足のしびれの原因になる骨・神経の病気と、冷たさを伴う血管の病気

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正座をしたときや、変に体をひねって座ったときなどに、ビリビリとした痛みを感じます。しびれの症状は珍しいものではありませんが、中には病気のサインになっているものもあります。

ここでは、足のしびれの原因として多く見られる骨や神経の病気と、しびれ以外にも冷たさを感じることのある血管の病気について詳しく解説します。

そもそもしびれとは?

「しびれ」というのは、実はさまざまな症状がまとめて「しびれ」と呼ばれています。神経の障害によって、神経の機能が正常に発揮されていない状態を「しびれ」と呼んでいます。ですから、傷害される神経の機能によって、さまざまな「しびれ」の症状があるのです。

麻痺によるしびれ

神経の機能の1つ目は、運動の命令を伝える機能です。運動の命令は脳から出て脊髄を通って下降します。そして脊髄から末梢神経として筋肉に至り、筋肉が命令に従って収縮します。もしこの神経伝達のどこかで障害を受けると、筋肉が動かなくなります。これが「麻痺」です。「しびれ」の1つ目は「麻痺」になります。

感覚障害によるしびれ

神経の機能の2つ目は、感覚を伝える機能です。手にものを触れたといった情報だったり、その触れた感じが痛みなのか、触っただけなのか、温かいのか、冷たいのかなどといった情報だったりを皮膚にあるセンサーが検知します。

あるいは、内臓にあるセンサーが、内臓の異常を検知します。それらの検知した情報は、末梢神経を通って伝えられ、脊髄に入り、脊髄を上行して脳へと至ります。もしこの経路の途中で神経が障害を受けると、感覚を感じる事ができなくなってしまいます。これが「感覚障害」です。「しびれ」の2つ目は「感覚障害」になります。

異常感覚によるしびれ

神経の機能の3つ目は、神経自体を修復することです。神経が何らかの原因でダメージを受けると、神経は神経自体を修復します。このとき、修復に伴って刺激が神経に与えられるため、持続的に異常な感覚を感じ続けます。

この感覚が、「ジンジン」「ビリビリ」といった表現をされる症状を引き起こします。これを「異常感覚」といい、「しびれ」の3つ目になります。「異常感覚」によって引き起こされる痛みを「神経障害性疼痛」と言います。

他に神経の機能としては、自律神経としての機能があります。自律神経の障害では体温異常や血圧の異常などを来しますが、「しびれ」と表現される自覚症状ではないため、ここでは割愛します。

足の痺れの原因になる骨や神経の病気

どのような病気でしびれが起こってくるのでしょうか。しびれは大きく分けて、骨や神経の病気と、頭の病気、その他の病気が原因によって起こってきます。

ここからは骨や神経の病気によって起こってくるしびれについて解説します。骨や神経の病気によるしびれは、種々の理由で神経が圧迫されることで神経の機能が異常となり、症状を来してきます。

他の原因でのしびれが、麻痺や感覚障害がそれぞれ単独で起こることが多いのに対し、骨や神経が原因で起こるしびれは麻痺や感覚障害が併発することが多いという特徴があります。具体的にどのような骨や神経の病気でしびれが起こるのか見ていきましょう。

脊柱管狭窄症

脊柱管というのは、背骨によって作られる脊髄を格納する構造のことです。脊柱管を構成するのは椎体という骨で、頸椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個、仙椎が1個という骨が縦に並んでいます。

脊髄は非常に重要な構造なので、前方は椎骨の中でも椎体という最も大きく頑丈な構造で固められます。椎体からはUの字をした椎弓という構造ができており、このUの字の中を脊髄が通っています。この椎体や椎弓によって囲まれた、脊髄を入れる空間のことを脊柱管と言います。

さまざまな原因で脊柱管が狭くなってしまうと、中に入っている脊髄が圧迫されてしまい、障害が起こります。障害を特に強く受ける脊髄の部位によって、運動障害が起こったり、感覚が傷害されたり、もしくはその都度修復を受ける為にビリビリした痛みを感じたりします。

また、脊柱管が狭窄している部位によって、手足に障害が出る場合もありますし、足だけに障害が出る場合もあります。

頸椎症

頸部で脊髄が圧迫されることを頸椎症といい、その原因はさまざまです。頸椎の位置関係がずれることで脊柱管が圧迫されたり、椎体の後面を支える靱帯が石灰化して肥厚することで脊柱管が狭くなったり、椎体と椎体の間にあるクッション材である椎間板が変性して潰されることで周囲に広がり脊髄を圧迫したり、といった原因があります。

頸椎症は頸椎に起こる脊柱管狭窄症をまとめた言い方で、原因ごとに病名が異なり、それぞれで治療法が変わってきます。

頸椎で脊髄が圧迫されると、足だけではなく手にもしびれが起こります。重篤になると筋力が低下して立ったり手を動かしたりするのも困難となってしまう場合もありますし、最も重篤な頸椎損傷を起こすと四肢麻痺となってしまいます。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは椎間板の変性による脊髄の圧迫が腰椎で起こる疾患です。もともと椎間板は、椎体と椎体の間に存在し、クッションの役目を果たします。クッションであると同時に、しっかりと椎体と椎体がつながっていられるよう支える役目も担っています。

そのため、椎間板は一枚の板のような構造ではなく、真ん中に髄核というクッション性の高い構造があり、その周りを線維輪といって線維性の圧力に強い構造で支えるという構造になっています。

椎間板ヘルニアは、この中でも髄核が強く押されることでつぶれてしまい、線維輪から外にはみ出てしまうことで起こります。はみ出る方向によって、脊髄自体が圧迫されたり、脊髄から出てきた後の神経を圧迫したりとさまざまな症状へとつながります。両足のしびれを起こす場合もあれば、片足だけのしびれだったり、腰のあたりだけのしびれだったりと、症状はさまざまです。

坐骨神経痛

坐骨神経は、脊髄からでた神経が骨盤の中からお尻の辺りにある穴を通って後方へ出てきて、足の後ろの方を下降する神経です。主に太ももの後ろ側と、膝から下の感覚や運動を支配します。

とくに足先に至る神経は1メートル近くも神経がのび、最長の神経となっています。しかし長いということはそれだけダメージを受ける可能性が高い神経であるとともに、ダメージを受けたときに体の中枢から遠い部分で障害を受けるので修復に時間がかかることにもなります。

坐骨神経痛はこの坐骨神経が、主にお尻の辺りで圧迫されることで起こります。骨盤や大腿骨のズレによって圧迫されることが多いです。太ももの後ろ側から足先までビリビリとした痛みを感じることが多くなります。

足根管症候群

先ほど説明した坐骨神経は、膝の後ろで分岐します。そして足首の辺りの分岐で後脛骨神経になります。足首の辺りでは、くるぶしの内側にある足根管という管の内側を走行します。

この足根管が何らかの原因で炎症を起こしたり、周囲の組織が肥厚したりすることで狭くなり、後脛骨神経を圧迫することで起こる症状が足根管症候群です。足根管症候群では、くるぶしより先の足にしびれを感じます。足首を動かすと症状が強くなることが多いのが特徴です。

足の痺れや冷たさの原因になる血管の病気

足のしびれは骨や神経だけではなく、血管が原因で起こってくることもあります。足の血の巡りが悪くなることによって、神経が痛み、しびれの症状が起こってくるのです。

足の血管の病気で血流が悪くなってくる場合、しびれに加えて、足が冷たくなるという症状も見られるのが特徴です。また他の特徴として、安静にしていた時には特に症状がない人でも、歩いたり動いたりすることによって、症状が強くなってくるという場合もあります。

このような場合でも、一旦休むことによって症状が治まり、動き始めるとまた痛みが出てくるという風な症状の出方をします。これを間欠性跛行と言います。

血管が原因で起こっているものなのか、それとも神経が原因で起こっているものなのかを鑑別するためには、自転車に乗ってみると分かりやすいです。神経が原因でしびれが来ている場合は、自転車に乗って運動した場合には、あまり神経に負担が来ませんからしびれが強くなってくることはあまりありません。一方で、血管が原因でしびれが起こっている場合は、運動に伴って血液の必要量が上昇しますから、しびれが強くなってきます。

では、どのような血管の病気によって血液の流れが悪くなるのでしょうか。

閉塞性動脈硬化症 

閉塞性動脈硬化症は、下肢の動脈硬化によって動脈が狭くなることによって起こってくる 末梢閉塞性疾患の総称です。自覚症状として、ある程度狭窄が進行してくると間欠性跛行を感じるようになります。さらに悪化すると、安静にしている状態でも足が必要とするだけの酸素や栄養素を供給できなくなり、 足の壊死につながります。

好発年齢は動脈硬化が進行する50歳以上で、特に男性に多くなっています。高血圧や糖尿病、高脂血症を持っている場合や、喫煙をしている場合に発症しやすくなります。 

診断は、血流計を用いて血流の状態を確認したり、手と足の血圧の差を測定することによって、足の血圧が低下していることを見て診断したりします。確定診断をするためには、血管の造影検査が必要です。

軽症であれば、まずは運動療法と薬物療法が行われます。痛みが出ない程度の軽い歩行やプールなどでの運動が推奨されます。薬としては抗血小板薬や血管拡張薬が使用されます。

重症になってくると、何らかの手術が必要になります。カテーテルによって血管を形成したり、人工血管によるバイパス術が行われたりします。

さらに進行して足が壊死してしまうと足の切断が必要になることがあります。そこまで進行する前に治療を進めることが大切です。

バージャー病 

閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる病気です。下肢の動脈の中でも膝裏の動脈よりも遠位にある比較的細い動脈に好発します。血管に炎症が起こることによって動脈が狭窄したり、閉塞したりします。これによって虚血が起こり、足のしびれの症状が起こってきます。

40歳以下の男性の喫煙者に多く発症する傾向があります。発症の原因は分かっていませんが、自己免疫疾患の一部ではないか、遺伝的素因があるのではないか、と言われています。

検査の所見は閉塞性動脈硬化症とよく似ていますが、血管造影をした時に血管の細くなり方が異なるため診断ができます。

治療では、禁煙をした上で、抗血小板薬や血管拡張薬が使用されます。

レイノー症 

膠原病に合併する、指の血流不良をレイノー症状と言います。特に全身性強皮症などでよく見られます。 

寒さにさらされたり、緊張したりすることで、手や足の指先の細い動脈が発作的に収縮し、 血液の流れが悪くなることによって、手足の指の皮膚の色が蒼白になります。 

発作的に悪くなるものですから、次第に改善してきて赤みを帯びて元に戻ります。だいたい5分から20分程度で症状は消失します。

原因疾患がある場合にはその原因疾患の治療が第一ですが、個別の症状に対しては末梢血管の収縮や血小板の凝縮を抑制する飲み薬である血管拡張薬などが使用されます。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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