方で、周囲に酸素が少ない環境だと、逆に酸素との結合が弱くなり、周囲に酸素を供給します。このように酸素と結合しなくなったヘモグロビンのことを、還元型ヘモグロビンと言います。

ヘモグロビンのこうした性質が人の体の中で非常に重要な役割を果たします。酸素の多い肺ではどんどんと酸素がヘモグロビンに結合します。そして心臓を通して全身に送られます。全身で酸素が不足すると、そこにやってきたヘモグロビンから酸素が離れ、組織に酸素が供給されます。

チアノーゼの原因

上記のようにヘモグロビンは酸化、還元を繰り返します。そして、チアノーゼというのは、還元型ヘモグロビンが血中で5g/dl以上になると出現します。還元型ヘモグロビンが5g/dl以上になると体表上から透けて見えて、結果として紫色になるのです。

ここで注意したいのは、還元型ヘモグロビンの濃度の絶対値によって決まるということです。酸素をたくさん持っている酸化ヘモグロビンの量や、酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビンの割合によって決まるわけではありませんから、チアノーゼイコール酸素不足という訳ではありません。

このことに注意した上で、チアノーゼを分類していきます。具体的には、体のどの要素が異常を起こしたせいで還元型ヘモグロビンが増加しているのかという観点で分類します。

中枢性チアノーゼ

中枢性チアノーゼは、よく言われる酸素化不良によるチアノーゼです。ヘモグロビンは肺で酸素を受け取り、心臓によって血液が流れることによって末梢に酸素を送ります。しかしこれらの流れのどこかに問題があると、ヘモグロビンに酸素が十分結合することなく送り出されてしまうため、酸素が結合していない還元型ヘモグロビンが多く流れてしまい、末梢でチアノーゼを呈するのです。

呼吸器の障害としてチアノーゼの原因となるものとして、低換気(無気肺、気道狭窄など)、換気血流不均衡、拡散障害などがあります。通常であれば肺を通ったヘモグロビンはほとんど全てが酸素に結合して肺から心臓に行くのに対し、これらの病態では肺で十分酸素を受け取ることができないため、心臓にやってきた血液中の酸化ヘモグロビンの割合が少なく、還元型ヘモグロビンが多くなるためチアノーゼを呈します。

心臓が原因の中枢性チアノーゼとしては、種々の先天性心疾患で、静脈血が動脈血に混ざってしまう病気が挙げられます。この場合、全身を巡ってきて還元型ヘモグロビンが主となった血液が肺を通らずにそのまま全身へまた回ってしまうため、全身に還元型ヘモグロビンが流れていってしまい、チアノーゼを呈します。

しかし一方で、先天性心疾患などの異常血流がある状態でも、動脈の血液が静脈に流れ込むタイプの心疾患では、肺を通過しない血液が全身に流れることはありませんから、チアノーゼは呈しません。

中枢性チアノーゼの場合、心臓から全身に向かう血液そのものが還元型ヘモグロビンのおおい血液になっていますから、全身の多くの場所でチアノーゼが見られるのが特徴です。

末梢性チアノーゼ

心臓からでる血液は十分に酸素化されているのに、末梢組織にとっては十分な量の酸素がなく、ヘモグロビンから非常に多くの酸素を奪って還元型ヘモグロビンが増加してしまうような場合を末梢性チアノーゼと言います。

末梢性チアノーゼには、末梢組織の酸素の必要量が増加している場合と、心臓から拍出する血液の量が十分でないために、末梢組織にとどく酸素の量が不足してしまう場合の2通りがあります。

末梢性チアノーゼは心臓からの駆出される血液は還元型ヘモグロビンがほとんど含まれていませんから、血流が良く、酸素需要がそこまで多くない組織ではチアノーゼは見られません。一方で、血流が悪い指先や鼻先などの末端部ではチアノーゼが見られやすいという特徴があります。

血液性チアノーゼ

チアノーゼは還元型ヘモグロビンの濃度の絶対値が5g/dl以上になると発症すると説明しました。

そのため、血液の量が多い多血症だと、酸素を運搬する能力が高いという特徴がありますが、一方で還元型ヘモグロビンの絶対量も多くなりますから、チアノーゼを呈しやすいという特徴があります。

このようなチアノーゼを示すのは多血症の他には、中毒性や薬剤性のメトヘモグロビン血症があります。メトヘモグロビンというのは酸素と結合しにくいヘモグロビンのことで、この数が増加することでもチアノーゼを呈します。

なお、貧血があるとチアノーゼを呈しやすいという印象があるかと思いますが、貧血では全身の白色化を来す一方で、チアノーゼは呈しません。貧血で赤血球の絶対量が減少すると、酸化ヘモグロビン、還元型ヘモグロビンいずれも濃度が下がってしまうからです。

貧血とチアノーゼ

血液の異常でよく見られるのが貧血です。貧血もチアノーゼも、いずれも酸素を運ぶヘモグロビンの量が減っていることによって様々な症状が起こってきます。

貧血とチアノーゼの症状の違い

貧血はヘモグロビンの絶対数が減っている状態を言います。男女差や年齢によって基準値にややずれはあるものの、概ねヘモグロビンの値が12g/dL未満になると貧血といわれます。 

貧血が起こる原因は様々ありますが、最も多いのが鉄欠乏性貧血です。ヘモグロビンは中心に鉄を持ったタンパク質です。そのため鉄の摂取量が減ったり、鉄をうまくヘモグロビに取り込むことができない状態になると貧血が起こってきます。

貧血の症状としては、めまいや立ちくらみ、息切れなどが見られてきます。また疲れやすいというのも特徴のひとつです。皮膚の表面から見ると赤みを帯びて見えるヘモグロビンの量が減ってきますから、皮膚の色が白っぽく見えるのが貧血の特徴です。

チアノーゼの場合には、疲れやすいなどの症状がある一方で、皮膚の色合いが悪くなるという特徴があります。概ね青ざめて見えるものが多いです。チアノーゼは舌にも紫色の色調の変化が見られるのが特徴です。 

つまり、皮膚の色で見比べると、貧血はやや白っぽく、チアノーゼはやや青っぽく見られるという特徴があります。ただし、皮膚の状態や血液循環の状態などによって様々変わってきますから、皮膚の色だけで貧血なのかチアノーゼなのかを確定することはできません。

貧血はチアノーゼが現れにくい

チアノーゼは、ヘモグロビンの中でも還元型ヘモグロビンの量が一定以上ある状態を指します。この一定の量というのは絶対値であって、ヘモグロビンの中の割合を示しているわけではありません。そのため、ヘモグロビンの絶対量が減っている貧血の場合には、その中の還元型ヘモグロビンの割合がある程度増加しても、一定の量以上にはなかなかなりませんから、 チアノーゼになりにくいという特徴があります。

多血症とチアノーゼ

貧血とは反対に、ヘモグロビンの量が多くなる多血症という症状があります。多血症とチアノーゼの関連を確認しましょう。

多血症とは

多血症というのは、ヘモグロビンの量が一定以上になっている状態を言います。ヘモグロビンの絶対値が高くなるということです。

原因は いくつかあります。真性多血症というのは赤血球を作る細胞が腫瘍性に増加し、 際限なく赤血球が作られることで起こってきます。

一方で、二次性多血症と呼ばれるものとしては、慢性的に酸素が不足している場合や、他の場所の腫瘍によって必要に駆られて赤血球が多く作られる状態を言います。 

例えば喫煙や慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群の時には、全身に酸素が不足するため、酸素を多く運べるようにヘモグロビンの量を増やして対処しようとするため、多血症となります。 

腎臓癌などの腫瘍の場合には、赤血球を増やすホルモンが分泌されることによって、赤血球を作る作用が亢進し、多血症となります。

多血症が進行すると顔が赤くなったり、目や口の粘膜が充血したり、風呂上りに体が痒くなったり、といった症状が見られます。さらに進行すると、血液がドロドロになって流れが悪くなり、十分な酸素や栄養を送り届けられなくなって、頭痛やめまい、耳鳴りなどが起こってきます。血管が詰まってしまい、心筋梗塞や脳梗塞を起こす可能性もあります。

多血症はチアノーゼが現れやすい

チアノーゼは還元型ヘモグロビンの絶対値の量が増えることによって起こってきます。もともとのヘモグロビンの量が多い多血症は、少しの割合が還元型ヘモグロビンになったとしても、還元型ヘモグロビンの絶対値が上昇するため、チアノーゼを呈します。 

この時、全身の色は多血症によってピンク色ですが、足先や唇など末梢組織は青っぽく見えるのが特徴です。元々ピンクの色が強いだけに、チアノーゼの色も目立つようになるのです。

チアノーゼの治療法

チアノーゼが呈された場合は、その場所で酸素が不足しているということを示しますから、速やかに対処しなければなりません。

末梢型チアノーゼの場合は、まず暖めるというのが1つの手段になります。血流が悪いせいで酸素の取り込み割合が非常に多くなり、還元型ヘモグロビンが増加していると考えられる場合ですので、暖めて血流を良くすることでチアノーゼの改善につながります。

また、酸素の量が純粋に不足している場合もありますから、酸素投与も治療の1つの手段となります。他には、心拍出量の低下を疑うなら、心拍出量を上昇させる薬剤を使用するなどして循環を確保します。

中枢型チアノーゼは少し複雑です。酸素投与すればよい場合も多いのですが、一部の心疾患の場合、酸素投与によって血流が逆に悪くなり、酸素濃度が低下してしまい、チアノーゼが悪化する場合があります。血行動態に影響を与えない程度に酸素を少量投与することが治療となります。

他の心疾患、呼吸器疾患の場合も、心拍出量や呼吸状態を改善させることでチアノーゼの改善を目指します。

血液性のチアノーゼの場合は、原疾患の治療が必要になります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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