沢瀉(たくしゃ)の詳しい生薬解説

漢方事典

中国東北部や朝鮮、日本の北部に分布し、沼沢地や浅い水中に生えるオモダカ科の多年草、サジオモダカ(㊥沢瀉Alismaplantago-aquatica)の塊茎を用います。北海道や信州で栽培されていますが、市場品のほとんどは中国などからの輸入品で、四川省の川沢瀉(せんたくしゃ)や福建省の建沢瀉(けんたくしゃ)などが有名です。

沢瀉という名は水中(沢)にあって水を弾く性質(瀉)があることに由来するとか、薬の効能が「水を去ること(瀉)」に由来するといわれています。水面から出た葉が人の顔のようにみえることからオモダカの名があります。サジオモダカ根茎には多量のデンプンやアミノ酸、レシチンのほか、トリテルペノイドのアリソールA・B・Cなどが含まれ、利尿作用やコレステロール低下作用、血糖降下作用などが報告されています。漢方では利水・清熱の効能があり、体内に水分が停滞した浮腫や胃内停水、尿量の減少、排尿障害、嘔吐、下痢、口渇などの症状に用います。

①利水作用

浮腫や胃内停水、眩暈などに用います。尿量が減少して、浮腫や口渇のみられるときには茯苓・猪苓などと配合します(五苓散)。胃に水分が溜り、食後しばらくしてから嘔吐し、口渇するものには茯苓・白朮などと配合します(茯苓沢瀉湯)。体内の水気(支飲)のために眩暈の症状がみられるときには白朮と配合します(沢瀉湯)。慢性化した眩暈、頭痛には半夏・天麻などと配合します(半夏白朮天麻湯)。

②清熱作用

膀胱炎や排尿障害に用います。膀胱炎などにより排尿困難や血尿のみられるときには木通・滑石などと配合します(五淋散)。熱病などで尿量が減少して口渇の強いときには猪苓・阿膠などと配合します(猪苓湯)。高齢者や糖尿病で頻尿や口渇などのみられるときには地黄・山薬などと配合します(六味丸)。

処方用名

沢瀉・建沢瀉・福沢瀉・炒沢瀉・塩沢瀉・タクシャ

基原

オモダカ科AlismataceaeのサジオモダカAlismaorientaleJuzepczukの周皮を除いた槐茎。

性味

甘・淡・寒

帰経

腎・膀胱

効能と応用

方剤例

利水滲湿・泄熱

①四苓散・五苓散

水湿停滞による尿量減少・水腫・泥状~水様便に、茯苓・猪苓などと用います。

②猪苓湯

挟熱の場合には、滑石・木通などと使用します。

③五淋散

湿熱下注の排尿痛・排尿困難・尿の混濁などには、滑石・木通・車前子・山梔子などと用います。

除痰飲

沢瀉湯・半夏白朮天麻湯

痰飲停留によるめまいに、白朮・茯苓・半夏などと使用します。

その他

六味地黄丸

滲湿泄熱の効能により、滞水を除き虚火を泄し、陰虚火旺を鎮める補助となり、「腎火を瀉す」といわれ、腎陰虚に熟地黄・山薬・山茱萸などと使用します。

臨床使用の要点

沢瀉は甘淡・寒で、寒で除熱し淡で滲湿し、腎経の虚火を泄し、膀胱の湿熱を除き、通利小便・祛湿泄熱・除痰飲の効能をもちます。湿熱内蘊による小便不利・短赤熱痛・淋瀝尿閉、心下停飲の頭暈目眩および水腫脹満・泄瀉、さらには陰虚火旺に用います。

参考

沢瀉は利水滲湿の効力は茯苓とほぼ同じですが、泄熱に働き補益の効能をもちません。「沢瀉は有瀉無補、茯苓は有瀉有補」といわれます。

用量

6~9g、煎服。

使用上の注意

①一般に塩炒した塩沢瀉(炒沢瀉)を用います。

②大量で滑精をひきおこし、久服すると腎陰を損傷するので、腎虚でも火熱の症候がみられないときや滑精があるときは、使用しないほうがよいです。

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