他の病気と間違われやすい?レビー小体型認知症の症状と治療法

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レビー小体認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、約20%を占めています。アルツハイマー型認知症の発症率が女性に多いのに対して、レビー小体型認知症は男性の方が多く、女性の約2倍となっています。

ここではレビー小体認知症の症状と治療法について解説します。

レビー小体型認知症の症状

レビー小体認知症とは、レビー小体という神経細胞にできるたんぱく質が、脳の大脳皮質に蓄積されることで神経に異常をきたす認知症です。

レビー小体がたくさん集まっている場所では、神経細胞が壊れて減少しているため、神経をうまく伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。時間帯や日によって症状が変化するのが特徴です。

レビー小体型認知症の主な症状には次のものがあります。

認知機能障害

レビー小体型認知症は日によって調子の波が大きく、認知機能が1日のうちでも変動し、特に夕方に悪化する傾向にあります。この変動は、数分から数時間続きますが、ときには数週〜数か月におよぶこともあります。

幻覚

幻覚の中で、幻視が最も多くみられます(60~70%)。幻視とは、他人には見えないものが見えるという症状であり「虫や蛇が部屋にいる」「知らない人がいる」「遠くにいるはずの子どもが帰ってきている」など、はっきりとした幻視を訴えるのが特徴となります。幻視に向かって話しかけていることもあります。

妄想

被害妄想や誤認妄想が出現する場合があります。例えば、誰かにお金を盗られた、配偶者に恋人ができた、幻の同居人がいる、ハエがたくさん飛んでいて自分にまとわりついてくるなど、幻視や見間違い、思い違いによるものがほとんどです。

パーキンソン症状

手足の震え(振戦)、手足の筋肉が硬くなる(筋強剛)、動作が遅くなる(動作緩慢)、体のバランスを崩して転倒しやすい(姿勢反射障害)など、パーキンソン病と同じ症状がみられます。また、進行すると嚥下障害がみられ、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

自律神経症状

便秘、トイレに行ってもすぐに行きたくなり尿回数が増える(頻尿)、急におしっこがしたくなり我慢できずにもらしてしまいそうになる(尿意切迫)、排尿後も尿が残っている感じがある(残尿感)、尿が漏れる(尿失禁)といった症状がみられます。また、起立時のたちくらみ(起立性低血圧)がみられます。その他にもめまい、失神などが起こる場合があります。

睡眠障害

睡眠時の眠りの浅い時間帯(REM睡眠)に大声を出したり、暴れたりします。隣の人に暴力をふるってしまうこともあります。これは、脳が活動しているが、手足の筋肉は休んでいるREM睡眠期に、脳の活動に合わせて筋肉が動いてしまうことによります。レビー小体型認知症の最初の症状として起こることが多く、中期以降にはみられなくなることがほとんどです。

レビー小体認知症の治療法

レビー小体認知症に対しては薬による治療やリハビリテーションを行います。

薬による治療

現在レビー小体型認知症そのものを治療する薬はありません。多彩な症状に対して、早期から治療介入を行うことが重要です。

認知機能と幻覚に対しては、アルツハイマー型認知症の治療で使われるドネペジルやリバスチグミンが有効であることが示されています。副作用として、嘔気・嘔吐、食欲不振などがみられることがあります。また、非定型抗精神病薬であるクエチアピンやオランザピンも有効です。

パーキンソン症状に関しては、パーキンソン病の治療で使われるレボドパが有効です。このレボドパは幻覚や妄想等の精神症状が起こりにくい薬剤ですが、まれに精神症状を悪化させることがあるため、少量から開始していきます。

便秘がみられる場合には、緩下剤、消化管運動改善薬のモサプリド、ドンペリドンが使用されます。

起立性低血圧がみられる場合には、血圧を上げる作用をもつドロキシドパ、ミトドリン、フルドロコルチゾンなどが使われることがあります。

リハビリテーション

リハビリでは主に理学療法が取り入れられます。パーキンソン症状による小刻み歩行がみられる場合には、転倒リスクが高くなります。

転倒した場合、骨折につながるリスクが非常に高いため、リハビリにより正しい姿勢や歩行バランスを身につけることで、転倒リスクを軽減することができます。また、散歩に出かける、家事を行うなど習慣だったことをできるだけ継続していくことが重要となります。

いかがでしたでしょうか。レビー小体認知症は認知症の中では2番目に多い疾患です。家族や身の周りにレビー小体認知症の方がいる場合は、優しく声かけをしましょう。ただし、妄想を訴える場合は、肯定してしまうとより妄想の世界に入り込んでしまいます。否定も肯定もせず、そのままの言葉を繰り返すようにしましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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