鼻風邪を放置していたら不快な耳の詰まりと痛みが…大人になって初の中耳炎に
なんだか耳が詰まったような感じがすると思っていたらそのうち耳が痛くなってきた、鼻風邪をこじらせて頻繁に鼻水をすすり続けていたら中耳炎になってしまった…。
30代〜50代の幅広い世代の女性のなかには、こうした「中耳炎」に悩んでいる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
このような自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「中耳炎」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
軽い症状ならおうちケアでOK?中耳炎のセルフケア方法を教えて
美香さん(43歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。
先日、うっかり風邪をこじらせてしまい、初めて中耳炎になってしまったんです。
先週から少し風邪気味で鼻水が止まらなかったものの、熱も出ないし、とくに体調がつらいこともなかったので、流れ落ちる鼻水をすすりながら普通に生活していたのがいけなかったのでしょうか。そのうちに耳のあたりがボーッとするような、詰まったような感じがするようになり、耳がズキズキする感覚に襲われたんです。
なんだか嫌な予感がしたのですぐに耳鼻科にいったところ、中耳炎になりかけているとのことで、抗生剤と点鼻薬をもらって帰宅しました。
早めに対処したのが良かったのか、数日後には症状もだいぶラクになったものの、耳の不調があると、あんなに不快なものかと思い知らされる出来事でした。息子が小さい頃はよく中耳炎になり、耳鼻科にお世話になる日々でしたが、こんなに大人になってからもなるものなんですね。
夫に話したところ、中耳炎は軽いものであれば耳鼻科に行かなくても治るんじゃない?なんて言うのですが、そんなものなのでしょうか? 早めのケアで進行を防いだり症状を改善する方法があればぜひ教えていただきたいです。
ご質問ありがとうございます。
菌への耐性が弱く、耳と鼻の距離が近い子どもは中耳炎になりやすいものですが、大人も抵抗力や免疫力が低下することで風邪や気圧の変化の影響で中耳炎になることがあります。セルフケアで治ることもありますが、やはり早めに耳鼻科へ行くと回復も早いでしょう。
それでは今回は、中耳炎の原因や改善方法について詳しくお伝えしていきましょう。
上咽頭に溜まった鼻水のなかの細菌の中耳への感染が原因に
耳は外耳・中耳・内耳の3つで構成されていますが、このうちの中耳の部分が細菌感染などにより炎症を起こし、耳に痛みが生じたり、膿が出るようになった状態を中耳炎といいます。
原因としては、風邪や鼻炎、花粉症や副鼻腔炎等による鼻水が中耳と耳管で繋がっている上咽頭に溜まり、鼻水のなかにいる細菌やウイルスが中耳に伝わって炎症が起こることが挙げられます。
また、こうした細菌感染によるものの他に、気圧や水圧の変化によって耳の中の空気が膨張して痛みや出血が生じる航空性中耳炎などもあります。
中耳炎は軽症であれば自然治癒することもあるものの、放置することで慢性化したり、内耳にまで炎症が広がり、難聴や髄膜炎などの症状が起こることもあります。症状が強い場合や繰り返す場合は、耳鼻科で適切な治療を受けるようにましょう。
東洋医学では、中耳炎は「風邪(ふうじゃ)」と「熱邪(ねつじゃ)」の体内への侵入によって起こると考えられています。
次の章ではこのような「中耳炎」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
中耳炎を予防・改善する3つのセルフケア
1.急性期は長時間の入浴を避け安静に
中耳炎になりかけで発熱や耳の痛みがあるときは、できれば湯船で長時間温まることは控えましょう。長時間の入浴により血流が良くなり過ぎて耳の痛みが悪化してしまうことがあります。
症状のあるときは、軽くシャワーを浴び、できるだけ安静にして睡眠をたっぷりとることが大切です。もし耳の痛みが一週間以上続く場合や、症状が強いとき、痛みに加えてめまいや高熱、頭痛、顔面の痛みなどがある場合は、重篤化の恐れもあるため、早めに耳鼻科を受診してくださいね。
2.気圧の変化を感じたら唾液を飲み込む
ストレスや過労、睡眠不足が続くと、免疫力が低下することに加え、耳管の機能を侵してしまいます。
こうした状態のときに飛行機や高層階のエレベーターに搭乗すると、気圧の変化による鼓膜の痛みや中耳炎を発症しやすくなるため、疲れを感じたら無理せず休養をとるようにしましょう。また、気圧の変化で耳が痛いときは、飴やガムを口にして唾液を出し、飲み込むことで耳管を開くようにしたり、あくびをするなどして気圧を調整するのも有効です。通常はこうした動作をすることで症状が改善しますが、数日たっても違和感がある場合は、無理せず耳鼻科を受診するようにしましょう。
3.ハーブティーで鼻の通りを良くする
中耳炎を予防・改善するためにも、日頃から鼻の通りを良くしておくことが大切です。鼻水が出るときはすすったり鼻腔内に溜め込んだりせず、こまめにやさしく鼻をかむようにします。
鼻をかんでも思うように鼻水が出てこないなど、鼻づまりのあるときには、鼻の通りをよくするペパーミントやローズマリーのハーブティーを飲むのもオススメです。
ハーブの効能に加えて温かいハーブティーをゆっくり飲むことで、蒸気で鼻の通りを良くしてつらさを解消しましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
中耳炎を改善するためには、セルフケアや抗生剤の服用に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、葛根湯(カッコントウ)です。風邪や副鼻腔炎の症状から中耳炎になりかけている方の体を温めて発汗を促し、炎症を抑えて症状を緩和する効果があります。
また、荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)は成人の中耳炎ではよく用いられる漢方薬です。血流を改善して体の熱を発散させ、炎症や炎症に伴うかゆみを抑えて症状を改善します。
一方、葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)です。風邪などによる鼻づまり、副鼻腔炎、慢性鼻炎に用いられる薬で、葛根湯に鼻粘膜の炎症や腫れ、排膿を促して鼻の通りをよくする生薬が加わり症状を緩和する効果があります。
日頃から鼻の通りを良くして中耳炎を予防しましょう
今回は、中耳炎に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状を予防・改善するためには、日頃から睡眠不足や疲労、ストレスを溜め込まないようにして免疫力を高め、こまめに鼻水をかんで鼻の通りをよくしておくことが大切です。
中耳炎は適切なケアにより自然治癒することもある病気ですが、症状が強い場合は、無理せず耳鼻科を受診し、抗生剤の処方を受けるようにしましょう。
また、こうした中耳炎の改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。