いくら飲んでも喉が渇くのは病気のサイン?考えられる原因とは

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お悩み

喉がカラカラの状態は誰でも体験したことがありますよね。ここでは喉が渇きやすくなる病気や、病気以外で喉が渇く原因について詳しく見ていきましょう。

水分の調整が崩れると喉が渇く

我々の体はおよそ60%くらいが水分で成り立っています。加齢に伴い、体の中の水分含有量は減少しますが、それでも50%くらいは水分から成り立っています。

体から排泄するものとしてまず尿です。1日1.5Lくらい尿として排泄します。そのほかにも体温の調節のために不感蒸泄といって気が付かないうちに体表面から水分を、そして呼吸によって水分を排泄していきます。

この水分があってこそ、体温調節をはじめとした清浄な新陳代謝を維持できています。この調節が崩れると喉が渇いてしまうのです。

のどが渇きやすくなる病気

喉の渇きを訴える女性

のどが渇きやすくなる病気はいくつも考えられます。代表的なものを見てみましょう。

糖尿病

糖尿病とは、血糖値を下げてくれるインスリンが十分に働かない、分泌されないために血糖値が慢性的に高くなる病気です。

糖尿病の発症により高血糖(血糖値が250mg/dL以上)になると、インスリンの不足により体内で吸収できなかった糖が尿に交じって排出されるようになります。すると多尿となり結果的に体内の水分が減少し喉が渇く、といった症状が出ます。

喉の渇きに関連して、尿が増える・水分を飲む量が増えるなどの症状が起こります。また、体重が減るのも糖尿病でみられる症状の一つです。喉が渇くときは、こまめな水分補給が必要となります。

その際に注意しなければいけないのは、ジュースなどの甘い飲み物で水分補給しないことです。糖尿病の場合に甘い飲み物で水分補給をすると、さらに血糖値が上がり、さらに喉が渇くといった悪循環が起こってしまいます。

糖尿病は放置すると、さまざまな合併症につながるため注意が必要です。治療の基本は、食事と運動による血糖値のコントロールです。食事によって体内に取り込まれる糖の量を調節し、運動で糖を消費します。場合によっては、飲み薬や注射などの薬物療法を行うこともあります。

甲状腺疾患

甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺の機能が亢進すると、交感神経の作用により水分が少なくタンパク質が多い唾液となり、口の中が渇いたり、ネバネバした感じがします。反対に甲状腺の機能が低下すると、新陳代謝が低下してドライマウスを発症してしまいます。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、骨からのカルシウム放出などにより血中のカルシウム値が高くなりすぎることがあります。その結果、尿中にカルシウムが排出され、多尿となることから脱水や喉の渇きを引き起こす原因となってしまうのです。

更年期障害

更年期障害に悩む女性のイメージ

更年期による多汗、頻尿も口渇の原因とされています。更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下してしまいます。脳の視床下部からはエストロゲンを出してと指令しても、エストロゲンが出ないため、脳に混乱が生じて、自律神経のバランスが崩れてしまうことで精神症状が起こるとされています。

さらに、更年期の女性は、仕事や子育て、介護など生活環境が大きく変化する時期でもあるため、精神的不調をきたしやすいのです。

その結果、唾液の調整が乱れることで口や喉が渇きます。更年期の喉の渇きの対処法は、こまめな水分補給が基本です。また、更年期症状自体を治療するためには、生活習慣を改善したり心理療法を行ったりします。改善がみられない場合はホルモン剤や漢方薬、向精神薬などを用いた薬物療法を行うこともあります。

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは、涙や唾液を作っている臓器を中心に炎症を起こす全身性の自己免疫疾患です。代表的な症状は、口の渇きと目の渇きです。約45%の方が乾燥症状主体で悩まされますが、それ以外にも約50%の方には全身性に何らかの臓器病変(全身倦怠感、関節痛、皮疹、光線過敏症、間質性肺炎、神経障害、腎障害、筋症状、血液検査異常など)を生じることがあります。

病気の原因は不明ですが40〜60歳台の女性に発症しやすいです。しばしば悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症といった血液疾患や、橋本病や自己免疫性肝炎といった他の自己免疫疾患を合併することもあり、注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、主に睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることによって無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)と大きないびきを繰り返す病気のことです。

成人男性の3〜7%、成人女性の2〜5%程度に見られる比較的頻度の高い病気となります。無呼吸は脳の酸素不足を引き起こします。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間だけではなく、日中の生活においてもさまざまな症状が出現する危険性があります。

睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠の質が低下するだけでなく、口を開けていることが多いため、口の外に水分が出てドライマウスを発症します。睡眠中に口が渇く人の多くが、いびきや睡眠時無呼吸症候群を原因とします。歯ぎしりが原因となることもあります。

高血圧

日本人の4人に1人は高血圧と言われています。高血圧になると、血圧を下げるために薬が必要になってきます。血圧を下げる薬は、尿量を多くして体内の水分を減らしたり、唾液を出す作用を抑えるため、ドライマウスを引き起こし、喉が渇くことがあります。

脳血管障害

脳血管障害により麻痺を起こすと、口の筋機能などが落ちます。その結果、唾液が減少することがあります。唾液を出す神経が障害を受けることにより、唾液が減少することもあります。歯みがきが不十分になることも多く、口の中の汚れが口渇の症状を悪化させてしまいます。

尿崩症

尿崩症とは1日の排尿量が3リットル以上となり、多尿に伴って口や喉の渇き、飲水の増加がみられる病気です。抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)の分泌低下や腎臓の異常により引き起こされます。排尿量が増加して、飲水が追いつかないと喉が渇いて脱水となってしまうことがあります。

病気ではないのにいくら飲んでも喉が渇く場合

空のペットボトル

健康な人でも環境や生活習慣の影響で喉の渇きに悩まされることがあります。例えば、次のようなケースが挙げられます。

脱水

体内に取り入れる水分量よりも失った水分量の方が多くなると、体内の水分が不足して脱水状態になります。すると、喉の渇きを感じるほか、発汗や排尿も少なくなるなどの症状がみられることがあります。

この原因としては、単に水分の摂取量が少なかったり、暑い場所で長時間運動して大量に汗をかいたりすることなどが挙げられます。また、やけどや下痢、嘔吐などがきっかけになることもあります。この場合は水分補給が基本です。

予防のためにもスポーツ中やその前後、入浴前後、睡眠前や起床時などに、しっかりと水分補給をするとよいでしょう。喉が渇く前に水分を取るのがポイントです。

ストレス

ストレスや極度の緊張により、交感神経が刺激されて興奮状態になると、唾液の分泌量が減少するため、口の中がカラカラになって喉の渇きが起こりやすくなります。

喉が渇いた時に水分補給ができないと、ストレスホルモンのアドレナリンやノルアドレナリンの上昇も大きくなり、この物質によって更にストレスが増えます。その結果、喉の渇きがまたひどく成るという悪循環となる可能性も高まります。

加齢の影響

更年期のイメージ

加齢は喉が渇く原因となります。高齢者は、若い人よりも喉が渇いたと感じるまでに時間がかかるほか、喉の渇きの感じ方も鈍いため、脱水しやすい傾向にあるとされています。

さらに、脳卒中の発症後などに体の自由がきかなくなり水分を摂取しにくくなったり、失禁に対する不安から水分摂取を避けたりして脱水になることもあります。脱水を防ぐには、食事のとき以外にもお茶を飲むなど、日頃から意識して水分を取ることが大切です。

アルコールの過剰摂取

アルコールを摂取すると、アルコールには利尿作用があるため体内の水分が排出されやすいため、喉が渇いてしまいます。アルコールと一緒に多くの塩分を摂ることも喉が渇く原因となります。

また、近年の研究によってFGF21という細胞外分泌因子がアルコール摂取により分泌されるということがわかりました。このFGF21自体が渇きを感じると脳の飲水行動につながる回路に直接作用するのです。

薬の副作用

不安に対する治療として抗不安薬または抗うつ薬を飲んでいる方は、副作用として口の渇きが現れることがあります。

いかがでしたでしょうか。日中の喉の渇きはもちろん、夜寝ている間でも喉がカラカラで目覚めてしまう方は注意が必要です。水分をとっているのに喉が渇くという状態が続く場合には、一度医療機関を受診してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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