意外に知らないお腹が鳴るメカニズム…蠕動運動と腹鳴
静かな環境にいるときにお腹がボコボコ・グルグルと鳴ってしまい、自分で止めたくても止められず、音が鳴り止むまでそのままどうすることもできなかったという経験を持つ人もいるでしょう。
牛乳やヨーグルトなどを食べたときに乳糖成分などが消化しきれずに、お腹が鳴ることがあるように、毎日のようにお腹がボコボコと鳴る人もいれば、ほとんど腹鳴が生じないという人もいます。
ここではお腹が鳴るメカニズムを取り上げ、心配する必要がない場合と病気が疑われる場合について詳しく解説します。
目次
蠕動運動と腹鳴(ふくめい)
腹鳴とは、お腹がグーグー、ゴロゴロと鳴ることであり、お腹がボコボコと鳴る原因のひとつは、腸の中にたまったガスです。
通常、胃や小腸などの消化器官の内部には、消化液や水を含んだガスが存在していて、これらの液体やガスが腸管の蠕動運動によって移動することに伴って腹鳴が起きることが知られていて、蠕動の運動が活発であればあるほど腹鳴の音が増強される傾向にあります。
蠕動運動の役割
蠕動運動は、腸管の口側が収縮し、肛門側が弛緩して、便内容物やガスを肛門側へ押し出していく動きであり、自律神経の働きと大きく関連しています。
自律神経は、交感神経と副交感神経のふたつで構成されていて、主に身体を活発に動かすときに働く神経が交感神経、身体を休めてリラックスしているときに機能している神経が副交感神経です。
普段から腸の動きは脳や神経、ストレスなどと密接につながっており、蠕動運動は中枢神経や自律神経によって機能を制御されています。
小腸や大腸では、効率的に栄養を吸収するために、よく混ぜ合わせて食べ物を溶かすとともに、蠕動運動をすることで内容物を肛門の方向に送って、消化液と摂取した食べ物などを混ぜ合わせています。
蠕動運動は腸管の口側が収縮する、そして肛門側が弛緩する動きに伴って内容物を奥へと押し出していく運動であり、健康的な腸であれば蠕動運動を繰り返すことで、腸の内容物をスムーズに肛門の方へ送り出すことができます。
お腹が鳴るメカニズム
腸の中に多くガスがたまっていると、蠕動運動が起こって腸が動いたときにガス成分も同時に動き、音が鳴ります。これがお腹がボコボコと鳴るメカニズムです。
ボコボコとお腹が鳴る音の正体は、ガスが腸内を動くときに出る音であり、特に腸内の狭い部位を移動する際に、大きな音が鳴る傾向があります。腸内にガスが大量にたまっていると、食べ物などと一緒にガスも排出するため、さらに大きな音が鳴る傾向があります。
お腹が鳴りやすい人の傾向
基本的には身体の異常や病変によって、お腹が鳴っているわけではありませんが、お腹がボコボコと慢性的に鳴る人にはいくつかの特徴があります。
例えば、普段から食べ物をよく噛まずに食べるのが早い人や脂質の多い食事をよく食べる人、アルコールを過剰に摂取している、仕事や生活場面で長時間座っている、香辛料などの刺激物をよく食べる人はガスがおなかに溜まりやすく腹鳴が聴取されやすいです。
また、慢性的な運動不足、便秘傾向や冷え性を抱えている人もお腹の音が鳴りやすいと考えられています。
年齢や性別を問わず、日々の生活において長時間座っている方は、日常的に胃腸が圧迫されて、体内の空気が滞ってしまう傾向があります。また、女性に多くみられる冷え性は腸内にガス成分がたまりやすく、お腹が通常よりもボコボコと鳴る可能性が高いと言われています。
心配しなくてもよい腹鳴
次に挙げるケースは、病気などが原因でお腹が鳴っているわけではないので心配する必要はありません。
空腹時にお腹が鳴る
空腹時は、胃が収縮するためにお腹が鳴りやすくなりますし、おなかが空いたときに「グー」と音が鳴るのは、空腹時に消化管が強く収縮する空腹期収縮が起こりやすいからであると考えられます。
空腹の際には、捻れるような胃の強い収縮が腸管にも伝わり、空気や液体などの胃の内容物が十二指腸や小腸の方向に次々と押し出されてお腹の音が鳴ると言われています。
冷たいものや刺激物でお腹が鳴る
冷たい飲み物や食べ物、あるいは唐辛子やキムチなどの刺激物を摂ったときは、腸が刺激されてお腹が鳴ることがありますが、通常病的なものではありません。
ただし、冷たい食べ物や刺激物の摂り過ぎは胃腸の負担になることには変わりなく、胃もたれや下痢症状などを引き起こすきっかけになることもあるため、注意を払った方がよいケースもあります。
また、アルコールやカフェインなどを摂取したときも、腸の蠕動運動が活発化して、時に腸管に過度の刺激を与えてガスが多く発生する傾向が見受けられます。
妊娠初期にお腹が鳴る
妊娠によって腸の蠕動運動が低下すると、ガスを体外へ排出しにくくなる結果、体内にガスがたまりやすくなると言われています。
妊娠初期にお腹がグルグルとなる原因は、腸の蠕動運動が低下することに伴って体外へと排泄できずに溜まってしまった腸内ガスの変化によるものと考えられています。
病気が疑われる腹鳴の特徴とは
普段の生活のなかで、お腹がゴロゴロ鳴る、キューキュー鳴ることがその場限りのものであれば、通常は心配ありませんが、時に背景に隠れている病気が原因となって、お腹の音が鳴るという場合もあります。
基本的には、空腹時や冷たい食べ物、刺激物などを摂取した場合などに一時的にお腹がグルグル鳴る際には大きな心配は不要ですが、それ以外にも腹部症状や便の異常が見られる場合、あるいはおならのにおいが強い際には、病気が隠れている可能性があります。
医療機関を受診した方がよいケースとしては、お腹の「ゴロゴロ」する音が聞こえる以外に、下痢や便秘など便通異常を伴うときであり、その際には過敏性腸症候群、腸閉塞、大腸がんなどの疾患を疑う必要があります。
また、腹鳴以外にも嘔気や嘔吐などの症状を合併するときには、ウイルス性・細菌性の腸疾患や腸閉塞といった病気を疑うこともあります。
さらに、お腹がキューキュー鳴るだけでなく、おならのにおいがきついときや頻回におならが出るときには、腸内にガスが多く溜まっている可能性があり、背景に過敏性腸症候群や大腸がんなどの疾患が隠れている可能性が考えられます。
まとめ
これまで、意外に知られていないお腹が鳴るメカニズム、腸の蠕動運動と腹鳴などを中心に解説してきました。
腹鳴とは、腹がグーグー、ゴロゴロと鳴ることであり、主に消化管の蠕動運動によって、腸内のガスと液体がまじり合って生じる音のことです。
おなかの中で音がする腹鳴は、腸の空気や消化液、食べ物の混ざった液体などが、腸管運動によってかき混ぜられるときに起こると言われています。
多くは、胃の収縮や腸管の蠕動運動が活発になったとき、お腹がゴロゴロと鳴ることがありますし、一般的に空腹時や食後などにも見られる現象ですが、大きな心配は不要であるケースがほとんどです。
通常、お腹がぐるぐる鳴りやすい人の特徴としては、早食いをして食べ物を良く噛まずに飲み込む人、脂質の多い食生活を送っている人、アルコールを過剰に摂取している人、長時間座って作業する人、運動不足の人、便秘かつ冷え性の人が挙げられます。
お腹がキューキュー鳴る腹鳴を認める以外にも、特に嘔気や嘔吐などの症状を伴うケース、あるいはおならのにおいが強い場合、慢性的にお腹が鳴るという際には、消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。