足の付け根の外側が痛い!大転子疼痛症候群と変形性股関節症の特徴

足の付け根に違和感があったり、痛みが出たりといった症状はありませんか。もしかしたらそれは大転子疼痛症候群や変形性股関節症かもしれません。それぞれの特徴と治療法について見てみましょう。
目次
股関節周辺の構造

股関節は骨盤と大腿骨を繋ぐ関節です。体重をしっかりと足に伝えるために、頑強な構造をしている一方で、さまざまな動きを可能にするために特殊な構造をしています。
股関節の骨盤側の構造は、臼蓋と言います。臼蓋というのは、骨盤にできたクレーターの様な凹みのことを指します。
一方で、股関節の大腿骨側は大腿骨頭といって、先端が丸くなった構造をしています。この大腿骨頭は大腿骨に直線上についているのではなく、大腿骨の延長線から約60度程度傾いて位置しています。
この大腿骨頭が臼蓋にはまり込むことで股関節は形成されています。大腿骨頭がゆがんだ構造をしていることで、股関節は前後左右、非常に広い範囲で動くことができるようになっています。
また、骨と骨が直接接触してしまうとすぐにすり減ってしまい、痛みが出てしまいます。そのため、骨と骨の間には軟骨が存在し、クッションの様にそれぞれの構造を守っています。
さらに、股関節は頑強でなければなりませんから、周囲を靱帯が強く固定しています。骨盤と大腿骨の間には非常に多くの靱帯が存在していて、ちょっとやそっとの力では大腿骨頭が臼蓋から抜けることがないようになっているのです。
大転子はどこにある?
大腿骨頭の近くの屈曲している部分の外側は、骨が少し隆起しています。大腿骨頭からだいたい2cmから4cm程度下にあり、その部分のことを大転子と言います。
大転子の周りには、股関節をスムーズに動かすための筋肉があるほか、滑液包と呼ばれる、関節を包む膜も付着しています。
足の付け根の外側が痛くなる大転子疼痛症候群

足の付け根の外側が痛くなるとなると、大腿骨の骨盤に接している部分の痛みよりも、大腿骨自体の痛みを考えます。このような痛みを起こす代表的なものが、大転子疼痛症候群です。どのようなものなのでしょうか。
大転子疼痛症候群の原因
大転子疼痛症候群は、何らかの原因で大転子の周囲に痛みを感じるものです。様々な疾患が原因となりますが、ほとんどの場合が大転子滑液包炎によります。
大転子滑液包炎は、大転子に付着している滑液包に炎症が起こってくる病気です。ランニングやサイクリングなどの継続的な運動を続けたり、立ち仕事を長い間続けるような人において、関節滑膜に刺激が続くことによって、炎症が起こってきます。
大転子疼痛症候群の症状
症状としては股関節外側に持続するような痛みを感じます。安静にしていると痛みが治まることもありますが、特に長時間座っていた後に立ち上がる場合や、階段の上り下りなどの股関節に負担がかかるような動きをした時に、痛みが強くなります。
診察では、まず大転子の部分の圧痛を確認します。典型的には圧迫で痛みを感じます。また可動域の確認も行います。多くの場合炎症によって関節滑膜の動きが悪くなっていますから、関節可動域が制限されているのが見られます。
大転子疼痛症候群の治療
原因となる病気によって治療法は変わってきますが、基本的には保存療法が選択されます。動くことによって炎症がひどくなりますから、安静にすることによって炎症が引くのを待ちます。
その間に痛みが強い場合には、痛み止めを使用します。NSAIDsと呼ばれる、炎症を抑えることによって痛みを抑えるタイプの痛み止めが良く使用されます。
物理療法として、温熱療法や超音波療法などの治療が行われることもありますし、痛い部分に対して局所麻酔薬を使用する治療、周囲にステロイドを注射する方法、ヒアルロン酸を注射する方法などもあります。
ただし、このような治療を行っていると、関節がだんだんと固まってきてしまうことがあります。特に年齢を重ねているとしばらく動かさないことによって筋肉や関節包が固まってくるのです。
そのため並行してリハビリテーションも行います。軽いストレッチなどをすることによって筋肉の緊張を緩めて、痛みの軽減を図ります。また体幹が安定すると姿勢の改善によって痛みの軽減を期待できることから、体幹トレーニングも行われます。
保存療法で改善が見られない場合や、症状が非常に強い場合には、手術を行う場合もあります。関節包を切除したり、骨きりをしたりします。
変形性股関節症とは

変形性股関節症とは、股関節に長年負担がかかり続けることによってだんだんと変形してくることで起こってくる病気のことです。
長年にわたり運動を続けることで、関節の間に存在する軟骨がだんだんとすり減ってしまい、次第に骨と骨が接してしまうようになってきます。骨と骨が接することで痛みが起こるほか、骨自体にも変形が起こってくるのです。
初期には鼠径部などの痛みが感じられます。この痛みは動き出そうとした特に起こりやすいのが特徴です。また、動きによって痛みが起こるだけではなく、病状が進行すると変形が進行することによって関節の可動域に制限が起こってきたり、関節が変形して足の長さが左右で違ってきたりしてきます。
レントゲンでの見え方
この状態をレントゲンで確認すると、臼蓋と大腿骨頭の間にある間隔が狭くなってきている状態として確認できます。また、骨の変形もレントゲンで確認できます。
骨と骨がすれていくと、骨自体が変形します。特に力が良くかかる場所には骨が多く作られていきますから、骨棘というトゲのような構造が見られるようになってきます。
また、一方で骨の内側ではだんだんと骨が強くなっていく結果、関節に接する部分の骨が強く濃く見られるようになってきます。一方で、骨自体にまだらに力がかかるようになりますから、力が余りかからないところは骨が吸収されることになり、骨嚢胞と呼ばれる、レントゲンで見ると穴抜けしているように見える部分ができてきてしまうのです。
軟骨の状態はレントゲンでは確認できませんが、MRIを撮影すると確認することができます。MRIを撮影すると軟骨がすり減って減ってしまっている状態が確認できます。
変形性股関節症の症状
症状について詳しく見ていきましょう。
まず痛みですが、当初は動き始めのときに痛みを感じるのでした。しかし進行すると、だんだんと痛みが持続性となり、安静にしているときや夜間横になったときに持続する痛みを感じるようになってきます。
関節の可動域制限は、進行して骨が変形することによって起こってきます。靴下をはいたり足の爪を切ったり、しゃがみ込んだりといった動作が制限されてきます。
歩き方にも影響が出ます。痛みを伴い、足の長さも左右で異なってきますから、痛みを回避するために足を引きずるような歩行や、バランスが崩れて体幹が左右にぶれる歩き方をするようになります。
変形性股関節症になりやすい人

変形性股関節症は、原因となる病気が明らかではない一次性股関節症と、何らかの病気のせいで起こってくる二次性股関節症に分かれます。
二次性股関節症の原因としてあげられているのが、寛骨臼形成不全、発育聖子関節形成不全、ペルテス病、大腿骨頭壊死症などの病気の他、脱臼や骨折といった外傷が挙げられます。これらの病気が基礎にある場合、変形性股関節症が起こってきやすくなります。
一方で一次性股関節症は、股関節に負担がかかる作業をよくする場合に起こってくるといえます。
具体的には重い荷物をよく取り扱う場合や、肥満などが挙げられます。また、中年以降の女性に多いという特徴があります。中年以降の女性は閉経に伴って女性ホルモンが減少し、骨密度が急激に低下します。骨密度の低下が起こっているところに関節への負担がかかることによって関節が摩耗し、変形が起こってくるのです。
変形性股関節症の治療

変形性股関節症の治療には、次に挙げるような保存療法と手術療法があります。
保存療法
変形性股関節症が軽度の場合はまず保存療法が行われます。
最初に行われるのは日常生活指導です。股関節に負担がかからないようにすることが目的となります。肥満の場合は減量が必要です。また、股関節に負担がかかる正座やあぐら、長時間の立位、階段の上り下りなどの運動は変形を強めてしまいますから、なるべく行わないように指導します。
歩行するときに痛みがある場合は、杖や歩行器などを使用することでなるべく股関節に負担がかからないようにします。これは痛みの回避をするという意味もありますし、これ以上の変形を抑制するという意味もあります。
運動療法は、股関節周囲の筋力を鍛えることで関節の安定性を改善するために行われます。水中での歩行も有効です。陸上での運動で筋力を増強しようとしても関節に負担がかかってしまいます。水中であれば浮力を利用して股関節への負担を最小限にしながら筋力を鍛えることができます。
他には、装具を使用する方法もあります。腰と太ももに巻き付けたサポーター同士を繋ぐ様な装具を利用することで、股関節に体重がなるべくかからないようにします。また、足の左右差が大きい場合には足底装具を使用することで左右差を無くし、バランスのとれた歩行ができるように補助します。
これらの理学療法に加えて薬物療法も行われます。まずは痛みに対して鎮痛薬が使用されます。多く使用されるのはロキソプロフェンをはじめとしたNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬です。加えてアセトアミノフェン、弱い麻薬などが使用されます。
また、痛みの一時的な改善のために関節内にステロイドの注射を行うこともあります。
こうした保存療法は症状を和らげるためのもので、症状が進行すればいずれは手術が必要になります。
手術療法
手術療法は、主に骨を切って形を整える骨きり術と、関節全体を人工関節に取り替える人工関節置換術に大別されます。これらの術式の選択には年齢、性別、病歴、社会背景などを考慮の上で決定されます。
手術はいずれも全身麻酔を主とした麻酔のもとで行います。手術時間はおおむね2時間程度です。手術当日か、遅くとも翌日にはリハビリを開始することで筋肉が拘縮することを予防します。硬膜外麻酔を併用したり、痛み止めの点滴を追加したりすることで痛みを抑えながらリハビリを行います。