血管年齢とは?検査方法と若く保つためのポイント

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血管年齢という言葉を聞いたことはありますか。血管は年齢に応じてだんだんと劣化していきますので、それを表現した言葉になります。ただし、そうした検査がどの程度信頼に足るものなのかを知っておくことが大切です。ここでは血管年齢の検査方法や、血管を若く保つためのポイントを紹介します。

血管年齢とは

動脈硬化 イラスト

人は生まれてから成長し、だんだんと老化していきます。特に老化による影響が早期から出てくるのが血管になります。

血管は若いころには弾力性に富んだ構造をしています。弾性線維という線維が血管の壁にあり、それによってゴムのように軽く伸び縮みすることで血液を適切に全身に送り届けることができます。

年齢を重ねるにつれて血管の弾性がなくなっていきます。弾性線維の量が減少し、代わりに石灰化と言ってカルシウムが沈着するようになってきます。カルシウムが沈着すると血管の壁は固くなってしまうのです。

このような弾性力の低下を血管年齢の老化度として表現しているのです。一般にこれぐらいの年齢の人と同じぐらいの血管の硬化度である、というのを判別する検査と考えるといいでしょう。

血管年齢を測定する理由

血管年齢が高くなる動脈硬化の原因は加齢以外にも様々な原因があります。その中でも最も大きな要因が脂質異常症です。いわゆるコレステロールや中性脂肪が高い状態になります。コレステロールや中性脂肪は血管壁に付着します。すると血管が変性を起こして硬くなってしまうのです。

血管年齢が高くなるとそれだけ血管が詰まったり、破れたりと言った病気になるリスクが高くなります。しかし、実際にそのようなイベントが起こるまでは中々症状が見られることはなく、気づかないうちに進行して行ってしまいます。そのため、血管年齢を測定して自分のリスクを正しく知り、対応する事が必要になるのです。

血管年齢の検査方法

では、実際にはどのような検査をして血管の硬さを計測しているのでしょうか。

CAVI検査(心臓・足首血管指数検査)

キャビィ検査とも呼びます。一般的な動脈の硬さを測定する検査です。

心臓から押し出された血液が手や足の末梢に届くまでの時間を計測することで、どれぐらいの速度で血液が流れているかを測定します。それにより、血管の硬さを調べます。

血管が弾力がある状態であれば速度はゆっくりです。しなやかな血管の中を血管を押し広げながら血液が進んでいくためです。しかし、動脈硬化が進行してしまうと血管が硬くなり、動脈を押し広げながら進む事ができなくなりますから、あっという間に血液は末梢までたどり着いてしまいます。

CAVIで測定される値は動脈硬化が進むほど高くなり、9.0を超えると約半数が脳動脈や冠動脈に動脈硬化を発症していると言われています。

ABI検査(足首・上腕血圧比検査)

足に至る動脈が詰まっていないかを確認します。健康なひとでは、手と足首の血圧を測定して比べた場合、足首の方がやや高い血圧となっています。しかし足に至る血管のどこかが詰まっていると足首の血圧の値が低くなります。

この手と足首の血圧の比率を出すのがABI検査になります。値が0.9未満ですと血管が詰まっている可能性が高いと判断されます。

血管年齢はあてにならない?

上記のような検査は医療機関でも行われている血管年齢測定になります。一方で、指先のセンサーで測定する血管年齢測定器も街中や一部のクリニックなどにはあります。

この指先センサーによる測定は、指先で測定される血液の脈波を測定する事で値を出しています。しかし、指先の血流は体温やその他様々な要因によって変わってきますので、正確な値が出ることは少なくなっています。

そのため、血管年齢を簡易に測定する検査はあまり当てにならないとも言われています。

血管年齢を若く保つためのポイント

和朝食を食べる女性

では血管年齢を若く保つ、すなわち動脈硬化を防ぐためにはどのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。

塩分の摂り過ぎに注意する

塩分が多い食事をすることで動脈硬化の進行を促進してしまいます。塩分の代わりに出汁などの旨味を多くした食事にすることで、塩分を過剰に取らないようにして対策していきましょう。

食事内容を考慮する

血管年齢を若返らせるためには、肉食よりも魚食が勧められます。魚は良質なタンパク質を豊富に含むほか、動脈硬化の原因となる血液中のコレステロールや中性脂肪を低下させるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含んでいます。

特にあじ、鯖、鰯、マグロ、サンマなどに豊富に含まれていますから、積極的に摂取するようにしましょう。

ほかには大豆製品も有効です。大豆に含まれるイソフラボンは、特に更年期以降の女性の動脈硬化を改善させると言われています。また納豆にはナットウキナーゼという物質が含まれており、この成分が血液をさらさらにして心筋梗塞や脳卒中を予防してくれます。

また、食物繊維の摂取も必要となります。食物繊維は、コレステロールが小腸が吸収されるのを抑える働きと、腸管での糖質の吸収を抑える効果があり、これらの効果から動脈硬化を防いでくれます。玄米や海藻、キノコ、野菜などに食物繊維が多く含まれています。

運動を取り入れる

運動をすることで血管年齢を若返らせることができます。

とくにウォーキングやジョギング、スイミング等の有酸素運動は効果的です。週に4~5日、30~60分程度行うことで動脈の硬さが軽減することが分かっています。

ただし、運動をしたらすぐに硬化が出るというものではありません。継続して運動を行う事でだんだんと効果が出てくるものです。効果を中々実感する事ができないものになりますから、継続は難しいかもしれません。

そのような場合は、できれば1日5分を目標に、毎日行う事を目標にするとよいでしょう。運動の効果は1日半~2日程度持続すると言われていますから、毎日行うことで継続的にその効果を享受することができるのです。

簡単なものではラジオ体操や、ゆっくり行うストレッチが挙げられます。いずれも継続することが大切です。

特に下半身を鍛えることを意識した運動はより効果的である可能性があります。下半身を鍛えると体温が上がり、免疫力がアップします。

可能であれば食後のウォーキングも考慮してみてください。食後30分~1時間以内に歩くと血糖値の上昇を予防することができます。無理のない強度でゆっくりと始め、運動する習慣をつくりましょう。

飲酒・喫煙を控える

喫煙は動脈硬化の非常に強い増悪因子になります。禁煙は必須だと考えましょう。飲酒は適量であれば問題ありませんが、飲み過ぎは血管年齢を進行させる心配があります。お酒は適量に控えるようにしましょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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