出口で詰まった感じがするのは直腸性便秘?摘便と薬による改善方法
食生活の欧米化に伴う食物繊維の摂取の減少、車社会による運動不足などによって、女性と高齢者を中心に便秘の人は増加しています。
出口で詰まった感じがする便秘を経験された方もいらっしゃることでしょう。このタイプの便秘はどのようにして起こるのでしょうか。ここでは出口で詰まる直腸性便秘を取り上げ、改善に役立つ薬の種類を紹介します。
目次
出口で詰まった感じがする便秘
水分不足や運動不足など便秘になる原因はさまざまです。
特に、排便困難型の便秘は肛門の出口付近で便が詰まっていると感じることがあります。
排便困難型の便秘は、便が硬いことが原因で起こるだけではありません。
排便をつかさどる機能に障害がある、あるいは大腸に疾患があったりするなどで、排便が困難になっている場合があります。
通常、大腸のぜん動運動により直腸付近に便が流入すると直腸壁が刺激されて、自然と排便反射が生じて、その後に起こるぜん動運動で肛門付近まで糞便が移動することで、脳は「便意」を感じます。
一般的には、便意によって人はトイレに行き、肛門付近の筋肉が緩んで便が肛門から排泄されますが、便意を感じてもすぐにトイレに行けない、あるいは朝食後など決まった時間に排便がなく、普段から排便する時間が不規則である場合には便秘になりやすい傾向にあります。
便意を感じた際に、排便を我慢してしまうと「便意」という信号は消失し、体は排便行動を起こす動機がなくなってしまい、肛門出口付近の便内容物が排泄されることなく溜まっていきます。
水分不足は硬い便が作られやすい
糞便の生成過程において、腸内容物は大腸の入り口に入ってくる際にはほとんど液体の状態であり、そこから徐々に水分が体に吸収されて、粥状→半固形状→固形という性状に変化していきます。
便内容物の7割程度は水分で構成されていますが、体の水分が不足気味になると、大腸での水分の吸収が亢進してしまい、水分不足の硬い便が形成されやすくなり、便が硬くて出口で詰まっているように感じることもあります。
腹筋や腸の動きの衰えが原因に
排便時には、横隔膜と腹筋を収縮させて腹圧を上昇させていきむことが多いですが、高齢者など腹筋の力が弱くなっていると、排便時にいきむ力も自然と弱くなることによって十分量を快適に排便しにくくなります。
排便時に力む機能が低下して、肛門付近の筋肉が自然と緩んでくれないと、便の通り道が塞がれて、排便困難になりますし、慢性的な運動不足は腸の動きを鈍くさせて便秘傾向になることがあります。
腸の動きが鈍くなると、腸管内容物の移動が停滞して腸内で便が留まる時間が長くなり、腸内で水分がさらに奪われて、硬い便が形成されやすくなるという悪循環に陥ります。
直腸性便秘とは
下剤の乱用や便を我慢することなどが原因となって、日本人の20人に1人が、大腸がんなどの器質的な病気がないにもかかわらず便秘と言われています。特に高齢になればなるほど便秘になる人が増加します。
直腸性便秘とは、「出口で詰まる」便秘のタイプです。
通常であれば、便が直腸まで来ると便意を感じ、排便反射が起こることで排便しますが、直腸性便秘の方は、便が直腸まで来ても便意がない、あるいは少し便意はあるもののタイミングを逃すと一向に出ないなどの症状に悩まされます。
基本的に、腸の蠕動運動は順調ですので直腸まで便が移動しますが、出口付近での便の固さが問題になり、固い便は肛門に引っかかってしまい、便が出かかっているのに出ない状態に陥りやすくなります。
摘便とは
摘便とは、自然排便ができない患者さんや麻痺があるなどの理由で腹圧が正常にかけられない場合、あるいは脊髄損傷や直腸機能障害を有する人に対して、便を用手的に排出する医療的ケアのことです。
特に、便の貯留があって自然に排便ができない方を対象として、直腸や肛門付近に出血や潰瘍などの病変がない場合や肛門の手前で硬い便が蓋をしてしまって自然排泄ができないといった嵌入便のケースに実施されることが多いです。
基本的には肛門周囲に病変がある、炎症性腸疾患を有する、腹部に疼痛を自覚しているケースや下血を認める患者さんなどには摘便行為は望ましくないと考えられています。
ただし、痔核や直腸瘤などが原因で自然排便できず、肛門付近に便が嵌入し苦痛が強い場合は、ケアを優先して摘便を実施することもありますが、必ず専門医師に確認のうえで実施することが求められます。
実際に、摘便ケアを実施する前には、必ず腹部を触診して、便が貯留しているかを確認することが重要であり、左下腹部の斜め横方向を触診して、固く触れれば便が貯留していると推測できます。
摘便は、患者さんの苦痛と羞恥心を伴うケアであり、また手技によっては直腸や肛門を損傷させてしまう危険性もあるので安全に十分に配慮する必要があります。
レントゲンなどの画像検査で便の貯留や位置を確認してから摘便を行うのが望ましいですが、実際の臨床現場では摘便目的に全例で画像検査を実施するのは難しいので、安全性に考慮したうえで摘便ケアに臨むことが求められています。
便秘を改善する薬の種類
便秘を改善する目的で用いられる薬には、主に坐薬、浣腸、内服の緩下剤があり、それぞれ特徴が異なります。
坐薬
便秘の際に用いる坐薬とは、肛門から挿入し、体温などで徐々に溶ける固形の薬剤のことを指しています。
坐薬は薬剤の成分が直腸から吸収されるので、肝臓を通過しない分、肝臓へ負担がかからず比較的安定した効果を発揮でき、基本的には他剤や食事などへの影響がほとんどありません。
坐薬は比較的安全に使用できると考えられるため、便秘時の第一選択薬となる場合があります。
座薬は炭酸水素ナトリウムを含み、直腸内で炭酸ガスを発生させ、その刺激で便通を促すものがよく使われていて、その作用は浣腸よりは穏やかであると考えられます。
浣腸
浣腸は、肛門や直腸を経由して腸内に薬液を注入し、直腸に貯留した便を排泄させる医療的行為です。
実際に浣腸を実施する場合にはグリセリンや薬用石鹸を使い、直腸を直接的に刺激して排便を促します。
便秘に対する浣腸の効果は即効的ですが、浣腸薬を挿入する時の手技などでトラブルが起こるリスクが考えられるため、患者さんの状況によっては慎重に適応を判断しなければならない場合があります。
内服薬(酸化マグネシウム、センノサイド、ラキソベロン液)
硬い便で排便し難い場合は、内服するタイプの便秘薬や緩下剤を使うことで便秘症状が解消する場合があります。
便秘薬の種類によっては、腹部が痛くなる場合などがありますので十分な注意が必要ですが、市販薬の酸化マグネシウムは腹部に刺激が少なく、代表的な便秘薬のひとつです。
酸化マグネシウムの特徴として、腸管内容物に水分を引き寄せて、柔らかい便を形成して排便しやすくしてくれますし、便の性状によって服用薬の用量も自己調整しやすいというメリットがあります。
それ以外にも、大腸刺激性下剤として、センノサイドやラキソベロン液などが知られていて、これらの緩下剤は腸を刺激して腸の働きを活発にして排便を促す作用を発揮します。
便秘を解消する効果は強いほうですが、習慣性があり連続して服用することにより効果が出現しにくくなる可能性がありますし、連日服用することに伴って腹部が痛くなることも多い下剤ですので、一定の注意を払う必要があります。
内服の便秘薬や緩下剤を試す際の注意点として、服用中の他の薬との飲み合わせが悪い場合もありますので、他の基礎疾患に対して服用している薬がある人は担当医師や薬剤師に事前に相談しておくと安心です。
まとめ
これまで、出口で詰まった感じがする直腸性便秘、摘便と薬による改善方法などを中心に解説してきました。
出口で詰まってしまう便秘は、「排便困難型」の便秘です。
便秘の際には、まずは常日頃から食生活を改善して、適度な運動や規則正しい生活習慣を送ることが大切なポイントとなります。
しかし、そうしたセルフケアを実施しても効果がない場合には、内服タイプの緩下剤や市販の座薬などの薬剤を用いることもあります。
排便困難型の便秘は、酸化マグネシウムなどの便秘薬を服用して症状が緩和できる場合もありますが、しつこく便秘が解消されない場合や長期に渡って便秘症状に悩まされる際には、消化器内科など専門医療機関に相談するようにしましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。