太らない?アミラーゼが多い人の特徴とアミラーゼのチェック方法

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消化酵素として知られるアミラーゼには唾液由来のもの、膵臓由来のものがあります。アミラーゼの値が高いとき、あるいは低いときはいくつもの病気の可能性が考えられます。またアミラーゼは肥満になりやすいかどうかにも関係しています。ここではアミラーゼについて詳しく見ていきましょう。

アミラーゼとは

「アミラーゼ」と呼ばれるものには、次に見るようないくつもの種類があります。

唾液由来のアミラーゼ

唾液アミラーゼとは、唾液に含まれる消化酵素のひとつであり、ストレスや体型とも関連性がある成分です。

唾液中に含まれる消化酵素であるアミラーゼは、デンプンと反応して麦芽糖へと分解する役割を担っています。唾液由来のアミラーゼは、咀嚼行為によって摂取した食べ物と混ざって、デンプンを糖に変える作用を有しており、このアミラーゼのおかげで消化を促進して胃腸の負担を軽減することができます。

唾液に含まれるアミラーゼは分泌される唾液量と比例していると考えられています。

膵臓由来のアミラーゼ

アミラーゼ自体は膵臓特異性が低く、急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪時、あるいは膵のう胞、膵がん、薬剤の副作用としての膵炎などを含む膵疾患の診断には特異性の高い膵型アミラーゼの測定が有用であると考えられています。

急性膵炎を発症した際には、血中アミラーゼのほとんどが膵型アミラーゼとなって、発症直後より上昇して、リパーゼやトリプシンよりも膵型アミラーゼの方がやや早く正常化することが知られています。

膵型アミラーゼが増加する病気としては、急性膵炎を始めとする膵疾患以外にも胆道や十二指腸乳頭部などにおける疾患に伴う膵障害合併で認められます。

また、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やESWL(体外衝撃波胆・膵石破砕療法)の治療後における膵管内圧上昇や膵液の逆流時にも膵臓由来のアミラーゼ値の上昇所見が認められます。

さらに、消化管穿孔や腸閉塞などに伴う腹膜炎などの疾患によって膵液が消化管外に漏出することによって膵型アミラーゼが高値となることがあります。

その一方で、膵型アミラーゼが低下する場合には、慢性膵炎非代償期、膵癌末期や広範囲の膵切除術後などに認められることが多く、残存する膵予備能の低下を反映していると考えられています。

血清アミラーゼ

アミラーゼはデンプンや糖質を分解して糖にする消化酵素であり、主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されており、この消化酵素は血液に混じった血清に存在する状態で全身を循環したあとに、腎臓で濾過されて尿成分として排泄されることが分かっています。

血液中の血清アミラーゼが上昇している際には、膵臓や睡液腺の細胞に異常があることを反映しています。

また、膵臓に炎症が存在するケースや膵管の通りがせまくなって膵液の巡りが悪化している場合には血清アミラーゼが高い数値を示すため、膵炎を発症した場合や膵臓癌などを反映するマーカーとして使われています。

アミラーゼ遺伝子

アミラーゼ遺伝子は、唾液や膵液に含まれる消化酵素であってデンプンを糖に分解するアミラーゼの産生に関係している遺伝子であり、日本人などを中心として日常的にデンプンを多く食べる民族のアミラーゼ遺伝子は平均7個であることが指摘されています。

アミラーゼ遺伝子が多い場合と少ない場合の BodyMass Index(略称:BMI)や体脂肪量を調査した結果、アミラーゼ遺伝子が多い人は有意にBMIが低く、体脂肪量も少ないことが判明したことからアミラーゼ遺伝子が多いと太りにくいと考えられています。

つまり、アミラーゼ遺伝子数が平均して多いと考えられている我々日本人は、ご飯やパンなど炭水化物を食べても肥満になりにくいといえます。

アミラーゼのチェック方法

アミラーゼは血液検査、唾液アミラーゼ検査、クラッカーを使った方法によってチェックすることができます。

血液検査で分かるアミラーゼ値

血液検査における血清アミラーゼとは、血液中に含まれるアミラーゼである血清アミラーゼの数を調べるものです。

血清アミラーゼの血液検査は、採血で手軽に検査することができ、医療機関によって前後しますが、採血から検査の確認まで通常1時間程度です。

アミラーゼは、おもに膵臓、唾液腺、耳下腺で分泌されており、血清アミラーゼは、これらの部位に問題があると増加、あるいは減少するため、膵臓や唾液腺、耳下腺の状態を簡便に評価するのに役立つ検査です。

アミラーゼは、主に膵臓(すいぞう)と唾液腺から分泌され、その数値が上昇している場合、膵臓および唾液腺が障害を受け、血中へ流れ込んできていることを意味します。

また、膵管の異常でも増加するため、膵臓の腫瘍マーカーとしても用いられます。

そのため、膵臓疾患のスクリーニング検査として利用され、特に急性膵炎(きゅうせいすいえん)の診断には役立ちます。

それ以外にも、血液検査で血清アミラーゼを調べることによって、慢性膵炎、膵臓がん、耳下腺炎、膵のう腫などの病気の診断に役立ちます。

特に、膵臓疾患の場合は、異常があっても自覚症状が少なく、病気の早期発見が困難な臓器であるため、採血検査では、今まで気づかなかった異常を発見することにもつながります。

一般的に、血液検査における血清アミラーゼの基準値は、44~132 IU/L(IUはinternational unitの略で国際単位の意味)です。

ただし、アミラーゼが高値であるからといって、すべてが膵臓疾患であるとは言い切れず、アミラーゼが異常高値を示した場合はP型(膵型)アミラーゼや、関連するリパーゼなどの血液検査、そして超音波などの画像検査と合わせて総合的に判断します。

ストレスチェックに用いられる唾液アミラーゼ検査

平成27年より労働安全衛生法に基づき、「ストレスチェック制度」が実施されました。

政令で定める規模の事業所を持つ事業者は、厚生労働省令に従い定期的に労働者のストレス状況についての検査を行う必要があり、その結果を労働基準監督署に報告するように義務付けられています。

唾液に含まれる消化酵素であるアミラーゼは、ストレス状態になると量が増えることがわかっているため、唾液中のアミラーゼの量を測定することで、ストレスのからだへの影響をチェックします。

実際の検査方法は、専用チップを口に咥えて唾液を採取したのち、専用検査機にて唾液に含まれているアミラーゼ量を測定します。

自分でできるクラッカーを使ったチェック方法

甘みを感じるのに時間がかかる、甘みを感じにくいという人はアミラーゼの量が少ないといわれています。

体質チェックの方法は簡単です。クラッカーを1枚食べて、甘みを感じるまでの時間を計測することによって、太りにくい人は食べてすぐに甘みを感じますが、太りやすい体質の人の場合は30秒以上時間がかかることもあります。

アミラーゼが高値のときに疑われる病気

採血による血液検査で血中アミラーゼを測定して高値だった場合には、膵臓や唾液腺が障害を受けていることを疑います。

一方で、アミラーゼは急性膵炎など膵臓疾患のスクリーニング検査として活用されていますが、このアミラーゼ値が高いからといって、必ずしも膵臓疾患であると断定はできません。

そのため、アミラーゼが異常に高値であった際には、膵型アミラーゼ、あるいは膵酵素として関連しているリパーゼなどを測定する血液検査を実施して、あわせて超音波検査やCT検査など画像検査と組み合わせて膵疾患の有無を評価することになります。

特に、アミラーゼが高値であり、かつ唾液由来のアミラーゼが相対的に高値の場合には、唾液腺の中や唾液を口に流し込む導管の内部に唾石という病変ができることによって、唾液の流れに異常を呈する唾石症やおたふくかぜを含む急性耳下腺炎などを疑います。

また、アミラーゼが高値であり、膵型アミラーゼが相対的に高値の場合には、膵酵素が膵内で活性化し、膵実質を自己消化して炎症を引き起こしている状態である急性膵炎などの膵臓疾患を疑うことになります。

内視鏡操作の刺激によって、アミラーゼが高値を示す場合には、アミラーゼが免疫グロブリンや多糖体と複合体を形成したものが血中に存在するマクロアミラーゼ血症が考えられ、マクロアミラーゼは尿中に排泄されないため、血中アミラーゼ値が高値となります。

唾液アミラーゼが多い人は太りにくい

唾液アミラーゼの機能によって、普段食べている摂取物の中に含まれるデンプンが糖に変わることで我々は甘みを感じて食欲が増進すると考えられています。

その唾液アミラーゼが多い人は、通常よりも肥満になりにくいといわれており、ある調査研究によれば甘い菓子を食べて30秒以内に甘さを感じる人は太りにくく、その一方で甘さを感じるまでに30秒以上時間が多くかかる場合には太りやすいとの結果が得られました。

つまり、甘い菓子などを食べてから短時間で甘みを自覚できる方は、唾液アミラーゼの分泌量が通常よりも多いことも影響して太りにくいと考えられます。

太りやすい体質の人の対策

唾液アミラーゼが少なく、肥満になりやすい人には次のような対策が有効です。

食事を工夫する

最近では、やわらかい食事メニューを好んで食べる習慣があり、食事に要する時間が少ないために以前よりも咀嚼して十分に食べ物を噛む回数が減少していると伝えられています。

常日頃から早食いする人は、脳中枢部が満腹と検知するまでに過剰に食べ過ぎてしまって肥満に陥りやすいという研究結果もあることから、普段から日常的によく噛むことは身体の健康にとって重要なポイントとなります。

また、できる限り精製度や加工度が低い食品を選んで偏りなく栄養バランスを意識した食事メニューをよく噛んで摂取することによって、満腹サインが脳に伝わりやすく、脳内物質の働きによって内臓脂肪の分解が促進され、肥満予防に繋がります。

漢方薬を活用する

肥満になりやすい体質を改善させるために漢方薬を活用するのも一つの手段となります。

特に、18種類の生薬が用いられている防風通聖散(ボウフウツウショウサン)は、体力がある人向けの漢方薬であり、腹部の内臓脂肪を落として脂質の吸収を抑える、あるいは便秘を解消する効果もあわせて期待できると考えられます。

また、漢方薬の中には防風通聖散以外にもダイエットに役立つものもあり、その一つとして大柴胡湯(ダイサイコトウ)が挙げられます。

大柴胡湯は、体力があって筋肉質、普段から便秘気味でストレスが多い場合に効果的とされ、脂質の代謝を促して脂肪を燃焼する効果が発揮されます。

まとめ

これまでアミラーゼの種類、アミラーゼ数値の変化に伴って疑われる病気や体型に与える影響などを中心に解説してきました。

血液中のアミラーゼが増加している際には、膵臓や睡液腺に異常があることを示しており、特に膵型アミラーゼが上昇する場合には膵臓に炎症が存在する、あるいは膵管の流れが悪くなっているケースなどが想定されます。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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