足の付け根の外側が痛い!女性に多い変形性股関節症とは
足の付け根に違和感があったり、痛みが出たりといった症状はありませんか。もしかしたらそれは変形性股関節症かもしれません。ここでは変形性股関節症の特徴と治療法について紹介します。
股関節周辺の構造
股関節は骨盤と大腿骨を繋ぐ関節です。体重をしっかりと足に伝えるために、頑強な構造をしている一方で、さまざまな動きを可能にするために特殊な構造をしています。
股関節の骨盤側の構造は、臼蓋と言います。臼蓋というのは、骨盤にできたクレーターの様な凹みのことを指します。一方で、股関節の大腿骨側は大腿骨頭といって、先端が丸くなった構造をしています。この大腿骨頭は大腿骨に直線上についているのではなく、大腿骨の延長線から50度程度傾いて位置しています。
この大腿骨頭が臼蓋にはまり込むことで股関節は形成されています。大腿骨頭が50度ゆがんだ構造をしていることで、股関節は前後左右、非常に広い範囲で動くことができるようになっています。
また、骨と骨が直接接触してしまうとすぐにすり減ってしまい、痛みが出てしまいます。そのため、骨と骨の間には軟骨が存在し、クッションの様にそれぞれの構造を守っています。
さらに、股関節は頑強でなければなりませんから、周囲を靱帯が強く固定しています。骨盤と大腿骨の間には非常に多くの靱帯が存在していて、ちょっとやそっとの力では大腿骨頭が臼蓋から抜けることがないようになっているのです。
変形性股関節症とは
変形性股関節症とは、股関節に長年負担がかかり続けることによってだんだんと変形してくることで起こってくる病気のことです。
長年にわたり運動を続けることで、関節の間に存在する軟骨がだんだんとすり減ってしまい、次第に骨と骨が接してしまうようになってきます。骨と骨が接することで痛みが起こるほか、骨自体にも変形が起こってくるのです。
初期には鼠径部などの痛みが感じられます。この痛みは動き出そうとした特に起こりやすいのが特徴です。また、動きによって痛みが起こるだけではなく、病状が進行すると変形が進行することによって関節の可動域に制限が起こってきたり、関節が変形して足の長さが左右で違ってきたりしてきます。
レントゲンでの見え方
この状態をレントゲンで確認すると、臼蓋と大腿骨頭の間にある間隔が狭くなってきている状態として確認できます。また、骨の変形もレントゲンで確認できます。
骨と骨がすれていくと、骨自体が変形します。特に力が良くかかる場所には骨が多く作られていきますから、骨棘というトゲのような構造が見られるようになってきます。
また、一方で骨の内側ではだんだんと骨が強くなっていく結果、関節に接する部分の骨が強く濃く見られるようになってきます。一方で、骨自体にまだらに力がかかるようになりますから、力が余りかからないところは骨が吸収されることになり、骨嚢胞と呼ばれる、レントゲンで見ると穴抜けしているように見える部分ができてきてしまうのです。
軟骨の状態はレントゲンでは確認できませんが、MRIを撮影すると確認することができます。MRIを撮影すると軟骨がすり減って減ってしまっている状態が確認できます。
変形性股関節症の症状
症状について詳しく見ていきましょう。
まず痛みですが、当初は動き始めのときに痛みを感じるのでした。しかし進行すると、だんだんと痛みが持続性となり、安静にしているときや夜間横になったときに持続する痛みを感じるようになってきます。
関節の可動域制限は、進行して骨が変形することによって起こってきます。靴下をはいたり足の爪を切ったり、しゃがみ込んだりといった動作が制限されてきます。
歩き方にも影響が出ます。痛みを伴い、足の長さも左右で異なってきますから、痛みを回避するために足を引きずるような歩行や、バランスが崩れて体幹が左右にぶれる歩き方をするようになります。
変形性股関節症になりやすい人
変形性股関節症は、原因となる病気が明らかではない一次性股関節症と、何らかの病気のせいで起こってくる二次性股関節症に分かれます。
二次性股関節症の原因としてあげられているのが、寛骨臼形成不全、発育聖子関節形成不全、ペルテス病、大腿骨頭壊死症などの病気の他、脱臼や骨折といった外傷が挙げられます。これらの病気が基礎にある場合、変形性股関節症が起こってきやすくなります。
一方で一次性股関節症は、股関節に負担がかかる作業をよくする場合に起こってくるといえます。
具体的には重い荷物をよく取り扱う場合や、肥満などが挙げられます。また、中年以降の女性に多いという特徴があります。中年以降の女性は閉経に伴って女性ホルモンが減少し、骨密度が急激に低下します。骨密度の低下が起こっているところに関節への負担がかかることによって関節が摩耗し、変形が起こってくるのです。
変形性股関節症の治療
変形性股関節症の治療には、次に挙げるような保存療法と手術療法があります。
保存療法
変形性股関節症が軽度の場合はまず保存療法が行われます。
最初に行われるのは日常生活指導です。股関節に負担がかからないようにすることが目的となります。肥満の場合は減量が必要です。また、股関節に負担がかかる正座やあぐら、長時間の立位、階段の上り下りなどの運動は変形を強めてしまいますから、なるべく行わないように指導します。
歩行するときに痛みがある場合は、杖や歩行器などを使用することでなるべく股関節に負担がかからないようにします。これは痛みの回避をするという意味もありますし、これ以上の変形を抑制するという意味もあります。
運動療法は、股関節周囲の筋力を鍛えることで関節の安定性を改善するために行われます。水中での歩行も有効です。陸上での運動で筋力を増強しようとしても関節に負担がかかってしまいます。水中であれば浮力を利用して股関節への負担を最小限にしながら筋力を鍛えることができます。
他には、装具を使用する方法もあります。腰と太ももに巻き付けたサポーター同士を繋ぐ様な装具を利用することで、股関節に体重がなるべくかからないようにします。また、足の左右差が大きい場合には足底装具を使用することで左右差を無くし、バランスのとれた歩行ができるように補助します。
これらの理学療法に加えて薬物療法も行われます。まずは痛みに対して鎮痛薬が使用されます。多く使用されるのはロキソプロフェンをはじめとしたNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬です。加えてアセトアミノフェン、弱い麻薬などが使用されます。
また、痛みの一時的な改善のために関節内にステロイドの注射を行うこともあります。
こうした保存療法は症状を和らげるためのもので、症状が進行すればいずれは手術が必要になります。
手術療法
手術療法は、主に骨を切って形を整える骨きり術と、関節全体を人工関節に取り替える人工関節置換術に大別されます。これらの術式の選択には年齢、性別、病歴、社会背景などを考慮の上で決定されます。
手術はいずれも全身麻酔を主とした麻酔のもとで行います。手術時間はおおむね2時間程度です。手術当日か、遅くとも翌日にはリハビリを開始することで筋肉が拘縮することを予防します。硬膜外麻酔を併用したり、痛み止めの点滴を追加したりすることで痛みを抑えながらリハビリを行います。