膵癌との関係は?膵嚢胞の種類と検査方法

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膵嚢胞性腫瘍(すいのうほうせいしゅよう)は、いくつかの異なった腫瘍を包括した疾患概念です。近年になって膵嚢胞性腫瘍と診断される頻度は増加傾向にあり、全人口のおよそ2%程度が本疾患を罹患しているといわれています。ここでは膵嚢胞性腫瘍の特徴や膵癌との関係について詳しく解説します。

膵嚢胞性疾患とは

膵臓に形成される病変のなかでも、水分を多く含む袋状の腫瘤が認められる病気を「膵嚢胞性疾患」といいます。

日常的に決して稀有な病気ではなく、80歳以上の高齢者では特に合併頻度が若年者よりも高く、年齢とともに罹患率が増えることも特徴のひとつです。

最近では、検診などで偶然に病変を指摘される患者さんも多く、腫瘤の特性として良性から悪性まで幅広く存在するため正確な診断や適切な治療を行うことが重要です。

本疾患に対しては、消化器外科、消化器内科、放射線診断科など様々な専門医によって適切な診断や具体的な治療方法が検討され、加療の必要性の有無を評価することになります。

特に、悪性のリスクを有する場合には、手術療法を前提に考慮して、より侵襲の少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術を施行することがあります。

膵嚢胞性腫瘍を、粘液産生の有無という観点から分類すると、粘液産生を伴う膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と粘液産生膵腫瘍(MCN)が存在し、一方で粘液産生を認めない漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)とSolid pseudopapillary neoplasm(SPN)に分けられます。

腫瘍性嚢胞

消化器のイラスト

膵嚢胞性疾患は、主に腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞の2つに分類されています。前者では膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、充実性偽乳頭状腫瘍、漿液性嚢胞腫瘍、後者では膵臓仮性嚢胞が挙げられます。腫瘍性嚢胞、非腫瘍性嚢胞の順に詳しく見ていきましょう。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は、膵管内に粘液を産生する腫瘍として知られており、膵管内が粘液で充満されることによって嚢胞状の形態を示しています。

本疾患では、膵管上皮から発生する腫瘍が認められ、腫瘤が存在する部位によって主膵管型、分枝膵管型、混合型の3パターンに分類されています。

このタイプの腫瘍は、良性から悪性まで多様な段階があり、長い月日をかけて緩徐に進行し、発生部位、腫瘍成分の状態、時間の経過とともに段階的に悪性に変化する可能性があります。

病変指摘時の腫瘤の存在部位場所や腫瘍の特性によって、各種検査で悪性所見が得られた場合、または悪性を強く疑うケースにおいては速やかに手術治療を勧められますし、良性と判断される際には経過を慎重に観察することもあります。

個々のケースによって、手術適応を判断する材料は異なりますし、手術方法についても腫瘍の発生部位やサイズなどの要因によって腹腔鏡手術か開腹手術かを選択することになります。

また、保険外適応の手術方法にはなりますが、ロボット支援下での低侵襲な手術療法も一部の施設では実施されています。

ほとんどの症例が無症状で経過しますが、膵管内の膵液の流れが腫瘤によって悪くなると膵炎を発症して、みぞおち周囲から背部にかけて疼痛症状を自覚することもあります。

基本的には、画像検査などで拡張所見を呈するのは、嚢胞自体ではなく膵管であり、腫瘍が産生する粘液が膵管内に貯留することに伴って膵管が膨らみ嚢胞のような形状を示します。

膵管内乳頭状粘液性腫瘍が発生する原因はいまだに明確にはなっていませんが、慢性膵炎、肥満、長期の喫煙習慣、過剰なアルコール摂取などがリスク因子として想定されます。

IPMNで特に注意しておくべき事項は、嚢胞自体が悪性化することがある、そして嚢胞以外の膵組織内部に別の膵臓がんが発生することが考えられるという点であり、IPMNが悪性化する頻度は年間で約1%程度とされています。

したがって、本疾患を認めた際には慎重に経過をフォローすることが重要なポイントであり、がん病変の発生を早期的に精査して発見することが重要です。

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)は、主に40~50代の中年の女性に多く認められる疾患であり、膵臓に多量の粘液を貯留する袋状の病変を有して、約9割以上の確率で膵臓の中でも膵体尾部に腫瘍が発生することが知られています。

粘液性嚢胞腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍に次いで、代表的な膵嚢胞性腫瘍のひとつであり、腹痛や体重減少などの兆候を認めることで指摘される場合もありますが、基本的には特徴的な自覚症状は乏しいことがほとんどです。

半数以上の症例が、検診などでのCT検査や超音波検査といった画像検査で偶然に発見されることが多いといわれています。

通常の膵臓がんやIPMNを含む膵上皮性腫瘍の場合は、膵液の通り道となる膵管上皮から発生するといわれている一方で、MCNは膵臓組織の実質部に迷入した特殊細胞から発生するという見解があります。

粘液性嚢胞腫瘍の発生に通常の膵臓がんで認められる遺伝子異常が関連しているという意見もありますが、現代では分子生物学的にも病気の要因の詳細は不明となっています。

本腫瘍を放置すれば、がん病変を発生して悪性化する割合が高いと指摘されており、患者さんには負担が比較的少ない腹腔鏡手術を中心として手術治療が推奨されます。

充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)

充実性偽乳頭状腫瘍は、主に若年の女性によくみられる低悪性度の腫瘍であり、悪性に変化する確率はおよそ10%程度で決して高くはありませんが、基本的には手術適応と判断されることが多いです。

このタイプの腫瘍も健康診断の超音波検査などで偶然発見されることが頻度的に多い疾患であり、様々なバリエーションがあり、その治療方法も多岐にわたります。

漿液性嚢胞腫瘍(SCN)

漿液性嚢胞腫瘍も粘液性嚢胞腫瘍と同様に中年齢層の女性に高頻度で認められる膵疾患であり、膵臓領域にさらさらしている性状の漿液を貯留する袋状の病変を有するのが特徴のひとつです。

腫瘍の多くが良性であることが多いため、ほとんどの症例で手術療法ではなく、慎重に外来レベルで経過を観察することとなりますが、どうしても悪性と鑑別が難しいケースや腫瘍サイズが巨大化している場合には、外科的手術治療を推奨される場合も想定されます。

非腫瘍性嚢胞

非腫瘍性の膵臓仮性嚢胞は、いわゆる一般的な膵炎や外傷後に形成される嚢胞性病変であり、嚢胞成分の多くは膵液や炎症と共に壊死した組織です。

嚢胞サイズが小さければ自然消退することもありますが、嚢胞液が貯留し続けて嚢胞自体が巨大化して腹痛症状を呈する、あるいは細菌感染を合併することが考えられます。

膵液は強力な消化液であり、膵液が漏出して膵臓周辺臓器や周囲を走行している血管組織に悪影響をおよぼして、臓器機能障害を引き起こす、あるいは血管部位から出血するパターンも想定されます。

巨大な仮性膵嚢胞については、上部消化管内視鏡を活用して、胃内部から嚢胞存在部位に管を挿入して嚢胞内の内容物を胃内に排出してドレナージする治療が実践されます。また細菌感染を合併した仮性膵嚢胞例に対しては外科的な根治手術を実施することもあります。

膵嚢胞と膵癌の関係

膵嚢胞と膵癌の関係を見てみましょう。

癌化のリスクが高い膵嚢胞

膵嚢胞は無症状で経過し、検診などで行われた超音波検査やCT検査などをきっかけとして、偶然に病変を指摘されることがありますが、場合によっては腹痛や嘔気などの症状が認められることも見受けられます。

悪性腫瘍との関連性が強い膵嚢胞の場合には、病気の進行とともに体重減少や食欲不振、倦怠感などの全身症状が出現することがあります。

特に、IPMNと呼ばれている膵管内乳頭粘液性腫瘍は、注意すべき膵臓にできる嚢胞病変の一種であり、膵液の流れる膵管内部に、盛り上がるように増殖する腫瘍であり、豊富な粘液を分泌することが特徴のひとつです。

癌化のリスクが低い膵嚢胞

膵嚢胞性疾患は、膵臓にできる嚢胞(ふくろ状の)の形態をとる腫瘍の総称で、治療の必要のない良性の腫瘍や炎症性疾患もあり、いくつかの異なった疾患をまとめた疾患概念です。

典型的な症状はなく、CTやMRIなどにより偶然見つかることの多い病気であり、急性膵炎や慢性膵炎など炎症に伴ってできる良性嚢胞もあります。

代表的な良性の癌化リスクが低い膵嚢胞性疾患としては、仮性嚢胞や漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)が挙げられます。

経過観察と手術

膵嚢胞は先天的なもの、後天的なものなど種類が多彩であり、がんと関連するものもありますし、生まれつき先天的に発症することもあれば、後天的な要因によって発症する症例もあります。

特に、後天的に発症する場合には、膵炎や腹部の外傷、アルコールの大量摂取などが原因となることがあります。

膵嚢胞性病変(PCL)は、近年の腹部画像技術の進歩により偶発的に発見される頻度が増加してきています。

膵嚢胞の種類によって対応が異なるため、検診などで指摘を受けた場合には、詳細な診断を受けることが重要であり、特にがんの発生が懸念される場合には手術加療が行われる場合もあります。

特に、IPMNの治療方針は、原則的に国際膵臓学会で作成された国際診療ガイドラインに従って行われていて、IPMNの中でも、特に、主膵管への進展がなく、腫瘤がはっきりしない「分枝型」のIPMNは、悪性の可能性が低く、経過観察をすることがあります。

主な治療は、膵嚢胞の種類によって異なり、膵炎や外傷による仮性嚢胞の場合は、経過中に出血や感染症を起こすことがあるために、点滴や絶食、抗生物質などによる内科的な治療、あるいは場合によっては手術が実施されます。

膵嚢胞性疾患の検査

膵嚢胞性疾患に対する精査方法の一つとして、超音波検査が挙げられます。超音波の器械を身体にあてて実施する検査であり、負担が少なく簡便に施行できるタイプで、膵臓のおよそのスクリーニング検査として状態評価が行われます。

また、腹部の造影CT検査は造影剤を静脈血管内に注入して、嚢胞を含む膵臓全体を精度よく調査できます。

さらに、核磁気共鳴装置(MRI)を用いた検査を実施することで嚢胞と膵管の関係を詳細に把握することができますが、磁力を用いて行われるために心臓ペースメーカーや人工弁など体内金属が挿入されている際にはMRI検査を受けることができません。

また、内視鏡を十二指腸の深部まで挿入して進めて、膵管に管を通して造影剤を注入することで膵管と嚢胞の存在位置や交通の有無などを評価することができる検査方法もあります。

内視鏡検査には、膵液を直接的に採取し検体として提出することで病変部の良悪性を判断できるというメリットもあります。

まとめ

これまで、膵嚢胞性疾患とはどのような病気か、腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞を中心に解説してきました。

膵嚢胞性疾患の具体的な鑑別は専門医療機関での精密検査が必要で、診療経験豊富な専門医によって適切な治療方針を判断して、慎重な経過観察が重要になると考えられています。

継続的な診療を実施することによって、早期の病変発見につながりますので、膵嚢胞と診断された方や心配や不安がある場合には、消化器内科など専門施設に受診することを心がけましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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