スキルス胃がんとは?胃がんの種類と進行速度について解説

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早期がんは予後が良く、進行がんは予後が悪いことが知られています。胃がんの進行速度を左右する要因には何があるのでしょうか?

ここでは胃がんの進行速度を取り上げ、胃がんの種類の違いや、治癒が困難とされるスキルス胃がんについて解説します。

胃がんの種類

胃がんの9割以上は胃壁のもっとも内側に存在している粘膜上皮の細胞から発生する腺がんです。

胃がんのほとんどを占める腺がんは、その増殖度や進行スピードの違いから、「分化型がん」と「未分化型がん」に分類されています。

分化型がん

分化型がんは、がん細胞が腺管構造を呈しながらまとまって増殖していくタイプです。

分化型がんは、ピロリ菌がその発症に関与していると推察されている萎縮性胃炎の程度に比例して認められやすく、予後は比較的良好とされており、早期の分化型がんに対しては、内視鏡を用いた粘膜切除術が実践されています。

未分化型がん

未分化型がんは、分化型と異なって個々の腫瘍細胞がそれぞれ自由勝手に広がるように増殖していくタイプであり、分化型がんに比して悪性度が高く、進行スピードが極めて速いことで有名なスキルス胃がんも未分化型がんの一部に含まれています。

未分化型がんの場合には、分化型と違って胃底腺の粘膜部から発生することが知られており、萎縮性胃炎とは無関係に認められます。

腫瘍細胞そのものの悪性度が高く、胃の粘膜下組織を広範囲にわたって浸潤していくために腫瘍の広がりの評価がとても困難であり、すべての悪性腫瘍を手術などで取りきれないために予後が非常に悪いのが特徴的です。

未分化型がんは、早期と考えられても基本的には内視鏡治療の適応とはなりません。1年に1回の定期的な胃カメラ検査やX線透視検査を実施することで病変を早期に発見、もしくは除外することが重要です。

早期がんと進行がん

早期がんと進行がんの違いを確認しておきましょう。

早期がん

胃の壁は内側から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と呼ばれる6つの層によって構成されており、胃粘膜から発生したがん細胞は次第に胃壁の上下左右の方向に増殖を示して拡大していきます。

胃の場合には、がん細胞は基本的に表面に位置する粘膜組織から発生し、少しずつ根を深く生やして波及していき、深部に到達すればするほどリンパ節や他臓器への転移リスクが上昇します。

特に、胃がんのケースでは粘膜下層までにとどまっているがんを「早期がん」、そして固有筋層以上に深部まで到達しているがんを「進行がん」と名付けています。

胃がんにおける早期がんでは、がんの広がり自体が粘膜や粘膜下層などの浅い箇所でとどまって周囲の血管やリンパ節組織が少ないがゆえにがん転移が認められにくいと考えられています。

一般的に早期がんの場合には自覚症状が出にくいことが知られていますので、早期がんの段階で発見するために年1回程度を目安に内視鏡検査などを受ける必要があるといえるでしょう。

進行がん

胃がん病巣が固有筋層より深部にまで進んで到達しているものはすべて「進行がん」と名付けています。

固有筋層より深くまで浸潤している進行胃がんのケースでは、食欲不振や嘔気などの自覚症状が認められやすいと指摘されています。

早期がんのように、がん細胞が粘膜内組織にとどまっている場合は、リンパや血液を介して遠方までがん組織が転移することは稀ですが、固有筋層レベルにまでがん浸潤が到達すると周囲組織を通じてリンパ節転移や遠隔転移を引き起こすリスクが増加します。

スキルス胃がんとは?

スキルス胃がんとは、胃がんの中の一亜型であり、胃がん全体の中でも約1割程度を占める比較的稀な疾患とされています。

このタイプの胃がんは、女性や若年者に認められることもあり、初期段階では自覚症状が顕著に現れないために自然と診断が遅れてしまい予後が悪い傾向にあります。

一般的には、胃がんの原因として、ピロリ菌感染、喫煙習慣、刺激物などを含めて食生活の問題が主要となる一方で、スキルス胃がんの場合には遺伝子の異常が発症に関与していると考えられています。

具体的には、Eカドヘリンやp53と呼ばれるがん関連遺伝子に異常をきたすことでスキルス胃がんを発症する可能性が指摘されています。

スキルス胃がんでは、食欲不振、体重減少、胸焼け、胃部不快感などの症状が出現することが知られており、病状がかなり速いスピードで進行して吐血や下血などのサインが認められ、さらには腹水が大量に貯留して腹部膨満感や息苦しさといった症状につながります。

がん病巣の進展が極めて速いことから、がん細胞が骨領域に転移することも往々にして認められ、それに伴って背部痛や骨の痛みといった症状を呈することもあります。

病変部の切除摘出が望める場合には、根治を目指す手術療法が検討されますが、スキルス胃がんにおいてはがんの浸潤度や進行スピードがあまりにも速く必ずしも根治手術が選択できるとは限りません。

末期状態では根治のためではなく、症状緩和などを目的とした手術が実施されることもありますし、術後再発を認めて化学療法が選択されるケースもあります。

胃がんの進行速度を左右する要因

胃がんの進行速度を左右する要因にはどのようなものがあるのでしょうか。

例えば、高齢者と若年者では、同じ胃がんを患ったとしてもなんとなく若年者のほうががんの進行速度が速そうというイメージがあるかも知れません。

その背景には、若年者では高齢者と比較して不幸にも悪性度が高くて進行度が速い種類のがん病巣が形成されやすいという傾向があり、「年齢」というファクターが胃がんの進行速度を左右する一因となっています。

胃がんの場合には、例えば進行速度がとても速く、他の部位に転移しやすいと考えられている低分化型腺がんが20代や30代など若い方々に発症しやすいとされています。

その一方で、60代や70代など高齢者には、高分化型腺がんと呼ばれる比較的進行が遅く増殖スピードが緩やかながんのタイプが形成されやすい傾向が認められます。

また、肺炎や腎盂腎炎などを始めとする感染症に罹患するとがんの増殖するスピードが速くなることが徐々に判明してきています。

これは感染症を発症すると、自己の免疫細胞の機能が感染症によって消耗することでがん病巣に対する免疫力が自然と低下して、がん細胞が増殖して進展する動きに対するブレーキ機構が働かなくなるためだと考えられます。

まとめ

これまで胃がんの種類と進行速度、スキルス胃がんとはどのような病気かなどを中心に解説してきました。

日本人の2人に1人はがんを発症する時代であり、特に40歳を超えた時点でがんに罹患するリスクは上昇するといわれており、中でも胃がんは主要ながんのひとつと考えられています。

胃がんにおいてはその悪性度や進行度などから分化型がんと未分化型がんに分類されており、また胃壁内のどの領域までがん浸潤が認められるかによって早期がんと進行がんに大きく区別されています。

また、スキルス胃がんはいまだにその発症原因が特定されておらず、胃がんの中でも特に治癒させることが困難ながんのタイプであり、有効な治療方法が確立されていないために若い年齢層でも発症して死亡することがある厄介な疾患です。

胃がん病変を早期に発見して適切な治療を行えるように医療機関などで定期検査を受け、必要に応じて専門医に相談しましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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