紫斑病はどんな病気?子ども・女性・高齢者に発症する様々なタイプ
紫斑病は皮膚内の出血によって、皮膚に紫紅色や暗紫褐色の斑で現れる病気です。紫斑病にはさまざまなタイプがあり、中には重大な疾患のサインとなるものもあります。ここでは紫斑病の特徴と、子ども、女性、高齢者でそれぞれ発症しやすい紫斑病を紹介します。
紫斑病とは
紫斑は、真皮や皮下組織で出血することによって表面に紫色の皮疹が見える状態を言います。出血を来す原因は血小板など血液を固まらせる要因の異常や血管の異常など様々です。
全身疾患の症状の1つとして紫斑が見られていることもあり、皮膚を見ただけで紫斑と断定するのは難しいです。
紫斑とその他の皮疹を見分ける方法としては、皮膚を圧迫する方法があります。皮膚を圧迫すると、他の皮疹では一時的に色が消退し、圧迫を解除するとまた再び色がついてくる様子が観察されます。しかし紫斑病の場合は圧迫しても色が消退することがないのです。
紫斑病を来す疾患には様々な病気があります。
例えば、血小板の異常としては免疫性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群などがあり、血小板以外の異常によっておこってくるものとしては播種性血管内凝固症候群やVon willebrand病、血友病などがあります。
また、血管の異常によって起こってくるものとしてはIgA血管炎や、皮膚白血球破砕性血管炎などがあります。このような場合、検査所見としては炎症反応の著明な上昇が見られるのが特徴です。
血液検査で異常な蛋白が増加していると、クリオグロブリン血症や高γグロブリン血症による紫斑が疑われます。
他には、血管がもろくなってしまうことで起こってくるのが老人性紫斑やステロイド性紫斑が挙げられます。
紫斑病はこのように非常に多くの病気と関連していますが、年齢によって紫斑を起こす原因には傾向があるため、鑑別の一助となります。
子どもに多いアレルギー性紫斑病
子どもに多い紫斑は、アレルギー性紫斑病です。アレルギー性紫斑病は前述のIgA血管病に代表される、体内でのアレルギー反応による紫斑病です。
元々アナフィラクトイド紫斑病や血管性紫斑病、ヘノッホシェーンライン紫斑病とそれぞれ呼ばれていた紫斑病がありましたが、それらは全ておなじ原因でおこるものとして、2012年からIgA血管病から起こってくる紫斑病に統一されています。
IgA血管炎は、β溶血性連鎖球菌やマイコプラズマなどの感染症や、薬剤によるアレルギー、その他の原因によるアレルギーによって起こってきます。このアレルギー反応によって血液中にIgAというタンパク質が形成され、毛細血管などのちいさな血管の壁に付着することによって血管が破壊され、皮下に血液が漏れ出し、紫斑が形成されます。
その名の通り、ほとんどの場合は皮膚に紫斑ができますが、その他には腹痛、関節症状、腎症状が出てくることがあります。特に腹痛は初発症状として最も多く、腹痛の後に紫斑が出てきた場合にはアレルギー性紫斑病を疑います。
関節症状が見られるのは足関節に多く、レントゲンなどで異常が見られないため整形外科を受診してもなかなか診断に至らないことがあります。
基本的にIgA血管炎は予後が良好な疾患で、ほとんどの場合安静と対症療法のみで改善してきます。発熱があっても微熱ですから、治療薬を必要とする場合も少ないです。もし、感染によるものであれば抗生物質を投与する場合があります。
ただし、腹痛が激しくて下血などを繰り返す場合には入院した上でステロイド剤の点滴を行うなどの治療が必要になります。
高齢者に多い老人性紫斑病
老人性紫斑病は、その名の通り加齢によって起こってくる紫斑病です。年を取ってくると、血管壁がだんだんと弱くなってきて、少しの刺激で破綻してしまいます。血管壁の破綻により皮下に出血を起こし、紫斑ができてくるのです。
そのため、極軽い打撲を繰り返すだけで、全身の様々な場所に紫斑ができる事があります。ほんの少しの衝撃で起こってくるため、本人に自覚がないことも多く、白血病などを心配されることがありますが、基本的には打撲しやすい場所に多く紫斑ができることから、打撲に関係せず紫斑が出来る白血病などとは鑑別はしやすいものです。
打撲した場所ははじめは赤紫色になりますが、徐々に黄色に変化し、2週間から数週間で消失します。痛みも伴いませんし、特に治療を要するものでもありません。
ただし、前述のように普段打撲しないような場所、例えば肘の内側などに紫斑がよくできるような場合には血液凝固異常が起こっている可能性がありますから、病院を受診しておいた方がよいでしょう。
女性に多い単純性紫斑病
単純性紫斑病は20代の女性に多い原因不明の紫斑病です。主に血管が弱くなったせいで皮下に出血ができることによって皮膚に何か所も紫斑ができる病気です。
なぜ血管に脆弱性ができるのかは分かっていません。一般には過労や月経に関連があるとは言われていますが、その関連性もよくわかっていないのが実情です。
症状は、紫斑のみです。その他の症状を伴うことはありませんので、治療を要することもありません。ただし、他の病気が隠れていないか調べるために血液検査で凝固機能の検査を行う場合があります。
注意が必要な特発性血小板減少性紫斑病
特発性血小板減少性紫斑病というのは、特に原因があるわけではないのに血小板が急に減少し、紫斑が多く発生する病気です。
血小板というのは、血管が損傷を受けたときにまず最初に働く細胞です。血小板が集まって傷ついた血管の部分を覆う事によってそれ以上出血しないようにガードしてくれます。しかし血小板の量が減少してしまうとそのような事ができなくなってしまい、血管から血液が多く漏れ出してしまいます。この漏れ出した血液が皮下にたまることによって紫斑ができてくるのが特発性血小板減少性紫斑病になります。
特発性血小板減少性紫斑病は先天性のものではなく、何らかの原因で後天的におこってくるものです。そして、血小板の減少の程度によって症状が大きく異なってきます。
まず、血小板が減少しても5万以上ある場合には症状はほとんどありません。しかし5万を下回り、3万程度まで減少すると強く打撲した後によく紫斑ができるようになります。
3万を下回ってくると、打った覚えがないのに紫斑が起こってくることに気づきます。さらに1万を下回ると鼻出血や歯肉出血の他、消化器系の出血で下血するなど、出血による症状が様々に見られるようになってくるのです。
特発性血小板減少性紫斑病の因果関係は不明ですが、ピロリ菌が存在すると起こりやすいと考えられています。そのため、ピロリ菌が存在する場合にはまず除菌を行います。これによって血小板数が回復する人もいるようです。
除菌が適応外の人、あるいは除菌をしても回復しない人にはステロイドの投与を行います。これは点滴である程度多い量を一度に投与するような治療となります。
他にも、様々な薬が使用されるほか、脾臓を摘出することによって血小板が破壊されるのを防ぐ治療を行う場合もあります。