膵臓が悪いと出る症状とは?膵臓がん・膵炎・膵のう胞の症状の出方

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膵臓は胃の後ろ側に位置しており、およそ20センチ程度の細長い形状をしています。

膵臓は膵液と呼ばれる消化酵素を作成して十二指腸に送り出す役割を担い、また血糖値を制御するインスリンというホルモンを合成して、血液中に供給しています。

ここでは膵臓の病気にかかったときに、どのような症状が現れるのかを見てみましょう。

膵臓の病気で出る症状は?

膵臓は身体の深部に存在しているため、膵臓が悪くなって膵臓疾患を発症しても初期症状が非常に乏しく、かなり進行してから初めて有意な症状を自覚する場合が多いと考えられています。

膵臓に関連する主な症状としては、みぞおち周辺部の腹痛、背中全体に拡がる持続的な背部痛、嘔気、嘔吐、発熱、腹部膨満感、食欲不振、体重減少、黄疸などがよく知られています。

特に、上腹部に激痛を自覚している、普段から吐き気と嘔吐を繰り返している、尿が出なくなった、眼球や全身が黄色く変色する黄疸所見が認められる、常日頃からアルコールを多量に摂取しているなどの項目に該当する際には膵疾患を強く疑います。

膵炎の初期症状には定まったものはなく、症状様式には個人差がありますが、症状を放置して治療せずにいると、免疫機能低下や色々な病気のリスクが上昇する心配があります。

最初に、膵臓の病気に共通してみられる症状の特徴を確認しておきましょう。

腹痛・背部痛

膵臓がんなど膵臓の病気を罹患した際には、腹痛が起こることがあります。

また、膵臓に関連する腹痛は発熱を伴うこともあるため、発熱と腹痛が見られた時には膵臓がんや膵炎の初期症状であるかもしれません。

膵臓の病気においては、上腹部痛は最も多く見られる症状で、食事とは関係なく、背中の痛みや夜中の痛みなどが激しく続くのが特徴的です。

膵臓の周囲にはたくさんの神経が分布しているため、がんが浸潤して炎症が起きると神経を侵しやすく、そのため痛みも強くなります。

腹痛、みぞおちの痛み、背部痛は胃の痛みと思われがちですが、膵臓に何らかの病気がある可能性もあります。

胃の病変からくる痛みはゲップ、胸焼け、胃もたれの症状を伴うことが多いですが、膵臓からくる痛みは何もしなくてもずっと痛い、体勢を変えてもずっと痛いというのが特徴のひとつです。

腹痛、背部痛を胃の痛みだろうと自己判断することはとても危険ですので、症状が継続する際には必ず医療機関を受診するようにしましょう。

膵臓は腹部からは奥の方に位置するため、背中や腰辺りに痛みが出現します。

腰や背中の痛みは初期症状だけでなく進行した症状でも起こる場合があり、膵臓がんが進行して、神経などにがんが浸潤すると背中や腰に痛みが生じます。腰や背中が痛みだしたらなるべく早く医療機関の受診を検討しましょう。

嘔吐

膵臓の病気に関連する症状として、腹痛の次に多いのが吐き気と嘔吐であり、吐いても腹痛は続くといわれています。

自覚症状は、腹痛が90%以上にみられ、悪心・嘔吐が20%、背部痛が15%にみられますし、前屈みの姿勢になると腹痛や嘔気が軽減する傾向があります。

急性膵炎や慢性膵炎などにおいては、食欲不振、悪心・嘔吐、腹部膨満感など、いわゆる「お腹の不調」を呈する症状が一般的であると考えられています。

黄疸

黄疸は肝臓の胆汁がうっ滞することで起こる症状なので、膵臓がんとは結び付けにくいかもしれません。

肝臓からの管が膵臓の頭部を貫いて十二指腸や肝臓につながっており、膵臓がんなどの病変によって胆管部位が圧迫されると、胆汁の流れが滞るため、黄疸が出現します。

特に、膵臓がんが膵頭部にできていた場合、がんの大きさが小さくても黄疸の症状が出てくるので、膵頭部のがんであった場合に限り、がんの初期にも黄疸が症状として見られます。

黄疸とは体や白目が黄色くなることで、膵臓がんが進行し、肝臓から出る胆汁の通り道をせき止めることで起こります。

せき止められた胆汁は、通常入り込むことのない血液中に入り込み、胆汁の中のビリルビンが全身や眼球結膜部を黄色くさせてしまいます。

ご家族から体や白目が黄色いと指摘されて受診されるケースも多く、黄疸の所見が出現する病気で軽視して良いものは基本的にはありませんので、異常に気付いたら早めに消化器内科などの専門医療機関を受診するようにしましょう。

食欲不振・体重減少

膵臓がんや膵炎になって膵臓の機能が低下すると膵液の分泌が低下し、膵液は消化液のひとつであるため、食欲不振が症状として出現します。腹部膨満によって胃が圧迫されて食欲が出なくなることもあります。

また、体重減少は膵臓の病期の特徴的な症状であり、膵臓がんの細胞増殖によって悪液質や十二指腸へのがん浸潤、消化酵素の分泌低下、食欲減退など進行するとともに体重の減少率が激しくなります。

身体の中にがん細胞が増えると、がん細胞そのものが食欲をなくすような成分を放出し、がん自体が体に必要な栄養分を吸収する結果、体重減少が起こります。

ダイエットをしているわけではないのに体重が減った、食欲がない、しっかり食べているのに体重が減っていくなどの症状があった場合には膵臓の病気が考えられますので、専門医療機関を受診しましょう。

ここからは膵臓の代表的な病気を取り上げ、病名ごとに症状の特徴を詳しく見ていきましょう。

急性膵炎の症状

急性膵炎は、普段から過剰に飲酒する場合や脂っこい食事を積極的に摂取している人が罹患しやすい病気です。

急性膵炎の主な症状としては、急にみぞおち周囲から臍部周辺に七転八倒するような激しい腹痛が出現するとともに、膵臓が背中側に位置しているために、背部や腰部に疼痛症状を自覚することもあります。

痛み症状以外にも、嘔気や嘔吐、発熱などの症状が随伴して認められることもあります。

急性膵炎の治療は基本的に一定期間絶飲食にして薬物治療を実施します。重篤な場合は生命に直結することもあるため、過度のアルコールや脂肪成分の摂取を控えるなど飲食の節制を心がけましょう。

急性膵炎になる原因

急性膵炎における三大原因は、アルコールと胆石、脂質異常症です。

普段からアルコールを多飲する習慣がある、脂っこいものを連日のように大量に摂取する、脂質異常症や胆石症を有している、といった人が急激に腹痛症状を自覚した際には急性膵炎の発症が疑われます。

膵炎を起こすメカニズムは明確には判明していませんが、過度のアルコール成分を摂取することによって膵管が狭窄しやすくなり、膵液分泌量が過剰に増加することで膵臓に強い炎症が惹起されると考えられています。

また、時に内視鏡検査の合併症の一つとして急性膵炎を発症することがあります。

慢性膵炎の症状

急性膵炎は激しい炎症が膵臓領域で急激に引き起こされる一方で、慢性膵炎は小さな炎症が繰り返して膵臓のあらゆる部位で認められて、緩徐に時間をかけて病状が進行していくのが特徴です。

慢性膵炎に伴う主症状としては、腹痛や背中の左側の痛み、嘔気、倦怠感、腹部膨満感、下痢・軟便、体重減少などが挙げられます。

また、初期段階では無症状であったとしても、飲酒や過食などの行動が続くことによって強い発作的な腹痛や背部痛を自覚する場合もあります。

初期には腹痛や背中の痛みを自覚するものの、経過とともに疼痛症状を感じにくくなることもあります。

まれに全く自覚症状がないケースもありますが、自覚症状がなくても膵臓内部で炎症が進行して膵液などの消化酵素やホルモン機能低下を認める場合もあります。特にインスリンホルモンの機能が低下すると糖尿病発症のリスク因子となることが知られています。

慢性膵炎では、膵臓機能が顕著に低下して、食べ物を消化吸収する能力が乏しくなることによって、下痢症状、あるいは摂取した脂肪成分が便に混じる脂肪便、そしてそういった便通異常に伴う体重減少などの症状が出現することも考えられます。

慢性膵炎になる原因

慢性膵炎は、主に過剰なアルコールによって膵臓が変性して周囲組織が線維化して固くなり、膵臓の全般機能が低下する病気であり、ときに自己免疫機能が関連して慢性膵炎を罹患する場合も見受けられます。

膵のう胞の症状

膵臓は、消化酵素を分泌する機能を有していますが、仮に膵臓に炎症が惹起されると、この酵素によって溶解された周囲組織に水成分が溜まって袋状の構造物である「膵のう胞」が形成されます。

稀な病気であり、膵臓内部に形成されると、なかなか悪性腫瘍と区別することが困難であるといわれています。

膵のう胞自体に有意な症状はなく、また良性と判定されることが多いために積極的な手術治療などを行わずに経過観察可能と判断されるケースがほとんどです。

膵のう胞になる原因

膵のう胞は、膵臓に出来る液体が溜まっている袋状の構造物を指しており、膵のう胞が形成される原因には様々な背景があり、大きく区別すると腫瘍性、あるいは炎症性に分類されます。

膵臓がんの症状

膵臓は胃の背面後部に位置しており、その長さが約20センチ程度の左右に細長い臓器であり、その膵臓の中心部を貫いて網目状に走行している管構造を膵管と呼称しています。

膵臓にできるほとんどのがん疾患がこの膵管細胞に生じる「膵管がん」であると考えられており、通常では「膵臓がん」は膵管がんのことを意味していることが多いです。

初期は自覚症状がないものの、病状が進行すると、腹痛、腹部不快感、食思不振、体重減少、黄疸症状などが出現します。

膵臓がんになる原因

膵臓がんの発症危険因子としては、慢性膵炎や糖尿病に罹患している状態であること、あるいは血縁関係を有する近親者や家族内に膵臓がんを発症した人が存在すること、が挙げられます。

特に、これまでに血糖値の異常が指摘されなかったにもかかわらず突然高血糖状態が認められる、あるいは糖尿病患者の血糖コントロール状態が急に悪化する際には、膵臓がんの存在を疑うことになります。

膵臓がんは、日々の喫煙習慣や肥満体形、糖尿病、慢性膵炎、遺伝的要素など様々な要因で発症すると考えられていますが、直接的原因についてははっきりとは分かっていません。

まとめ

これまで、膵臓が悪いと出現する代表的な症状、病気による症状様式の違いを中心に解説してきました。

膵臓は胃の裏側に位置しており、十二指腸に隣接した臓器として知られています。

膵臓には、消化酵素を含む膵液を分泌して消化を促す重要な機能があると同時に、糖代謝を調節して血糖値を一定に保つ働きを有するインスリンホルモンを分泌して、体内の糖分を安定的に制御する働きがあります。

腹痛、背部痛、食思不振、嘔気、嘔吐、下痢、体重減少、黄疸など膵臓の病気が疑われる際には、膵炎などを早期発見して速やかに治療開始することで、症状進行の抑制や合併症予防が期待できます。

腹部症状を中心として心配な症状が続いている方は、消化器内科などの専門医療機関を受診して相談することをおすすめします。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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