これって二重人格?解離性同一性障害の症状の特徴と接し方
「性格がまるで別人のようだ」と言われたことはありませんか?
ドラマや映画、小説などでよく見かける二重人格。二重人格のことを現在は解離性同一性障害と呼びます。ここでは解離性同一性障害を含む解離性障害について詳しくみていきましょう。
解離性障害とは
人は通常自分の存在をつながりのある、一つのまとまったものとして認識しています。過去から現在までの記憶が途切れなく続いているものと感じ、自分がどういう人間であるかという自分が誰かという感覚(アイデンティティ)をもち、自分の身体が自分のものであると認識できます。
解離とは、記憶・知覚・意識といった通常は連続して持つべき精神機能が途切れている状態を指します。
軽いものでは読書にふけっている際に、他人からの呼びかけに気がつかないことなどが当てはまります。しかし、衝撃的な出来事(災害、事故、暴行、虐待や監禁、戦闘体験)を要因として、意識、記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが分断されて体験されるようなことが生じ、日常生活や社会生活に大きな支障をきたすような状態になると、解離性障害と呼びます。
誰にでも一過性にみられる解離現象もあり、特にこどもの心の防衛反応として解離が働くことが多くみられます。この解離現象は自然に治まる一過性の症状のため、治療は必要ありませんが、対人関係が築けないほどの解離性障害である場合は、治療が必要となります。
解離性障害には、個人によって異なるさまざまな症状があります。下記で主な5つの症状について詳しくみていきましょう。
解離性健忘
強い心的ストレスをきっかけに、自分に起こった出来事の記憶をなくし、想起が不可能になった状態のことを言います。多くは数日のうちに記憶が戻りますが、長期にわたって健忘が持続している場合もみられます。
解離性とん走
自分が誰かという感覚(アイデンティティ)が失われ、突然まったく知らないところにたどり着く、失踪のように行方をくらまし新しい生活を始めたりする、ふいに帰ってきたりする状態のことを言います。この場合、失踪している間の自分の行動についての記憶はありません。
解離性同一性障害
世間一般でいうところの多重人格です。明確に区別できる複数の人格が同一人に存在しており、それらの人格が本人の行動を統制し交代で現れます。
長期間にわたる激しい苦痛や衝撃的な体験の反復をすると、その度に解離が起こり、苦痛を引き受ける別の自我が形成されてしまいます。
その別の自我がその間の記憶や意識を引き受けて、本来の自我には引き継がれず、それぞれの自我が独立した記憶をもつようになることが発生の原因と考えられています。
離人症性障害
自分が自分であるという感覚、意識が障害されてしまい、自分の姿を外から眺めているように感じる状態のことを言います。誰にでもあるような一時的なものではなく、持続的あるいは反復的で、日常生活や社会生活に支障があり、対人関係にも困難を抱えます。
解離性昏迷
急に、身体を動かすことや言葉を交わすことができなくなる状態のことを言います。随意運動、発語、光・音・接触に対する正常な反応が弱くなったり消失したりします。しかし、筋緊張は正常であり、静止姿勢や呼吸機能は正常な状態となっています。
解離性同一性障害の症状の特徴
解離性同一性障害の症状の特徴の一つに健忘があります。忘れることや覚えていないことは誰にでもありますが、子どもの頃の出来事やパソコンの使い方など一度自分が習得した技術などの使い方を忘れてしまう場合には注意が必要です。
さらに、自分には身に覚えのない品物や手紙などを自分の部屋で見つける場合や、なぜ自分がその場所にいるのかを思い出せない場合があります。
次に複数の人格が現れる症状が特徴的です。この症状には憑依型と非憑依型があります。憑依型の症状は、自分の中に他人の人格が現れていることが、友人や知人、家族にもわかるようになります。普段の自分とは明確に違う言葉や態度になるため、まさに他の人間にとり憑かれている状態になります。
一方、非憑依型の症状は周囲からはほとんど気付かれることがありません。なぜかというと、自分が話している言葉や行動、態度などを客観的に見ているように感じるからです。
自分が言った言葉や行動を自分自身では認識しているので、自分が変わったように感じることもあります。好きな食べ物やファッションなどの嗜好の変化が見られるため、周囲が気づくこともあります。
また、自分の中に現れる複数の人格同士が知り合いである場合や、現れた人格が怒っている場合には、家族や友人、知人を怒ってしまう場合があります。自分に身に覚えのないことを周囲から指摘されるようになったり、自分の信頼や信用を損ねる状態になったときは、一度医療機関を受診してしっかりと診てもらう必要があります。
解離性同一性障害の原因
解離性同一性障害の原因は、ある時期に経験したつらい体験を、自分ではないもう一人の自分が引き受けることで別の人格が形成されると考えられています。
幼少期の頃の虐待や、親など大切な人との死別、ショックを受けるような体験を繰り返すことで強いストレスがかかったり、強いトラウマを抱えたりすることが原因と言われています。子どもは成長する過程で得られる複数の情報や体験をまとめて一人の人間として成長していきます。
しかし、この成長過程で虐待などのつらい体験やショックを受ける体験を何度も繰り返していると、一人の人間としての成長に影響が出てしまいます。
解離性同一性障害の可能性がある人との接し方
解離性同一性障害の可能性がある人本人は、自分の解離症状に気づいていないことが少なくありません。そのため、診断をする場合には面接において注意深く症状を観察すると同時に、周囲の方から解離に関した情報を得ることが大切になります。
解離性同一性障害の場合、身に覚えのない人から親しげに声をかけられたり、クローゼットに買った覚えのない衣類がかけられていたり、知らない間に何時間も経っていたりすることにただ当惑するばかりでいることがあります。
周囲の人から嘘つきと言われたり、いぶかしがられたりする結果、自分も他人も信じられなくなってしまうこともあります。解離症状はひとたび始まると、ストレスが必ずしも契機とならず、ふとした瞬間に出現するようになります。
そのため、本人は解離症状のために約束を守れなかったり、人前で解離症状が出現するのを避けるために社会生活や友人関係から遠ざかりがちになります。
周囲の人は、本人に大きなプレッシャーにならないように気をつけながら、本人が社会との接点を失わないように心がけることが重要となります。
本人の症状や話を否定したりせず、しっかり話を聞いた上で、適度に寄り添うことで本人に安心してもらいます。極端に突き放したり、深く入り込みすぎないようにすることも大切です。
いかがでしたでしょうか。解離障害といってさまざまあります。過度なストレスから一過性に解離現象が起きることは誰しもがあります。しかし、自分の知らない物があったり、友人や知人から性格が急に変わったと言われる際は注意が必要です。日常生活に影響を及ぼすようであれば、一度医療機関を受診することをお勧めします。