何もしてないのにお尻の筋肉が痛い!梨状筋症候群とは
筋肉痛になるような運動をしたわけでもないのに、急にお尻の筋肉が痛くなってくることがあります。原因はいくつも考えられますが、多くの場合は梨状筋症候群という病気を発症している可能性があります。ここでは梨状筋症候群をはじめとする、お尻が痛くなる疾患について解説します。
梨状筋はどんな筋肉?
梨状筋はお尻の奥深くにある筋肉です。仙骨と坐骨から始まって、大腿骨の大転子というところの内側に付着している筋肉です。筋肉自体は薄く平べったい筋肉です。体表から触っても触れることはできません。
梨状筋は収縮することによって股関節を外旋、つまり外側に開く運動をさせます。
梨状筋と坐骨神経の関係
梨状筋症候群の説明をするにあたって、梨状筋だけではなく坐骨神経という神経についても解説しなければなりません。
坐骨神経は腰椎や仙椎の高さで脊髄から出てくる神経で、骨盤の中から外に出てきて、足の方までずっと走る非常に長い神経です。足の運動や感覚全てを担う神経になりますから非常に太く、人体の中でも最も太い神経として知られています。
梨状筋の他に、同じような場所に付着して股関節を外旋させる筋肉として、上双子筋、下双子筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、大腿方形筋があります。これらの筋肉を合わせて深層外旋六筋あるいは6外旋筋と呼びます。
坐骨神経はこの筋肉の付近を走行します。個人差はあるものの最も多いパターンとしては、梨状筋とそれ以外の深層外旋六筋の間を通るものが多いです。他のパターンとしては、梨状筋自体を貫く場合や、神経自体が2つに分かれて梨状筋を挟んでいるパターンもあります。
このように梨状筋と坐骨神経は、非常に近くに存在しているということが分かります。
梨状筋症候群の原因と症状の特徴
梨状筋症候群は、梨状筋が異常に収縮することによって起こってきます。梨状筋が収縮すると坐骨神経が長期間にわたって圧迫されることになります。
神経というのは長期間にわたって圧迫されるとだんだんと痺れや痛みが出てきます。正座をした時に足がしびれてくるのと同じものです。症状が出る範囲は、腰から臀部、足の裏側にかけてが多いです。
梨状筋の収縮は、長期間にわたって座っていることによって起こってきます。 長く座ることによって症状がどんどん強くなってくることも多いです。座ること以外には草むしりや、ゴルフなどのスポーツ、 長時間の運転など、一定の姿勢を長い期間取ることによって起こってくることが多いです。一方で、歩くと楽になるという特徴もあります。
梨状筋が凝り固まっていると、普通では触れない梨状筋がコリコリと触れることもあります。
基本的には安静にしていると、筋肉のコリが解除されてくることによって、症状は落ち着いてきます。 落ち着くまでの間はロキソニンなどの消炎鎮痛薬を内服することによって痛みを抑えて経過を見ることになります。
他にもある臀部痛の原因
梨状筋症候群の他にも、同じように臀部の痛みをきたすような病気がいくつかあります。
坐骨神経痛
坐骨神経痛は、坐骨神経がその走行のうちどこかで圧迫を受けることで、しびれや痛みの症状が出てくる状態を言います。梨状筋症候群も、坐骨神経痛の一種と言えます。
坐骨神経痛を起こす原因としては、梨状筋以外の筋肉による圧迫や、人工骨頭置換術の術後、腫瘍や異所性の骨化、運動による股関節の使いすぎ、血管の異常、その他、何らかの解剖学的な異常などがあります。
基本的には神経が両側で圧迫されることはありませんので、片側のみの症状となるのが特徴です。
坐骨神経痛の主な症状としては、梨状筋症候群と同じようにお尻から下肢にかけての痛みや、長時間の立位が辛いといった症状があります。また腰を反らすと下肢に痛みやしびれを感じるというような症状も坐骨神経痛の特徴です。
またお尻の痛みが強いため、座っていることも困難となる場合もあります。歩くと下肢に痛みが出ることもあり、歩けなくなることもありますが、休むと歩くことができます。
坐骨神経痛は原因となる坐骨神経の圧迫が様々ですから、一概にどのような治療が行われるといったことは言いづらいです。ただ基本的には、安静によって症状が落ち着いてくるのを待つことが多くなります。
背骨の疾患
坐骨神経痛を引き起こす原因の一つに、腰椎の疾患があります。腰椎のところで、脊髄が通る脊柱管が狭窄する腰部脊柱管狭窄症が起こると、神経が圧迫されて坐骨神経痛の症状が出てくることがあるのです。
腰部脊柱管狭窄症をきたす疾患には腰椎椎間板ヘルニアや、 腰椎分離症があります。腰椎椎間板ヘルニアというのは、脊椎と脊椎の間にクッションとして存在する椎間板という組織が潰されて、椎間板の中心にある髄核という成分が後ろに飛び出すことによって起こってきます。飛び出した髄核が脊髄を圧迫することによって、神経が圧迫された症状が出てきます。
腰椎分離症というのは、簡単に言うと背骨と背骨がずれる病気です。骨がずれることによって、ずれた骨が脊髄を圧迫し、神経が圧迫されることによる症状が出てきます。
腰部脊柱管狭窄症による症状の場合、坐骨神経痛とは違い、症状が両側に出てくることもあります。また、尿失禁や頻尿など、排尿障害が出てくる場合もありますし、おしりや下肢だけではなく会陰部などの骨盤の前の方にもしびれの症状が出てくることがあります。
また、梨状筋症候群などの神経自体が圧迫される坐骨神経痛は体を後ろに反らせると症状が出やすいのに比べて、腰部脊柱管狭窄症による痛みは、前かがみになると痛みが出やすいという特徴があります。あぐらをかいたり、中腰や猫背の姿勢になると症状が出やすくなってきます。
腰部脊柱管狭窄症の場合、しびれが軽度であれば安静で経過を見ます。しかし、しびれが強い場合や、運動障害が見られるような場合には手術が行われることもあります。
肉離れ
臀部の筋肉の肉離れによっても、お尻の痛みが出てくることがあります。
肉離れというのは、筋肉が部分的に断裂することで炎症が起こってくるものを指します。多くの場合はスポーツをしている時に、足のふくらはぎなどに起こってくるものが典型的ですが、あまり運動していない状態で急に動いた時にお尻の筋肉に負荷がかかり、肉離れを起こすことがあります。
基本的には何かのきっかけによって症状が出てきたということがはっきりわかることが多いです。肉離れを起こしたときは安静にして、自然に軽快してくるのを待ちましょう。