脱水症による発熱の予防と対処法…子どもや高齢者の脱水に注意

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夏になると脱水症や熱中症という言葉をよく聞きますよね。夏場にクローズアップされがちですが、冬場にも脱水症の危険はあります。中でも高齢者や子どもには十分な注意が必要となってきます。ここでは脱水症について詳しく見ていきましょう。

脱水症とは

私たち人間の身体は、子どもで約70%、大人で約60%、高齢者で約50%が水分で占められています。体内の水分は、発汗による体温の調整機能、細胞への酸素や栄養素の運搬、汗や尿による老廃物の排出という大切な働きを担っています。

脱水の症状は体重の減少率によって変化します。体重減少率が大きくなるほど脱水の症状は重症となります。

軽度・中程度・高度の脱水

体重減少1〜2%は軽度の脱水で、喉の渇きや尿量の減少がみられます。軽い下痢や嘔吐、微熱がみられることもあります。

体重減少が3〜9%は中等度の脱水で、全身の倦怠感や頭痛、嘔吐、めまい、痰喀出困難、血圧低下、臓器の血流低下などがみられます。

体重減少10%以上は高度の脱水となり、心臓・腎臓・呼吸機能不全がみられ、死に至ることもあります。

脱水症の3つのタイプ

発汗や嘔吐・下痢などで身体の水分や電解質が失われると、免疫力や生命維持のための機能が障害されてさまざまな症状が現れます。脱水には3つのタイプがあります。

高張性脱水

汗をたくさんかいて喉が渇いたときにみられる脱水となります。電解質より水分の方がより多く失われ、体液が濃くなっている状態です。

早くたくさん汗をかくほど身体の中の水分が汗となって出ていき、水分が多く失われます。過度な運動に伴う脱水はこのタイプとなります。

等張性脱水

下痢や嘔吐によって体液が一気に失われたときに起こり、水分と電解質が同等の割合で失われる脱水となります。

低張性脱水

たくさん汗をかいているのにお茶や水などしか飲まずに電解質があまり含まれないために、水分よりも電解質が多く失われた状態となります。

脱水症と熱中症の違い

脱水症は、水や電解質が汗で失われている状態となります。脱水症になると、全身に十分に血液が巡らなくなり、腎臓などの臓器の機能が低下します。

また、食欲不振や頭痛・全身の倦怠感などの原因になります。さらに筋肉から電解質が失われることで、脚がつったり、手足のしびれが起こったりすることがあります。

一方で、熱中症とは気温の高い環境で、体内のバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなり、重症になると意識障害や最悪の場合死に至る可能性があります。

熱中症にはめまいや立ちくらみが起こるI度、頭痛や吐き気・倦怠感を伴うII度、意識障害を伴うIII度となります。

脱水症による発熱

水分不足になると体内の電解質バランスが崩れます。その結果体温調節機能がうまく働かなくなり、体温が上昇しやすくなります。

また、体内の水分が少なくなることで血流が悪くなり、身体に熱を溜め込みやすくなってしまいます。それに伴って発熱します。

脱水症による発熱の予防と対処法

脱水症かもしれないと感じた際は、何より水分とミネラルの補給が大事となります。脱水症にはスポーツドリンクが適しています。食塩とブドウ糖が混合している経口補水液であればさらにオススメです。経口補水液は、スポーツドリンクよりも電解質が高い組成になっていますので、脱水症状を感じた際は積極的に活用しましょう。

高齢者の脱水症の注意点

高齢者は加齢によって喉の渇きを感じにくく、また、トイレが気になって飲む量を控える人が多いです。そのため、水分の摂取量が少なく脱水症状になります。

また、腎臓の機能低下、水分を蓄える筋肉量の減少、利尿効果のある薬の内服、発汗による脱水など、身体の中の水分を失うことで脱水症状につながります。

喉の渇きがなくても意識的に水分を摂取するように心がけましょう。自身で意識できない場合は、ご家族・介護者に十分に気をつけてもらいましょう。嚥下が難しい場合は、ゼリータイプの飲料などトロミのある飲料を使用するのも良いでしょう。

入浴中は発汗しやすく水分が失われてしまいます。入浴前後に水分を摂取し、湯温を40℃以下にするなどの工夫をしましょう。高齢者でも運動習慣が身についていると、体温調節の機能を保てることが知られています。日常的に散歩やウォーキングなどの運動を取り入れましょう。

子どもの脱水症の注意点

子どもの中でも特に新生児や生後3か月くらいの乳児は、体内に占める水分が70〜80%と多いのが特徴です。

乳児では細胞外水分の割合が大きく、体に出入りする1日あたりの水分も大人よりもはるかに多いです。

一方腎臓で尿を濃縮する能力が大人の半分程度であるため、尿が多く、不感蒸泄(呼気や皮膚から失われる水分)によって失われる水分が大人の約3倍となります。そのため、感染症などによる哺乳量の減少や下痢、嘔吐などの症状による影響を受けやすく、水分を欠乏しやすくなります。

体内の水分バランスを維持するために必要なのが水分補給です。その目安となるのが喉の渇きとなります。保護者や周囲の方は、小児が喉の渇きを訴えたときは水分補給するよう環境を整えたり、指導したりすることが重要となります。

新生児や乳児は、喉の渇きを訴えたり、水分摂取を求めたりすることができないため、大人の管理が必要となります。運動時や真夏の炎天下などの高温環境下では、5〜15℃に冷やした糖分や塩分を含む飲料が効果的となります。

いかがでしたでしょうか。身近にひそむ脱水症。重症となると命を脅かす危険な症状です。「自分は大丈夫」ではなく、誰にでも起きるものと認識しておきましょう。

特に高齢者や子どもは注意が必要です。脱水症は意識して水分・ミネラルを摂取することで予防できます。特に春から夏に向けて気温・湿度が上昇するシーズン、秋から冬にかけての乾燥、温度の低下するシーズンは脱水症が多くなります。出かけるときは、水筒などを持っていくとよいでしょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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