ハトムギの持つ力。効果、効能とは
▼美肌、消炎、排膿
子どものころ、掌の甲に小さなイボができたことがあります。田舎ではイシイボと呼んでいましたが、そのとき煎じて飲まされたのがハトムギでした。気がつかないうちに取れてしまい、いまはかすかな痕跡だけであります。イボのメカニズムはいまだに解明されないといいます。「鳩麦や娘盛りを煎じ薬」(一枝)とあるのは、イボよりも美肌効果を詠んだものらしいです。
ハトムギと
ハトムギはイネ科の一年草で熱帯アジアが原産地です。享保年間に渡来したと伝えられ、各地で栽培されてきました。茎丈は1.5メートルほどで夏に葉の間から花穂を出し、秋になると楕円形で淡い褐色の実を結びます。よく似た植物にジュズダマがありますが、ハトムギの果実は軟らかいから区別はつきます。
ハトムギの効果、効能について
ハトムギには体内の水分や血液の代謝を促し、体内にたまっている老廃物を排出する働きがあります。コイクライドという成分を含んでおり、これが腫瘍細胞に作用するからイボ取りにも効果があるのでしょう。蛋白質、脂質、カルシウム、鉄、ビタミンB群などの栄養素も多いです。
とくに注目したいのはハトムギの蛋白質です。アミノ酸組成が穀物の中では際立ってバランスがよいです。それに食物繊維も含んでいるので、高栄養、高カロリーにもかかわらず新陳代謝がよく、肥満を防ぐ効果があります。というわけで、ハトムギは女性向きの栄養食と云えそうです。ただし体を冷やす作用もあるので、生理中や妊婦には勧められません。
ハトムギはれっきとした薬でもあります。薬になるのは種子で、種皮を除いたものを「薏苡仁」といい、『本草綱目』には「筋骨中の邪気を除き脾胃を利し、水腫を消す」と出ていました。漢方では利尿、消炎、鎮静、排膿の目的に使い、浮腫、リウマチ、神経痛の疼痛や化膿症に用います。有名な処方に薏苡仁湯、麻杏薏甘湯などがあります。
摂取方法
イボ取りや母乳を促す効果は貝原益軒の『大和本草』にも記述してありました。益軒は民間療法も積極的に紹介しましたが、体にむくみがあるときは鳩麦粥を食べたり、鳩麦を煎じて飲むだけでも効くと述べています。しかし鳩麦粥を炊くときは、一昼夜以上も水に漬けておかないと硬くて食べられないからご注意下さい。
ちなみにイボ取りには、ハトムギ15~30グラムを1日量として煎じ、お茶のようにして飲むとよいです。これにドクダミを加えて飲むと高血圧症にも効くはずです。またハトムギを粉にして水で練り、ニキビなどにつけると即効性があるでしょう。ハトムギを日本酒に漬けたローションの洗顔効果も知られています。「縁談を進め鳩麦茶も奨め」(修子)という句もありました。