爪と皮膚の間が離れるのは病気?女性に多い爪甲剥離症とは
外傷によって爪がはがれることがありますが、それ以外にも種々の原因によって外傷がないのに爪がはがれてくることもあります。ここでは爪と皮膚の間が離れる原因について解説します。
<h2>爪と皮膚の間が離れる爪甲剥離症とは
爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)は、爪の先端部分が土台となる指から浮き上がってしまう状態を言います。通常でも爪の一部は指に付着して居らず、白く見えていると思いますが、病的に白い部分が増えてきてしまう状態です。
先天的に爪甲剥離症となる場合もありますが、多くの場合は後天的に起こると言われています。また、原因がある程度特定できることが多くなります。
爪甲剥離症の特徴は、進行性の病気という点です。もともと指にしっかりくっついていた爪が、先端の方からだんだんと剥がれていきます。時間の経過に伴ってどんどん根元の方に向かって剥がれていきます。
また、一本の指だけに剥離が限局することは少なく、おなじ原因に暴露している他の指にも症状が起こってくることが多くなります。
爪の色にも特徴があります。正常であれば爪の色は、指に付着している部分はピンク色、指から離れているところは白色になっています。しかし、爪甲剥離症では指に付着しているところはほとんど変色がないのに対し、爪が剥がれている部分は白色だけではなくやや黄色みがかかった色になるほか、ゴミが侵入することで部分的に汚れた褐色調になることもあります。
外傷で爪が剥がれた場合には、正常な部分には皮下出血などが起こって剥がれてくるのを予兆することができますが、爪甲剥離症の場合には正常な部分には特に変わったことがないのに、剥がれた爪の部分がだんだんと広がってくるという経過をたどります。
また、剥がれた爪に細菌感染が起こってくることがあります。このような場合、緑色に変色してくることもあります。
爪自体の強度や性状については、あまり変わりが無いことが特徴になります。広義の爪甲剥離症の定義では爪が弱くなったことで爪が剥がれてくることも含みますが、狭義の場合、爪はしっかりとしているのに爪が剥がれてくることを指し、純粋に爪が剥がれていることを病的と考えるようになっています。
女性に多く見られる理由
爪甲剥離症は女性に多くみられるという特徴があります。
後述のように爪甲剥離症の原因にはマニキュアや洗剤など、外部刺激によるものがあります。また、他の原因で爪甲剥離症が起こっているところにマニキュアや洗剤による刺激がかかることで病変の進行が加速する場合もあります。
女性の方がマニキュアや洗剤などを利用する機会が多い分、男性よりも爪甲剥離症の発症率が高くなる傾向にあります。
爪甲剥離症のさまざまな原因
では、どうして爪が剥がれてくるのでしょうか。
爪が剥がれてくる原因として大きな役割を担っているのがハイポニキウムという構造です。
ハイポニキウムというのは、爪と指をくっつけている皮のような組織です。さらにハイポニキウムは爪と指をくっつけるだけではなく、爪と指の間にばい菌が入ってくるのを防ぐ役割も担っており、爪がそれ以上剥がれないようにするという役割を担っています。
このハイポニキウムが極先端だけわずかに傷ついた程度であれば、皮膚の修復に伴ってハイポニキウムも修復され、元通りになります。
しかし、種々の原因でハイポニキウムが大きく損傷し、さらに深くまで剥がれてしまうようなことがあると、剥離が進行してしまうのです。
では、このようにハイポニキウムが損傷するのにはどのような原因があるのでしょうか。
マニキュア・洗剤などの外的な刺激によるもの
前述のように、指に刺激が加わる状態が長く続くと、ハイポニキウムが損傷を受けやすくなり、爪甲剥離症を発症してしまうことが多いです。
マニキュアは爪の表面に塗っているだけと考えがちですが、浸透して爪と指の間に入り込み、ハイポニキウムの損傷の原因となってしまうことがあります。また、ジェルネイルなど強いネイルは爪をそらすような方向に力をかけ、だんだんと爪が剥がれていってしまう原因となるのです。
マニキュアだけではなく、マニキュアの除光液もアルコールを含有し、ハイポニキウムの損傷の原因となります。他には洗剤や仕事で使用する有機溶剤、ガソリンなどの燃料などが刺激となり、爪甲剥離症の原因となる場合があります。
感染症によるもの
皮膚の感染症が主な原因となります。特に多いのがカンジダです。カンジダは真菌症、すなわちカビの一種で、水虫の原因となる真菌です。常在菌として皮膚に存在する場合があります。体調不良や疲労などによって免疫系が弱まってしまうとカンジダが増殖し、水虫を発症します。これが爪で起こると爪の水虫となり、弱まった爪がだんだんと剥がれてきます。
他にも種々の細菌や真菌の感染によって爪がダメージを受けて爪甲剥離症の原因となる場合があるのです。
皮膚疾患によるもの
感染症以外の皮膚病も爪甲剥離症の原因となります。
例を挙げると、強皮症や乾癬、掌蹠多汗症などという病気が原因となります。
強皮症というのは膠原病という自己免疫疾患の一種で、免疫細胞が何らかの原因で自分自身に対して攻撃を起こしてしまう病気です。強皮症は皮膚にある構造に対して免疫細胞が攻撃してしまう病気で、その名の通り皮膚が硬くなってしまうほか、間質性肺炎を起こすなど全身性にさまざまな症状を呈します。その一環として皮膚が損傷され、ハイポニキウムが損傷し、爪甲剥離症を引き起こすことがあります。
乾癬というのは、ひとつあるいは複数の盛り上がった赤い皮膚病変を生じる病気です。しかも、治ったりまた出てきたりを繰り返します。皮膚が異常に増殖するので盛り上がり、また血流が豊富なため赤く見えるのです。
また、細胞が多くできるということは、多くの細胞がどんどんと脱落していくということで表面からは垢がぽろぽろと落ちてきます。また、細胞が多いということは1つ1つの細胞が弱まってしまうということにも繋がりますので、病変部は傷つきやすい皮膚となります。この病変がハイポニキウム周辺にできてしまうことでハイポニキウムが損傷し、爪甲剥離症の原因となるのです。
掌蹠多汗症というのは、その名の通り手足の皮膚の汗が異常に多くなる病気です。汗が多いので皮膚がふやけやすく、ダメージを受けやすい環境となるのです。
このように、種々の皮膚疾患がハイポニキウムに作用することで爪甲剥離症を引き起こす場合があるのです。
薬剤性光線過敏症によるもの
薬剤性光線過敏症というのは、薬剤を摂取している状態で皮膚に紫外線を受けると、皮膚に種々の皮膚疾患が生じることをいいます。薬剤を接種せずに紫外線を受けてもあまり皮膚には影響してこないという特徴があります。
薬剤を接種した状態であるときに、皮膚の紫外線に対する感受性が亢進することで症状が起こってくると言われています。
皮膚が紫外線に敏感に反応する結果、皮膚が剥離したり、弱くなったりすることがあります。これがハイポニキウムの部分に起こってくると、爪甲剥離症が起こってくるのです。
甲状腺機能異常などの全身疾患によるもの
種々の全身疾患でも爪甲剥離症が起こってくることがあります。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺という首元にある組織から分泌されるホルモン(甲状腺ホルモン)が異常に増えてしまう病気です。甲状腺ホルモンは身体のさまざまな活動を亢進させる作用があります。特に皮膚に関連するものとしては細胞分裂の亢進があります。
細胞分裂が亢進すると、先ほどの乾癬のように皮膚や爪の強度が変化します。爪に関しては通常であればかまぼこ状にカーブを帯びているものが、平になってしまったり、反り返ったりします。その結果、皮膚から爪が剥がれていってしまうのです。
貧血や指先の血行障害が起こったときにも、爪が反り返る場合があります。スプーンネイルとも呼ばれる特徴的な形をすることがあり、このような場合にも爪甲剥離症を生じてくる場合があります。
爪甲剥離症が生じるさまざまな原因について見てきました。爪甲剥離症は治療をしないと進行してしまうこともあるので、おかしいと思ったら一度皮膚科で相談するようにしましょう。