虫歯?顎関節症?顎の下を押すと痛い症状の原因

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顎の下を押すと痛いことはありませんか? 何かの病気ではないかと気になりますよね。顎の下にはリンパや耳下腺など大切な器官があります。そのため、炎症や腫瘍などさまざまな原因で痛みを生じます。ここでは顎の下を押すと痛いときの原因について詳しく見ていきましょう。

顎の下を押すと痛い症状の原因

顎の下を押すと痛みが出るときの原因としては次のものが考えられます。

虫歯

虫歯や親知らず、歯周病等の状態が悪化してしまうと、顎まで痛みが及ぶことがあります。

虫歯、歯周病、ドライマウス、口腔内の炎症等により細菌が増殖すると、細菌が顎下腺まで及び感染症を起こし、細菌性顎下腺炎を生じます。虫歯が進行して歯髄にまで炎症が起こると歯髄炎が生じ、顎骨まで感染が拡大する場合があります。

また、親知らずのことを智歯(ちし)と言い、智歯周辺の歯茎が腫脹することで顎に痛みが生じて口が開きにくくなる場合があります。

顎関節症

片方の顎の下が痛む、押すと痛む、口を開けるときに違和感があるなどの症状が出ることがあります。このような場合は顎関節症が考えられます。顎関節症とは、顎関節に痛みがある、顎を動かすと雑音が生じる、口の開閉をスムーズに行うことができないなどの症状を引き起こすものを取りまとめた病名です。

原因は、上下の歯の噛み合わせの異常が考えられ、歯ぎしりや、精神的なストレスによるあご周りの筋肉の緊張も顎関節に負担となります。顎関節症の場合は、自然に症状が緩和する場合が多いですが、実は違う病気であったり、命に関わるような病気が潜んでいたりすることもあるので、気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診しましょう。

おたふく風邪

顎の下や耳の下にしこりや腫れがあり、押すと痛むことがあります。さらに、発熱したりします。このような場合は、おたふく風邪が考えられます。

おたふく風邪は正式には流行性耳下腺炎と言います。ムンプスウイルスというウイルスが、耳下腺という耳の下にある唾液を作る組織に感染して起こる病気です。3〜5歳にかかることが最も多いのですが、大人でもかかることがあります。

10歳以上の子どもや大人は重症化しやすいので注意が必要です。治療は対症療法が基本ですので、発熱には解熱鎮痛薬を用いて、安静にして栄養を摂るようにしましょう。おたふく風邪は感染する病気であり、難聴や髄膜炎、精巣炎、卵巣炎などを発症する可能性もあります。

リンパ節炎

顎の下にリンパ節があります。このリンパ節が炎症を起こすとリンパ節炎となります。リンパ節炎は、ウイルスや細菌に感染しリンパ節が腫れる病気です。顎付近には下顎直下にあるオトガイ下リンパ節、左右の顎下腺付近にある顎下リンパ節、耳から顎にかけての上深顎リンパ節、耳下腺リンパ節など多数のリンパ節があります。

扁桃炎や虫歯など他の部分の炎症が影響してリンパ節が腫れる場合もあります。リンパ節の腫れが2〜3週間以上続く場合は、がんのリンパ節転移の可能性もあるので早めに医療機関を受診する必要があります。

急性顎下腺炎

顎下腺は下あごの前端と後方に張り出したエラとの中間あたりにある、唾を作る臓器です。顎下腺から前方に管がのびており、下あごの前歯の下方で口の中と繋がっていて、唾を流出させています。

口の中には細菌が常在していますが、流出する唾でいつも洗い流されているため、管の中に細菌が侵入することはありません。唾が出にくくなると菌が入りやすくなり、管の中や顎下腺の内部で増殖すると起こります。

あごの下が赤く腫れて熱も出ます。口の中をみると管の出口の周囲に膿が付着していることもあります。治療としては抗生剤の内服を行います。症状や炎症が強い場合は点滴治療を行います。

顎下腺唾石症

顎関節や顎のエラあたりを押すと痛いことがあります。このような場合は、唾石症が考えられます。唾石症は、顎のエラ付近にある顎下腺という唾液を作る組織の中で石ができて痛みを引き起こす病気です。

唾液は粘性が強いため、石ができやすく、唾液を排泄する管が長くて上向きの人はさらに唾石が生じやすいです。唾石の原因は、炎症や唾液の停滞、唾液の性質が変化したことなどが考えられます。ものを食べるときに顎の下が腫れたり、唾石が生じて詰まりを起こすと唾液が詰まり、腫れて痛んだりします。

リンパ腫

リンパ腫とは血液のがんの一種で、リンパ球がガン化してリンパ組織に腫瘤を作る病気です。首や脇の下などリンパ節が多い場所に、通常は痛みのないしこりとして現れ、数週間から数か月かけて大きくなります。ガン化したリンパ球は全身の臓器に広がってしまう可能性もあります。

50〜70歳代でかかりやすい疾患で、男性にやや多く見られます。原因は明らかではありませんが、細胞内の染色体の異常や、ウイルス感染症、免疫不全などが考えられています。

悪性リンパ腫は、進行するにつれてしこりや腫瘍が全身に広まっていくため、早めに治療を開始することが大切です。体重の減少や発熱、顕著な寝汗、息苦しさ、麻痺症状などがある場合もあります。治療法は、化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植などが病期や病状、全身状態を考慮し進められます。しこりが大きくなっている場合、しこりが2〜3週間以上なくならない場合は早めに病院を受診しましょう。

肩こり・ストレス

肩こりやストレスは、あごの周りの筋肉の緊張につながり、寝ている間に歯ぎしりをしてしまったり、過度な緊張で筋肉や関節を痛め、症状が現れることがあります。肩こりのほかに、頭痛、首こり、腕のしびれや痛みなどを併発していることもあります。顎が痛む、口が大きく開けられない、顎を動かすと音があるなどの症状が現れることもあります。

肩こりは、顎関節症という口の開閉時に痛みや雑音がする状態に発展する可能性があります。肩こりの症状に似ているのが脊柱管狭窄症という背骨の中にある神経が通る道が狭くなる病気です。腰や足の痛み、しびれなどの症状が起こります。

また、精神的ストレスが原因で、顎の筋肉が必要以上に緊張して痛みを引き起こすことがあります。寝ている間は無意識に歯軋りをしていることもあります。ストレスが加わると免疫力が低下するので歯周病や虫歯が早く進行し、歯や歯茎が痛むこともあります。

顎下腺がん

顎の下にしこりがあり、最初は痛みがないことが多いのですが、だんだん大きくなり、痛みやしびれを伴うようになります。このような場合、顎下腺がんが疑われます。顎下腺は両側方のあごの下にあり、左右一対ある親指の頭程度の大きさの臓器で唾液を分泌しています。

良性の腫瘍ができることは珍しくありませんが、ごくまれにがんができることもあります。悪性か良性かを判断するために、病院での診察が必要となります。

主な診療科は耳鼻咽喉科です。超音波検査、CT、MRIなどの画像検査、病変に注射針を刺し内部細胞を吸引する穿刺吸引細胞診などを行う可能性があります。たとえ良性であっても、腫瘍の場合小さくなることはありません。非常にゆっくりとしたスピードで大きくなり、およそ5年から10年かけて目立つようになっていきます。根治のためには手術による摘出以外は方法はありません。

いかがでしたでしょうか。顎が痛いといってもさまざまな原因が考えられます。すぐに改善せず、2〜3週間続く場合は、医療機関を一度受診してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

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