失神とはどんな状態?神経調節性失神の特徴と分類

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学校の朝礼で急に倒れてしまったり、倒れている人を見たことはありませんか?それは神経調節性失神といいます。ここでは神経調節性失神について詳しく見ていきましょう。

神経調節性失神の特徴

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神経調節性失神とは、脳への血流が一過性に低下することで生じる失神のひとつを指します。

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経とは緊張した時に働く神経であり、血圧を上げたり、心拍数を上げる働きがあります。副交感神経はリラックスした時に働き、血圧を下げ、消化管の働きを活発にします。

日常生活では2つの神経が状況に合わせてうまく調節されていますが、神経調節性失神ではそのバランスが悪くなり脳の血流が途絶える結果、失神に至ります。

また、気温が高いと脱水になりやすい上に血管も拡張するため、脳血流が低下しやすく、温かい日や暑い環境下では注意が必要です。

神経調節性失神の分類

胸が苦しい女性

神経調節性失神は原因別に血管迷走神経性失神、状況失神、頸動脈洞症候群の3つに分類されます。

血管迷走神経性失神

長時間立ったままや座ったままの同じ姿勢で仕事をしたり、痛み刺激を受けたり、不眠や肉体的疲労が長く続いたり、精神的恐怖を体験することが誘因となって交感神経が抑制され、血管拡張と迷走神経緊張による徐脈が引き起こり生じる失神です。

血管迷走神経性失神では、血圧の低下と徐脈傾向、発汗やほてり・嘔気・顔面蒼白などの症状を伴う失神を認めます。また、前兆症状として腹部の不快感を認めることもあります。

状況失神

排尿や排便、飲み込む動作など特定の状況において生じる失神を指します。こうした状況で、迷走神経が過剰に働くことになります。

排尿失神

排尿する時に誘発される失神のことで、立位で排尿する男性に多く、中高年に比較的多いです。飲酒や利尿薬の服用が誘因になり、発症のほとんどが夜間から明け方です。

排便失神

比較的高齢(50~70代)の女性に好発し、切迫した排便や腹痛などの症状を伴うことが多いです。

嚥下性失神

40~70代の中高年に多く、炭酸飲料や水を飲み込む時に誘発されます。食道疾患の合併が多く、心筋梗塞を起こした後に起こりやすいのが特徴です。

咳嗽失神

咳き込む時に誘発される失神のことです。太っている方やがっちりした体格の中年の男性に多く、喫煙者や飲酒している方にも多いのが特徴です。

頸動脈洞症候群

頸動脈洞症候群は中高年の方の原因不明の失神です。頸動脈洞には血圧や脈拍を調節するのに重要な器官が存在しています。

心臓から駆出される血液の圧を頸動脈洞が感知して、圧が不足していると判断すれば心臓の活動を促し、圧が高いと判断すれば心臓の運動を抑制して血圧を調整しています。

ネクタイなど首を絞めるような動作、着替えや運転などの首を伸ばしたり曲げる動作、ヒゲを剃るなどの首の刺激が起こる動作などで誘発されるのが特徴です。

頸動脈洞を圧迫することによって、徐脈、心停止、血圧低下から失神に至ります。男性に多く、心臓の疾患や高血圧を合併することがあります。

神経調節性失神の治し方

神経調節性失神に対する特効薬は存在しません。そのため、失神を頻回に繰り返す場合はしっかりと病態を理解し、自身の症状が誘発されにくい環境作りや誘因の排除が重要になります。

頸動脈洞症候群では頚部の圧迫を避けることが大切です。また、状況失神が多い方は、排便や排尿後に慎重に立ち上がることで脳血流の低下をある程度抑制することができます。

前兆症状を認めた場合はすぐに横になる、もしくは頭を低い位置にして脳血流の改善に努めることが重要です。夏場や暑い環境下では脱水になりやすく脳血流も低下しやすいため、積極的に水分を摂取しましょう。

いかがでしたでしょうか。神経調節性失神といってもさまざまな種類があります。対策をしても改善しない場合や、頻回に失神を引き起こす場合は一度医療機関を受診して相談してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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