痛風による関節の痛みの特徴と進行にともなう合併症
痛風で痛みに悩む人は多くいます。一方で、痛風になりそうと言われてもいまいち実感がなく、対処をしていないという人もいることでしょう。ここでは痛風ではどのような症状が起こるのか、そして放置するとどのような合併症が起こるのかについて解説します。
痛風による関節の痛み
痛風は、風が吹いただけでも痛みを感じると言われるほど非常に強い痛みを感じます。その正体は、尿酸が血液中に増加して蓄積することで、関節内に尿酸が析出し、結晶を形成することによっておこってきます。
尿酸は元々尿酸塩として水に溶けやすいものです。しかし、一定の血中濃度を超えてくると、血液の状態が少し変化しただけで急に水に溶けづらくなってしまい、析出してきます。このように、突然結晶ができてくることから、発作的に痛みを感じるようになるのです。
では、痛風の痛みにはどのような特徴があるのでしょうか。
痛みが出やすい場所
痛風発作が起こったときに症状が起こりやすいのは圧倒的に足の母趾の付け根当たりです。全体の70%以上となります。
尿酸が析出しやすい条件としては、
・低温であること
・血流が悪いこと
が挙げられます。
足の末梢は冷えやすく、また血流が滞りやすいので足の指に析出しやすくなるというわけです。また小さい関節では結晶がなかなかできませんから、それなりの大きさである母趾が最も結晶が析出しやすいと言われています。
他の場所としては、足の他の指や、足関節に症状が起こってきます。他の関節、特に手や体幹部の関節に起こることは非常に稀です。
偽痛風との違い
痛風のように関節に痛みが起こる病気として、偽痛風という病気があります。その名の通り、痛風と似たような関節の痛みを感じる病気ですが、偽痛風の場合析出してくるのはピロリン酸カルシウムになります。
偽痛風も、原因物質が関節内に貯留することで症状を発症してくる病気ですが、痛風と異なり、カルシウムの血中濃度が上昇することでピロリン酸カルシウムが関節内に貯留してくるわけではありません。カルシウム自体はもともとイオンですから、水に溶けやすく、何らかの条件で析出してくるということは少ないのです。
偽痛風が起こる原因は、関節を動かさないことによります。機械などを長い間動かさずにいるとさびが沈着してきてだんだんと動きが悪くなるように、関節も動かさないでいると内部の液がうっ滞し、内容物が沈着してきます。
特にカルシウムは、血液中に流れてはいますが、うっ滞している場所や組織が傷ついた場所に沈着しやすいという特徴があります。わかりやすいのが血管です。血管も、年齢を積み重ねるにつれてだんだんと傷つき、その場所にカルシウムが沈着することで石灰化という現象を起こしてきます。それにともない、だんだんと固くなってくるのです。
関節を動かさないと、同じように関節内にカルシウムの結晶ができてきます。そして、ある一定以上のカルシウムの結晶が関節内にできると関節を刺激するようになり、痛みを感じるようになってきます。
原因からわかるように、偽痛風が起こるのはほとんどは高齢者です。また、関節も関節液のうっ滞が起こりやすい大きな関節におこることが多くなります。まれに1番目と2番目の頸椎の間の運動不足で結晶が沈着し、痛みを生じることがあり、特にCrowned dens syndromeと呼ばれます。
偽痛風と痛風の鑑別は症状からある程度特定可能ですが、関節液を注射で採取して顕微鏡で観察することで確実な鑑別が可能です。
痛みが起こった場合は、NSAIDsと呼ばれる種類の鎮痛薬が非常に効果的ですからこちらを内服をして急場をしのぎます。そのまま経過を見ていると1~3日程度で改善してきます。また、関節液を排出したり、またはステロイドを関節内に注射したりすることで炎症の改善がさらに進められます。
しかし、そのまま動かさないでいると再発することが多いため、偽痛風になった後は関節をしっかり動かして再度カルシウムが貯留しないようにすることが重要となります。
痛風の進行の仕方
では、痛風はどのように進行して行くのでしょうか。経過を見ていきましょう。
無症候性高尿酸血症
痛風のベースになるのは、血液中の尿酸値が高い状態です。尿酸値は高くても、それだけで症状が起こることはありません。しかし、この状態で治療をせず、また食生活の改善もしないとだんだんと尿酸値は上昇し、発作の土台ができていきます。
痛風発作
ある日突然、急性の激痛が生じます。これが痛風発作です。尿酸血症が関節腔内に析出した状態のうえに、免疫反応の始まりである補体の活性化が起こります。補体が活性化されると、白血球が集まってきます。集まってきた白血球は尿酸血症を貪食といって、白血球細胞の中に取り込みます。しかし尿酸血症は白血球の中で化学反応を起こし、白血球自体が自壊してしまいます。
白血球が自壊すると、周囲の関節組織も損傷を受けて、さらに激しい炎症反応が起こります。この炎症に伴って激しい痛みに加えて、発赤・腫脹して熱感を伴います。
炎症は非常に激しいのですが、痛み止めで様子を見るだけでだんだんと沈静化します。激しい痛みは長くても3日程度、そして約1週間も経てば症状は全く無くなるのがほとんどです。炎症によって尿酸が形成した結晶が変性して炎症が治まるためと考えられています。
間欠期
無症候性中間期と言います。先ほどの発作が治まった後は、嘘のように全く症状のない時間が続きます。
しかしそのまま治療しないでいると、血液中の尿酸値はそのまま維持されます。すると、さらに関節腔内に結晶が析出してきますから、再度発作が起こります。頻度は個人差がありますが、数年に1回から年に数回程度起こってきますし、発作を繰り返すたびに間隔がだんだんと短くなってきます。
また、発作を起こす場所も足の母趾だけではなく広い範囲の関節に発作が起こってくるようになります。
慢性期
間欠期と発作期を繰り返しているうちに、関節内には変性した血症がどんどん蓄積していきます。それに伴って、関節内に結節が形成されていきます。これが痛風結節です。
また、腎臓、尿路系にも尿酸結石が蓄積していきます。これにより、腎不全をきたしてきます。
このようなさまざまな合併症が起こってくるのが慢性期です。慢性期になるとさまざまな合併症が出現し、しかも不可逆的なものとなります。
痛風の進行にともなう合併症
慢性期に起こってくる合併症についてもう少し詳しく解説しましょう。それぞれどのような症状が出てくるのでしょうか。
痛風結節
痛風結節は、関節内に蓄積した尿酸結晶が変性することで起こります。結晶はそのままでいると刺激となってさらに炎症を起こしてきますから、炎症を繰り返す間に体の免疫は血症を覆い隠すように肉芽組織というものを作ります。繭を作るように結石を完全に覆い隠すかたちで肉芽が取り囲んでいくと、やがて固まりとして触れるようになります。これが痛風結節です。
痛風結節はまずは母趾周囲にできるのですが、だんだんと肘や足首、手指、耳介などの関節以外の場所にもできるようになります。
また、関節周囲の骨にも痛風結節ができてきます。体表から見ることはできませんが、レントゲンを撮影すると骨が萎縮していたり、骨に穴が空いたように打ち抜き像がみられます。
腎障害
先ほどの痛風結節が腎臓にできた状態を、痛風腎と言います。ただし、臨床的には臨床症状から痛風の人に腎障害が起こってきて、おそらく腎臓に痛風結節ができているだろうと考えられた時点で痛風腎と診断されることがほとんどです。
痛風結節は腎臓のなかでも髄質という部分によくできます。腎臓の機能は尿を作ることですが、まず体にとって不要なものを水と一緒に尿管という管に排出します。これが皮質という部分で行われます。そして、そのままだと水分が大量に排出されてしまいますから、水分だけを再度吸収して濃縮した尿を排出します。この水分を再吸収する役割を担うのは主に髄質です。
髄質では尿の水分を再吸収して濃縮しますから、尿管の中の尿に一度排出された尿酸も濃縮され、結晶化されやすい条件となります。そして、尿の中に尿酸結晶が形成されます。尿酸結晶は尿管から体の中に再度取り込まれますが、そこで化学反応を起こして尿管と尿管の間の間質という部分に沈着します。そのままでは異物として周囲の組織を傷つけてしまいますから、関節内と同じように肉芽組織を形成していきます。
肉芽組織によって圧迫された尿管は水分を再吸収する能力が下がってしまい、尿の量が多くなってしまいます。さらにそのまま放置すると、尿を作る能力そのものも低下してしまい、腎不全が進行してしまいます。
尿路結石
腎障害の説明でもあったように、尿酸は尿の中に一度排出されて再度吸収されるという過程をたどります。再吸収された先で結石を作ると腎不全の原因となりますが、尿の中にも尿酸結石を作ることがあります。
小さいものであればそのまま流れていって尿として排出されますが、尿酸の量があまりに多いと目に見える結石として尿管内に姿を現し、尿路結石として症状をきたします。
尿路結石はそれ自体で痛みを感じることもありますし、尿の流れを滞らせることで腎臓に負担がかかり、痛みを感じることもあります。また、尿の流れが滞ることで細菌がたまりやすい条件を作ってしまい、尿路感染症の原因になってしまうこともあります。