ウイルス性イボは自分で治せる?市販薬・液体窒素・モノクロロ酢酸など
イボは多くの人に見られる症状です。イボの多くはウイルスによるイボで、体の一部分にまとまって複数個のイボが見られるのが特徴です。ここではウイルス性イボの治療方法について解説します。
目次
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)とは?
ウイルスによるイボは、日本語の病名では尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)といいます。医学用語の「尋常性」とは、「よくある」という意味で、イボを意味する「疣贅」につながることでイボの中でもよく見られるものという意味で名付けられています。
尋常性疣贅の原因となるのは、ヒトパピローマウイルスの感染です。ヒトパピローマウイルスは皮膚と皮膚が接触することによって感染します。
この皮膚と皮膚の接触は他人との接触だけではなく、自分自身の皮膚から他の部分の皮膚への感染も意味しています。特に近くの皮膚へと広がることが多く、体の一部分にイボがいくつか固まってできる傾向があります。
イボは表皮の下の真皮層が表層へと広がっています。真皮層には毛細血管が通っていますから、イボを切り取ると点状に出血が見られます。
ウオノメやタコとの違い
ウイルス性イボはウオノメやタコ、脂漏性角化症とは性質が異なります。違いを確認しておきましょう。
ウオノメとは
魚の目というのは、一般的には大人の足の裏や足の指にできるものです。肌に繰り返し強い刺激が加わることで発症します。一定の場所に強い力が加わり続けることで、肌を構成する 表皮細胞が反応性に増殖し、盛り上がってきます。
中心部分に硬い芯のようなものができ、これが魚の目のように見えることから魚の目という名前がつきました。歩く時に力がかかると強い痛みを感じます。
魚の目ができた場合、治療としては痛みの原因となる中心部分の角質を除去することから行われます。ほとんどの場合、スピール膏と呼ばれる角質を柔らかくする塗り薬を塗って、皮膚を柔らかくしてからメスやハサミを用いて切除を行います。ただし、切除した後治るまでの間に痛みを伴いますから、電気焼灼法や冷凍凝固法を用いる場合もあります。
タコとは
タコも魚の目と同じように、皮膚のある部分に一定の強い刺激が継続的に加わることでできます。魚の目と違い、足に限定されるのではなく体の様々な場所にできます。ペンだこや 座りだこなどが代表的です。
魚の目と異なり、タコの場合には全体が黄色みがかって見える特徴のほか、痛みをあまり感じないという特徴もあります。
タコは皮膚の表皮層が分厚くなったものです。表皮層には血管が通っていませんから、タコを切り取っても出血はありません。
治療は魚の目と同じようにスピール膏を塗って柔らかくした後、メスやハサミで取り除きます。痛みがあまりないことが多く、この方法でほとんどの場合は完治します。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)とは
ウイルス性イボのほかに老人性のイボもあります。こちらは脂漏性角化症といい、褐色から黒色のイボ状隆起をいいます。シミが膨らんでくる感じだとか、皮膚に粘土をつけたような感じと表現される病変を示します。
脂漏性角化症は皮脂分泌が多い部位にできやすいです。病気の原因としては、皮膚の表皮細胞が皮膚の中で増殖をすることによって起こります。こちらはウイルス感染とは関係なく、尋常性疣贅とは全く別の病気です。
ウイルス性イボとは原因が異なるので注意
このように、魚の目やタコは、局所に力がかかり続けることによって起こってきます。一方で、ウイルス性のイボは、前述のようにヒトパピローマウイルスが皮膚に感染することによって起こってくるものですから、原因が異なります。
ウイルス性イボの場合には、イボが裂けて中からウイルスが放出され、他の部分に感染することで広がりを見せるという特徴があります。一方、タコや魚の目は、力がかかり続ける場所にのみできますから、基本的に広がることはありません。
最初は魚の目と思っていても、数が増えてきたり、別の場所にできたりした場合には、ウイルス性のイボを強く疑うことになります。治療法が大きく変わってきますから鑑別することが非常に大事です。
市販薬でウイルス性イボを自分で治すには?
放っておくと広い範囲にどんどんと広がっていくこともあるやっかいなイボですが、イボを治療する市販薬があります。
ヨクイニン
ヨクイニンはハトムギの、皮を除いたタネのことです。古くからさまざまな薬効を期待され利用されてきた生薬で、炎症を抑える作用の他、体の水分バランスを整える作用があるといわれてきました。
ヨクイニンを内服すると、肌の代謝が正常化され、異常に増殖している皮膚の細胞を正常化させることでイボの改善を期待します。
効果が出るまでは個人差が大きく、早い人では1週間程度で効果を感じる人もいれば、数か月かかって改善を感じる人もいます。
サリチル酸
サリチル酸はβヒドロキシ酸に分類される植物由来のホルモンで、化学的に合成することも容易な物質です。
皮膚に塗ることで、炎症を抑えたり皮膚の角質を柔らかくする作用があります。イボに塗ることで固い表面を柔らかくし、浸透することで炎症を抑え、それ以上のイボの増殖、成長を抑えます。
イボに対して外用する市販の薬はほとんどがこのサリチル酸を含んでいます。
病院で受けられるウイルス性イボの治療法
ウイルス性イボに対しては、市販薬では十分に対応できないことも少なくありません。そのような場合や、早く治したい場合は病院を受診し、治療を受けるのが良いでしょう。病院での治療法を紹介します。
液体窒素
よく行われるのは液体窒素による凍結療法です。イボに対して最も一般的な治療法で、日本皮膚科学会でも推奨している方法になります。
方法としては、マイナス196度の液体窒素を綿棒に含ませて、イボに押し当てます。約5~30秒ほど当てることで、皮膚の表面が凍結され、変色します。出血を伴うことはほとんどありませんが、長めに治療を行うと深い層まで冷やされて、若干の痛みを感じる場合があります。
治療後は特に生活の注意点はなく、ガーゼや絆創膏による保護も必要はありませんし、入浴も可能です。しかし1回の治療では肌に住み着いたウイルスを完全に死滅させることはできないため、2~3週間に1回のペースで複数回治療を続けます。これにより、イボがだんだんと小さくなり、完治します。
イボが大きい場合や深い層まで感染が及んでいる場合などはなかなか完治まで行かないことも多いため、他の治療と併用します。
モノクロロ酢酸
モノクロロ酢酸というのは、強い酸性を持つ化学物質のことです。イボに塗ることで、イボの組織を壊死させて取り除くことができます。日本皮膚科学会が発表している尋常性疣贅診療ガイドラインでも選択肢の一つとして記載されています。
冷凍凝固もモノクロロ酢酸も、いずれもイボの細胞を壊死させることによって除去することに変わりはありません。冷凍凝固の場合には液体窒素の保存の難しさがありますが、モノクロロ酢酸はそのような手間がいりません。
実際の手順としては、まずイボが分厚い場合にはカミソリやメスを用いて表面をある程度削ります。そして削って薄くなった部分に、爪楊枝などを用いてモノクロロ 酢酸を塗っていきます。尖っている先端で、イボに少し差すように塗るのがコツと言われています。
綿棒や綿球などはモノクロロ酢酸を吸い取って効果が落ちてしまうのであまり良くないとされています。塗った後は乾くのを待って治療は終了です。
注意点もあります。モノクロロ酢酸が正常な皮膚に付着すると、皮膚がダメージを受けて水ぶくれや傷になってしまうことがあります。モノクロロ酢酸を塗った場所に水がつくとモノクロロ酢酸が希釈されて広がってしまい、正常な皮膚を傷害してしまう可能性があるので治療後数時間は患部を濡らさないことが大事です。汗によっても広がりますから、運動もしないようにします。
モノクロロ酢酸を用いると2~3日でイボが白く変色して脱落します。その後、2週間に1回くらいの頻度で治療を繰り返し、イボがなくなるまで続けます。
SADBE療法
SADBEとは、皮膚炎を起こす物質です。これを皮膚に塗ることで皮膚に炎症を起こし、免疫力を高めることでウイルスに対抗します。
この治療は皮膚に痛みを感じないのが特徴です。免疫力をじゅうぶんに高めた状態を維持するため、液体窒素療法より頻回な1~2週間に1回の通院が必要ですが、子どもにも可能で優しい治療と言えます。
ブレオマイシン局所注射療法
ブレオマイシン局所注射療法は、抗腫瘍効果のある抗生物質であるブレオマイシンをイボに直接注射することで効果を発揮します。こちらは月に1回程度行います。痛みが強いですが、効果が高いため、他の治療で効果が見られない場合に行われます。
ウイルス性イボのやってはいけないNG行動
イボには色々な民間療法があります。しかしその中にはやってはいけない治療法もあり、注意が必要です。
まず、よくいわれるのは「ピンセットでイボを取り去れば良い」というものです。昔からおばあちゃんが孫に行ったりしますが、深い層にあるウイルスに感染した細胞は取り去れないことが多く、また皮膚に跡が残ってしまう場合もあるため、やめた方が良いでしょう。
大人の場合は放置するのもよくありません。大人になってから感染するということは何らかの感染が広がりやすい要因がある可能性がありますから、放置しても良くなることは少なく、逆にどんどんとイボが広がって対処が難しくなる場合があるのです。
一方で子どもの場合は、周りに感染している子がいるときにうつってしまうことが多いです。この場合、一時的にイボが広がることはありますが、子どもの皮膚は代謝が早く、また免疫力もあるためしばらく様子を見て自然に回復するのを待っても良いとされています。近年までは子どもでも早めに治療をするべきといわれていましたが、最近はしばらく様子を見るのが主流になっています。
様子を見る場合はイボにあまり触らないようにすることが大切です。先に述べたとおり、ウイルスは接触感染で広がります。ウイルスが表面に付着していることもありますから、イボを触った手に感染したり、もしくはイボに触った手で他の場所に触ることでその場所に感染したりすることで、体の色々な場所に広がる可能性があります。ですので、イボはなるべく触らないようにして、入浴の際にきれいに洗うことが重要になります。