寝過ぎや睡眠不足で起こる頭痛のメカニズムと対処法
「ちゃんと寝ているのに頭が痛い」または「全然寝られなくて頭が痛い」といった経験はありませんか?
睡眠は日中に働いた脳や身体を休ませるために必要な時間です。睡眠と頭痛は密接につながっています。ここでは寝過ぎや睡眠不足によって起こる頭痛のメカニズムと対処法について解説します。
目次
寝過ぎで頭痛が起こる理由
寝過ぎた後に起こる頭痛には、大きく分けて2種類あります。片頭痛と緊張型頭痛です。それぞれについて見てみましょう。
寝過ぎによる片頭痛のメカニズム
片頭痛とは睡眠中に副交感神経が活性化した結果、頭蓋内の血管が拡がって発生する頭痛です。
人は熟睡しているときには心拍数や呼吸数が低下して、血流が穏やかになります。その状態から、起きた際に血流量が増加することによって三叉神経が引っ張られて頭痛が生じるのです。
寝過ぎによる緊張型頭痛のメカニズム
一方で緊張型頭痛の場合は、首や肩に負担がかかる姿勢で寝ることで、背中の僧帽筋や後頸筋、側頭筋など頭痛の原因となる筋肉の血流が停滞して、強い収縮と緊張が起きることで生じます。
通常は仰向けや横向きなどをして、枕に頭がありますが、枕から頭が外れていたり、手や足、腰、首などが無理な状態で曲がったりして長時間姿勢が悪いままで寝続けることが緊張型頭痛の原因になります。
寝不足で頭痛が起こる理由
寝不足で起こる頭痛も同様に、片頭痛と緊張型頭痛の2種類あります。それぞれについて見てみましょう。
寝不足による片頭痛のメカニズム
ストレスや疲労といったトリガーによって、脳の血管が拡張すると、血管の周囲をとりまく三叉神経を圧迫します。三叉神経が圧迫を受けると痛みの原因物質を放出して、血管に炎症を引き起こします。そうすることで、片頭痛が生じます。
寝不足による緊張型頭痛のメカニズム
緊張型頭痛は主に筋肉の疲労が原因で生じます。寝不足になることで、頭や首から肩にかけての筋肉がストレスによる血流悪化で、老廃物が溜まり、それが原因で周囲の神経を刺激して頭痛が発生します。
緊張型頭痛は頭の痛みだけではなく、肩こりや眼精疲労、全身倦怠感などを伴うこともあります。睡眠不足のときは主にこの緊張型頭痛が生じます。
睡眠を安定させるコツ
睡眠を安定させて、寝過ぎまたは寝不足による頭痛が生じないようにするための対処法を紹介します。
寝過ぎてしまうときの対処法
寝過ぎによる片頭痛が起きたときの対処法としては、アルコールの摂取を控える、光や騒音などの刺激を避ける、精神的なストレスを減らす、痛みがある部分を冷やす、カフェインを摂取するなどがあります。
痛みがある部分を冷やすことで拡張していた血管が収縮し、頭痛が改善することがあります。入浴は血流が促進されて頭痛が増悪するのでできれば避けましょう。
緊張型頭痛は筋肉の緊張によるものなので、ゆっくりストレッチする、痛みがある部分を温める、マッサージをするなどによって頭痛が改善することがあります。枕を高くしすぎると頭痛が生じやすくなってしまいます。
寝不足になりがちなときの対処法
寝不足になって頭痛が生じた際の一番の解決方法はなんといっても睡眠をしっかりとることです。しかし頭痛が出ている状態でゆっくり眠れるとは限りません。そのため、ストレスや緊張、疲労をとる努力をすることが大切となります。
ゆっくりとお風呂に入って体を温め、血流をよくすることで筋肉内の疲労物質や痛みの原因物質が流れやすくなります。お風呂の温度は38~40℃程度で、肩までは浸からずにみぞおちあたりまで浸かって20分程度にとどめておくのがおすすめです。
リラックスおよび体の血流を良くする目的で軽い運動をすることもいいでしょう。また、寝過ぎた際の頭痛と同様に痛い部分を冷やす、カフェインを摂取するなども有効となります。
布団に入っても眠れないという方もいると思います。この場合、寝る前に身体がリラックスできていないことが主な原因と考えられます。睡眠前にお風呂に入って体を温める、寝る前にストレッチやヨガを行い適度な疲労感を得る、寝る前にスマートフォンやパソコンを使わないなど、睡眠前に体に負担をかけないようにしましょう。そうすることで睡眠の質が改善します。
いかがでしたでしょうか。外来にもよく頭痛で来られる方がいらっしゃいます。話をうかがうとやはり就寝前にお酒を飲んでいたり、ゲームやメールなどを寝ながらやっていたり、明るい部屋で寝ていたりと睡眠の質が悪い方が多数います。
頭痛は鎮痛薬を飲むことで一時的には改善するかもしれませんが、生活に問題があることを告げる身体のサインでもあるので無視し続けるのはよくありません。頭痛が頻回に生じるという方は、ご自身の生活をもう一度見直して体をリラックスさせることができるようにしていきましょう。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。