肺炎になりかけの症状とは?風邪と肺炎の違いと診断方法
風邪も肺炎も、いずれも熱が出たり咳が出たりする病気です。初期症状が似ており、風邪が原因で肺炎に移行することもありますから、区別が難しいといえます。
ここでは、風邪と肺炎の違いや、肺炎になりかけているときの症状について解説します。
目次
風邪と肺炎の違い
風邪も肺炎も、いずれも呼吸をする気道に病原体が入り込み、炎症を引き起こすことで症状が起こります。しかし、炎症が起こる場所と症状には違いがあります。
風邪の特徴
風邪は、一般に急性上気道炎といわれます。上気道というのは、空気の通り道である気道の中でも声門よりも口側、つまり鼻やのどを指します。上気道炎は鼻やのどに炎症が起こる病気のことです。
上気道に病原菌が入り込むと、体の防衛反応として免疫反応が引き起こされ、炎症が起こります。炎症というのは白血球などの免疫細胞が多く集まり、微生物を退治するためにさまざまな反応が起こることをいいます。
炎症で特徴的なのは、熱です。白血球の作用は37℃よりも高い温度で強くなるため、熱を出すことで免疫反応を最大限活性化させます。また、炎症部位で熱が出るとその場所の血流が良くなり、赤くなります。また、その場所は腫れてくるので痛みを感じます。
そのため、上気道に炎症が起こるとのどが赤く腫れて、痛みが出ます。鼻にも炎症が至り、鼻水が多くなります。全身の体温が上がるため、熱が出ますし、まだ体温が必要な熱より低ければ震えることで熱を産生します。
さらに微生物が気管や気管支、肺に入り込まないよう、痰を出して咳やくしゃみによって微生物を追い出そうとする反応が出ます。
肺炎の特徴
肺炎は、肺で炎症が起こった状態をいいます。自分の免疫の異常などによって起こる特殊な肺炎もありますが、ここでは細菌やウイルスなど、微生物の侵入によって起こる急性肺炎のみを取り扱います。
急性肺炎は微生物が肺にまで入り込むことで起こります。さまざまな防衛機能によって微生物が簡単に肺までたどり着くことはありません。しかし、肺炎を起こしているということは防御機能を乗り越えて微生物が入ってきてますから、強い菌やウイルスによる感染症、もしくは体の免疫反応が弱くなっている状態が想定されます。このことからも肺炎は普通の風邪に比べて重症であると考えられます。
さらに肺炎が重症である特徴としては、肺で炎症が起こることによって肺の中が水浸しになって、酸素を取り込む能力が著しく落ちてしまうことにあります。
先ほど説明した通り、微生物の侵入によって体内では炎症という反応が起こります。炎症が起こると、炎症細胞が活動しやすいように水分が血液中からしみ出してきます。微生物と闘うために、肺胞の中には微生物、免疫細胞の他に水も入ってきて肺胞の中はいっぱいになります。そのため、肺炎になると肺の中の空気がたまっているスペースが減ってしまい、酸素の取り込みが落ちてしまうのです。
肺胞には酸素の取り込みを円滑にするため、毛細血管が非常に密に張り巡らされています。細菌が肺胞の壁に侵入してしまうと、すぐに血流に乗って全身に細菌が広がり、全身状態が一気に悪くなってしまいます。
肺炎の初期症状は、肺胞の中の痰を排出しようとする咳や痰の症状が中心です。炎症によって熱も出ます。これらの症状はほぼ風邪と同じですが、のどの痛みや鼻水はあまり見られません。
肺炎がだんだん重症になってくると、息苦しさが強くなります。風邪のときにも咳をしたり鼻水が出たりして息苦しさを感じることはありますが、早い呼吸をすることで酸素を十分に取り込むことができます。しかし、肺炎が進行すると酸素の取り込みが悪くなりますから、少し動いただけでも息苦しさが出現してしまうのです。
さらに重症化して血液中に菌が回ると、ぐったりして動けなくなり、命に関わる事態になってしまうこともあります。
風邪やインフルエンザから肺炎になることも?
風邪も肺炎も、いずれもウイルスや細菌の感染症で、感染する場所が異なることを説明しました。しかし上気道の炎症である風邪や、さらにはインフルエンザも同様に、軽症であれば上気道のみの感染症で済みますが、重症化すると肺にもウイルスが入り込み、増殖することで肺炎を引き起こします。
長引く咳や熱がずっと続く場合は、のどでの感染が続いているということですから、体も消耗して肺に微生物が入り込みやすい環境が整ってきているともいえます。
肺炎になりかけているときの症状
風邪やインフルエンザから肺炎になることがあり、両方の症状が併存するケースもあります。つまり、上気道炎としての症状である鼻水やのどの痛みがあるのに、肺の炎症によって起こる大量の痰や止まらない咳の症状が出現してくるのです。
百日咳など、一部の感染症では肺炎を起こさなくても咳が止まらなかったり、痰が大量に出たり、といった症状を呈しますが、一般的に風邪がなかなか治らないのにだんだんと咳がひどくなり、痰が多くなってくる場合は肺炎の合併を強く疑います。
また、肺炎を起こすと強い炎症となりますから、熱も高くなることが多く、全身の消耗も激しいため倦怠感が強くなります。
風邪が長引く場合や、症状が変化してきている場合には肺炎が起こっているかもしれないと考え、早めに病院を受診しましょう。
肺炎の診断方法
病院を受診すると、画像検査や血液検査を行って肺炎の診断につなげます。
画像検査
肺炎を診断する時にまず行われるのは画像検査です。胸部レントゲン写真は最も簡単にできる検査として肺炎を疑った時にまず最初に行う検査です。 高齢者の肺炎でよくある細菌による肺炎であれば、肺の一部分がべったりと白くうつってきます。
一方で一部の肺炎、例えばマイコプラズマ肺炎などであれば、局所に限定するのではなく肺全体が薄く白く見えるなど、非特異的なうつり方をしてくることもあります。
胸部レントゲン写真の他に行う画像検査としては、胸部CT検査があります。CT検査は、体の断面の画像を作り出すことができるので、より細かくどの部分に肺炎があるのかを見ることができます。また肺だけではなく気管支の状態もある程度確認することができ、気管支肺炎などの特殊な肺炎の形も鑑別することが可能になります。
一般に白くうつってくる場所は、肺の中に水が溜まっている場所になります。肺の中で細菌が増殖すると、体は免疫反応として炎症を引き起こします。炎症が起こると、毛細血管から水分が肺胞の中に染み出してきます。その染み出してきた水分を画像検査で検知します。
ですので肺炎が起こってもあまり水分が出てきていない段階で撮影すると、画像にあまりうつらないこともあります。肺炎が長い期間経過することによってだんだんと濃い像になってくるわけです。
血液検査
肺炎の際の血液検査で行う項目としては、白血球やCRPなどの炎症反応の上昇を確認します。肺の中で炎症が起こっているとこれらの値が上昇してきて、ある程度重症度を反映します。
しかしこれらの検査は、肺特異的に上昇してくるものではありません。他の場所の炎症でも上昇してきますので、血液検査では肺炎が起こっているかどうかという確定はできず、単に体の中で炎症が起こっているかどうかしかわからないのです。
尿検査
肺炎の際には尿検査も行います。肺炎の原因となる菌の一部には、細菌の一部や細菌に対して体が反応した証拠となる物質が尿の中に漏れ出てきます。検査することによって、どのような菌によって肺炎が起こっているのかを同定することができます。
原因となる病原体の特定
尿検査でもある程度病原体が同定できますが、それはごく一部の細菌だけです。基本的には肺の中で何が起こっているのかを調べるために、喀痰を採取することで検査を行います。
喀痰を出してもらって、それを染色することである程度細菌の特徴を顕微鏡で確認し、大まかな細菌の種類を同定して治療につなげます。
ただし、それでは確定診断にはなりませんから、取ってきた痰を培養することによって、 どのような細菌がいるのかを確定し、最終的な診断と治療に結びつけます。
痰の培養には数日かかります。結果を待ってから治療を開始するわけにはいかないので、それまでの間は 顕微鏡で見た結果や、他の検査結果の情報をもとに大まかな方針を決めて抗生剤治療を開始します。病原体が確定できたらその病原体に特に効果のある抗生物質に変更することでより効果的に治療をする事ができるのです。
症状が現れない高齢者の肺炎に注意
肺炎の症状は、細菌に対して身体が反応する免疫反応によっておこってくるものです。例えば発熱は、身体が体温を上げることでより強い免疫反応を起こすために生じる現象です。咳や痰も、細菌を身体の外に排出しようとする防衛反応によって起こってきます。
しかし、高齢になると細菌が身体に入ってきても身体の免疫反応が十分に起こらないことがあります。免疫反応が不十分なために症状が現れず、細菌の増殖をなかなか止められません。知らない間に重症化してしまうことがある高齢者の肺炎には注意が必要です。