脂っこいもので下痢するのはなぜ?下痢をしてしまう理由と対策

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下痢の原因としてもっともよく見られるのが食べ過ぎ・飲み過ぎです。食あたりによって下痢症状を引き起こすこともあります。このほかにも、脂っこいものを食べたときに下痢をした経験をした方もいらっしゃることでしょう。

脂っこいものを食べると、なぜ下痢をしやすくなるのでしょうか? ここでは下痢をする原因と対処法について解説します。

下痢便と軟便

草むらの中のトイレのミニチュア

便の水分が異常に増え、液状またはそれに近い状態を「下痢便」、通常より少し軟らかい状態を「軟便」といいます。

下痢便や軟便を繰り返し、腹部不快感や腹痛を伴う状態を「下痢もしくは下痢症」と呼称しています。
一般的に、理想とされるバナナ状の便の水分量は70%~80%ですが、これが80%~90%になると「軟便」、水分量が90%を超えると水様便となり「下痢便」の状態になります。

脂っこいものを食べて下痢をする理由

脂っこいものを食べた際に下痢になる主な原因は、脂肪分を多く摂りすぎたことによるものです。
脂肪は、他の栄養素に比べて消化に時間がかかりますし、過剰摂取することで分解されず、そのまま腸へ移動することになります。
脂肪自体に腸管のぜんどう運動を亢進する作用がありますので、下痢を起こしやすくなります。

酸化した油の影響

特に、脂っこいものに含まれている油が酸化すると、ヒドロキシノネナールや過酸化脂質という有害な物質が発生し、この酸化した油に含まれる有害物質は、下痢症状を引き起こす原因となることがあります。

酸化した油が多く含まれる食品やカップラーメン、スナック菓子などの加工食品は、加熱や時間の経過により酸化が進みますし、開封して半年以上経過した油においては開封して空気に触れた瞬間から酸化が始まります。
サラダ油などの精製過程で高温加熱処理された油では、精製する過程において高温で加熱されることによって酸化が進むと言われています。

また、一部の植物油は、精製過程で既に酸化が進み、体に有害な物質を含んでいるとも指摘されています。

脂っこいもので下痢をしたときの対処法

みそ汁

下痢をしたときの基本的な対処法について確認しておきましょう。

水分補給

下痢では、腸の働きが悪くなり小腸で体内に水分が吸収されずに体外に出てしまうため、体は徐々に脱水状態になっていきます。
そんなときに、水分を控えるとますます体の中は悪化していきます。

下痢のときには、体内の水分と電解質が失われて、脱水症状になりますので、それらの補給が必要であり、刺激物を避けて味噌汁やにんじんスープ、りんごジュース、ハーブティ、番茶、ほうじ茶などを積極的に摂取しましょう。 
番茶やほうじ茶は比較的カフェインの含有量が少なく、りんごには整腸作用があると言われています。

横になって休む

下痢は腸の働きが異常になっているので、腸を安静にしてあげることが重要です。
おなかをあたため、できるだけ安静にして様子をみるとともに、正常な便にもどるまでは、消化のよい食事を心がけましょう。

下痢は、日々の生活のなかでもみられやすい症状であり、脱水状態にならないように注意しながら安静にして、経過を観察していれば症状が改善する場合もあります。
下痢以外の症状が乏しい場合や、下痢と便秘を交互に繰り返しているという場合には、しばらく様子をみても問題ありませんが、下痢だけでなく発熱や嘔吐、激しい腹痛、血便や粘液混じりの便が出た場合には、早めに専門医療機関を受診しましょう。

消化に良いものを食べる

下痢を止める際のひとつの方法として、摂取する食事内容が挙げられます。
激しい下痢症状が認められるケースでは、食事メニューとして重湯、野菜スープなどやわらかく胃腸にとって刺激の少ないものを少量ずつ食べましょう。
少しずつ、腸の調子が回復してきたら、おかゆ、うどん、じゃがいも、やわらかく煮た野菜や豆腐など消化に良いものを摂取して体調改善に努めましょう。

繰り返す下痢は過敏性腸症候群の可能性も

過敏性腸症候群

油ものや乳製品を摂ることで腹痛や下痢症状を繰り返して引き起こす場合には、過敏性腸症候群の可能性も考えられます。

過敏性腸症候群は、腹痛が便通異常に関連して続く病的状態であり、腸管に明らかな炎症や潰瘍などの病変がないのに、腹痛や腹部不快感に下痢や便秘を伴う症状が続く病気です。
ストレスを受けやすい20〜40歳代に多くみられ、男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型、女性では便秘型として出現することが多いです。
命に関わるような病気ではありませんが、電車の中などトイレのないところでは非常に困るなど生活の質を著しく悪化させます。

過敏性腸症候群を発症する原因は、はっきりとはわかっていませんが、最近の研究では、何らかのストレスが加わると、ストレスホルモンが脳下垂体から放出されて、その刺激で腸の動きが悪化して、過敏性腸症候群の典型症状が認められると考えられています。

漢方薬を活用する

漢方薬

下痢止め薬は、基本的には腸の蠕動運動を抑制することで下痢症状を改善しますが、どの市販薬を選択すべきか迷うときもあるでしょうし、下痢止めを過剰に使用すると、体内に存在する細菌やウイルスを十分に排出できなくなりますので、注意が必要です。

下痢症状がしばらく続いたら、市販薬の下痢止め以外にも胃苓湯五苓散などの漢方薬の活用によって腹部症状が改善することも期待できます。

胃苓湯(いれいとう)

余分な水分を排出するとともに、水っぽくなった胃腸を乾かす作用があり、下痢や軟便などを止めるのではなく、原因をとり除くことで改善していきます。
効能・効果としては、主に体力中等度で、水様性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴胃腸炎や腹痛症状に処方されます。

五苓散(ごれいさん)

口喝や尿量減少を認め、浮腫・下痢・悪心・嘔吐などがみられる方に使用される漢方薬で、利尿作用があります。

まとめ

これまで、脂っこいもので下痢するのはなぜなのか、下痢をしてしまう理由と対策などを中心に解説してきました。

下痢は、症状が深刻化して、コントロールできないようになると社会生活に大きな支障をもたらす症状です。
脂っこいものを食べて下痢が続けて出現して、症状が止まらないときは無理に下痢を出そうとせず、まずは安静にしましょう。

繰り返して下痢が続く場合には、ストレス、自律神経の乱れによって腸の働きが低下して、下痢や便秘などの症状をきたす過敏性腸症候群などの病気が疑われます。

下痢には、ストレスや緊張、暴飲暴食、食あたりなどさまざまな原因があります。脂っこいものを摂取して下痢症状が認められる際には、水分をしっかり補給して脱水を防ぐ、消化のよい食べ物で胃腸を休める、漢方薬を活用するなど対処策を講じましょう。

速やかに症状を改善させたい場合や下痢以外にも気になる症状がある場合には、消化器内科など専門医療機関で検査を受け、原因を特定して適切な治療を受けましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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