首のカサカサの原因はストレス?乾燥肌?隠れた皮膚疾患とは
寒くなってくると空気が乾燥し、皮膚がカサカサしてきます。特に首回りは人に見られる場所でもあり、またマフラーが当たる場所でもあるためカサカサが特に気になる場所です。
首がカサカサするのは単に肌が乾燥しているだけではないこともあります。ここでは気になる首のカサカサの原因について解説します。
目次
首は乾燥してカサカサしやすい部位
基本的に、カサカサしやすい肌というのは皮膚が露出し、皮脂腺が少ないところになります。
服の下の皮膚は、汗をかくことで適度な湿度が保たれ、乾燥しにくくなります。また、皮脂腺が多いところは皮脂を分泌することで肌の乾燥を防ぎ、カサカサするのを防ぎます。
人の体の中で皮膚がよく露出し、皮脂腺が少ないところとなると首になります。
また、首の皮膚は皮膚自体も薄い一方で、頷いたり前屈みになることでしわができやすく、動きが激しい、さらに服とすれることも多いため、皮膚へのダメージが蓄積しやすい場所でもあります。
そのような条件から、首は体の中でももっともカサカサしてしまいやすい場所と言えるのです。
首はとくに他の人から見える場所でもありますから、カサカサした状態が不快なだけではなく、見た目が悪くなることで気になる人も多いと思います。しわはできやすくなりますし、さらには湿疹、肌荒れといった肌トラブルも起こりやすくなります。
ストレスで肌がカサカサになる理由
肌がカサカサになる場合、原因としてストレスも大きな要因となります。ではどのような機序で肌がカサカサになってしまうのでしょうか。
自律神経の乱れ
自律神経は体のバランスを整えるための神経で、交感神経と副交感神経があります。 これら2つの神経は互いにバランスを取ることで体をうまく調節します。心臓の動きを調節するのも自律神経ですし、免疫機能が体を守るのも、全身の体温を調節するのも自律神経の働きによるものです。
起きている時や緊張している時に特に強くなるのが交感神経です。交感神経が優位になると脈が早くなり、血圧は上がり、汗が分泌されてきます。一方で免疫機能は低下してくることもあります。
副交感神経はリラックスしている時や寝ている時に優位になってきます。脈は遅くなり、体を休める方向にコントロールされます。
強いストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。特に交感神経が強く働くことが多くなります。すると汗が過剰に分泌され、皮膚が汗で覆われてしまいます。汗が蒸発すると、皮膚の潤いも 同時に奪い去ってしまいますから、肌がカサカサになってしまうのです。
ホルモンバランスの変化
ストレスはホルモンバランスの変化にも影響してきます。特に肌がカサカサするのに関与するホルモンがコルチゾールというステロイドホルモンです。コルチゾールは、ストレスを受けると多く分泌されるという特徴があります。
通常量のコルチゾールは筋肉の血流を促進したり、血糖値を高めたりして体の活動性を上昇させる働きがあります。少しのストレスであれば ストレスに対応して一時的に体全体を興奮させて強化し、ストレスに負けない体内環境を整える効果を持ちます。
しかし、その働きが過剰になってしまうと肌の代謝バランスを乱します。ステロイドホルモンが多く分泌されるとタンパク質を分解する作用が強くなり、皮膚の正常な構造が乱れてしまうわけです。その結果として肌が乾燥し、カサカサの肌になってしまうのです。
女性ホルモンもストレスによって分泌が大きく変動します。女性ホルモンが多くなると皮脂が多くなり、かさつきやニキビなどが出てきます。そのせいで肌全体がカサカサになってしまうのです。
ターンオーバーの低下
皮膚が古い細胞から脱落していき、新しい細胞に生まれ変わっていくことを肌のターンオーバーといいます。通常は、一定の量の細胞がアカとして脱落し、同じ分量の細胞が新しく産生されることによって、正常な肌を維持しています。
しかし ストレスが強い状態になると、自律神経のバランスの乱れを通して、このターンオーバーのリズムが崩れてしまいます。これによって皮膚全体の構造を維持するのが困難になり、肌がカサカサになってしまうのです。
また免疫機能の低下によって、異物や刺激などから肌を守る機能も低下しますので、さらに 肌荒れがひどくなる可能性が高くなります。
アトピー性皮膚炎の悪化
アトピー性皮膚炎によっても肌のバリア機能が低下します。アトピー性皮膚炎の状態が悪くなると肌がカサカサになります。
アトピー性皮膚炎は自分自身の免疫の異常によって起こってくる病気です。ストレスが体に加わると免疫反応が悪くなり、アトピー性皮膚炎が悪化してしまうことも多くあります。
首のカサカサに隠れた皮膚疾患
首のカサカサは乾燥が原因のこともありますが、それ以外にも首のカサカサが進むような病気もあります。
乾燥性皮膚炎
まずは一般的な乾燥によるカサカサである乾燥性皮膚炎です。
皮膚が乾燥してカサカサになるというと、いわゆる乾燥肌という言葉が思い出されると思います。乾燥性皮膚炎は乾燥肌がより重症化した状態といえます。
皮膚の中でも表皮は、体を外界から守るためのバリアとして働いています。構造としては一番深い層に基底層があり、基底層の表皮細胞が細胞分裂することで常に新しい細胞が皮膚を構成するようになっています。
細胞分裂した表皮細胞はだんだんと表層へと移動し、最終的には角質層という層を形成します。この角質層では既に細胞の中に核はなく、細胞分裂をしたり何かを分泌したりといった機能はありません。外からのバリアとしての働きを果たし、だんだんと剥がれ落ちます。この剥がれ落ちた表皮細胞が、フケや鱗屑としてぽろぽろ落ちてきます。
表皮細胞は水分を失ってしまうと、どんどんと剥がれ落ちてしまいます。それを防ぐため、皮膚には皮脂腺という皮脂を分泌する構造が存在します。皮脂が角質層の表面をカバーすることで、表皮細胞から水分が蒸発していくことを防ぐのです。
しかし皮脂が欠乏したり、皮脂がカバーしきれないほど皮膚が乾燥してしまうと、角質層の水分が不足し、どんどんと剥がれ落ちてしまいます。これによって皮膚が柔軟性を失って、ひび割れし、皮むけがおこります。この状態を乾皮症と言います。
乾皮症の状態でもかゆみを感じることがあるのですが、さらに乾皮症が進行して行くとかゆみが非常に強く、赤みや水ぶくれを呈したりします。この状態が乾燥性皮膚炎と呼ばれます。別名を皮脂欠乏性湿疹といい、場合によってはひび割れから出血してしまうことになります。
乾燥性皮膚炎がやっかいなのは、湿疹を伴うことです。湿疹ができると皮膚はどんどんと新しい細胞を生み出して、乾燥した状態がひどくなってしまいます。こうなってくると、自分自身で肌のうるおいを保つことは困難になってしまいます。
接触性皮膚炎
接触性皮膚炎は、いわゆる皮膚かぶれです。アレルギー性の機序によって肌が荒れてしまい、発赤やかゆみを伴います。
接触性は皮膚が敏感な人に起こりえますが、さらには疲労がたまっていたり、ストレスがたまっていたりと、体調が悪いときに発症したり、元々あった皮膚炎が増悪したりします。
首の部分はシャツの首元でこすれることでダメージがおこりやすかったり、ネックレスをつけたりすることで皮膚に異物が接触したり刺激を受けたりしやすい場所になります。そのため、接触性皮膚炎が起こりやすい場所と言えます。
保湿によって皮膚のバリア機能を増強するほか、原因となる物質を使わない、ストレスを貯めない、疲労を回復するといった対処が必要です。
肌の花粉症
花粉症というと、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が主となりますが、花粉が皮膚に接触することで炎症が起こり、かゆみや赤みを生じることがあります。これを肌の花粉症と呼ぶことがあります。実態としては花粉に対する接触性皮膚炎である場合が多いのですが、原因が花粉であるため肌の花粉症と総称することがあるのです。
肌の花粉症はどこの肌でも起こりえますが、特に肌が弱く、露出している場所におこりやすくなります。となると、やはり首におこりやすいと言えるのです。
近年では肌の花粉症に注目が集まり、予防するためのスプレーやクリームが発売されるようになりました。そちらを使用しても良いですし、外出後には首をウェットティッシュやぬれタオルで拭って花粉を除去するのが良い対策と言えます。
ビダール苔癬
ビダール苔癬とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言うと慢性的にこすれる刺激が繰り返されることによってかゆみが生じる皮膚の病気のことです。こすれるだけで起こる事もありますが、特に接触性皮膚炎や乾燥性皮膚炎を起こしている弱っている肌におこりやすい病変です。
元々かゆみがあるところに刺激があることで発症しますから、皮膚がこすれることによってももちろんおこりますし、軽いかゆみがあることからひっかいて、どんどんと皮膚がダメージを受けて症状が強くなっていくこともあります。
ネックレスや洋服など、やはり首はこすれることが多い場所になりますから、ビダール苔癬を発症しやすくなります。
ビダール苔癬はストレスの関与も示唆されています。これを反映し、成人に多い病気となっています。また、女性に多いという特徴もあります。
対策としては一般的な首のかゆみの予防と同様に、接触を避けてうるおいを保つのに加えて、十分に睡眠をとってストレスを発散するように心がけると良いでしょう。
首のカサカサをケアする薬
ここまで一般的な首のカサカサの原因と、それぞれの対策を説明してきましたが、種々の薬も使用することで肌のカサカサ対策をすることができます。どのようなものがあるか紹介します。
市販薬の選び方
皮膚のカサカサは乾燥によるものですから、乾燥を防ぐために保湿することが大事です。そのため、保湿効果のあるクリームを使用するのが良い方法となります。
とくに効果的でおすすめなのは尿素かヘパリン類似物質が含まれているクリームです。これらの成分は比較的安価で、市販薬にもよく使用されています。また、ステロイドなどの薬剤のように副作用をあまり気にすること無く使用することができます。
この中でも尿素が配合された薬は、肌の表面に堆積した古い角質層を柔らかくして取り除いてくれます。
また、乾燥がひどく進んで粉をふいているような状態だとクリームを塗ってもなかなか保湿しきれないことがあります。このようなときには保湿効果のより高くなる油性のクリームを選ぶようにしましょう。
クリームを使用してもなかなか改善しない場合や、かゆみが強くてどうしてもかいてしまい、症状が改善しない場合は、市販薬では対処が困難な場合があります。このような場合には処方薬で炎症をしっかりと抑える必要があるかもしれませんから、病院を受診して相談しましょう。
漢方薬もおすすめ
病院を受診して塗り薬を処方してもらうのも良いですが、一部の漢方薬は肌の乾燥を改善してくれる効果があります。
例えば、肌の乾燥は「血」が不足していると考えられますが、当帰飲子(トウキインシ)は、血を補給する四物湯をベースにして作られています。そして更に、全身の血の巡りをよくするために気を補える生薬、さらにかゆみを抑える生薬が配合されており、乾燥肌の改善に役立ちます。特に冷え性など体の力が弱い状態のときの乾燥肌に効果的です。
また、温清飲(ウンセイイン)という漢方薬は血液循環をよくする効果のある漢方薬です。血液循環が良くなることで肌のかゆみやカサカサ感を改善してくれます。一方で、熱がこもりにくくする効果もあります。かゆみがつよくてかきむしると肌に熱を持ち、さらにかゆみを来してしまいますが、そうした症状を抑えてくれます。ただし、アトピーの状態を悪くする副作用もありますので、気をつけなければなりません。