蕁麻疹(じんましん)とは?湿疹や汗疹との違いと見分け方

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体に発疹が出た時にそれが何なのか気になるでしょう。代表的なものとしては蕁麻疹、湿疹 、汗疹が挙げられます。これらの違いを理解しておくと、より適切な対処が可能になります。ここでは蕁麻疹、湿疹 、汗疹の特徴や違いについて解説しましょう。

蕁麻疹(じんましん)とは

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蕁麻疹というのは、 病理学的には皮膚の真皮層に浮腫が起こった状態と定義されています。 皮膚というのは 表皮、真皮、皮下組織の三相構造からなっています。この中でも真皮というのは皮膚の機能を司る場所になっていて、様々な構造物があります。非常に密度の高い場所です。

 浮腫というのは簡単に言うとむくみ のことです。 水が溜まることで周囲の組織が膨張するような状態を言います。真皮のところに浮腫が起こると、密度が高いところに水が溜まりますから、その部分に限定して腫れぼったくなってきます。

そのため蕁麻疹が起こると、皮膚の一部分に境界が明瞭なぷっくりと腫れた病変ができるのです。

また発症の仕方も特徴があります。ほとんどの場合、蕁麻疹は急速に症状が出てきます。一方で多くの場合には数時間以内に1度消えてしまいます。

アレルギーなどが原因に

では、蕁麻疹はどのようにして起こってくるのでしょうか。 多くの場合にはアレルギー反応を元にして起こってきます。何らかのアレルゲンに結合したIgE抗体と呼ばれるものが、 肥満細胞や好塩基球といった血液中の細胞と結合することによって様々な血管作動性物質が放出されます。

これらの物質が毛細血管や静脈を拡張させて、血管の外に水分が漏れることによって浮腫が起こってきて、蕁麻疹が形成されます。 

急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹

慢性蕁麻疹というものもありますが、こちらも一度できたものが消えてまたできたりすることが多いです。一般に6週間未満で元に戻るものを急性蕁麻疹、6週間以上経過して治らないものを慢性蕁麻疹と言います。概ね7割程度が急性蕁麻疹と言われています。

蕁麻疹は何らかのアレルギーによって起こってくることもありますし、体調不良や疲労などで出てくることもあります。ただ慢性蕁麻疹の場合には、原因がなかなか特定できず特発性のものや自己免疫疾患の一部として症状が出ていることも少なくありません。

蕁麻疹と湿疹の見分け方

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湿疹というのは、 病理学的に表皮の炎症を言います。多くの場合、表皮の中でも一番深い角層の細胞の間に炎症細胞が多く見られ、腫れています。この状態を表面から見ると、赤っぽくなって腫れぼったくなっているのです。

湿疹は経過を見ているうちにだんだんと状態が変わっていきます。最初は紅斑と言って赤っぽい病変を示しています。それがだんだんと丘疹と呼ばれる腫れた状態になり、小水疱、膿疱、湿潤、結節、落屑といった状態をたどって行きます。

簡単に言うと痒みや赤みやブツブツや水ぶくれなどの症状がだんだんと進行した後に枯れていきます。特に紅斑や膿疱、びらん、落屑が混在することも多く、このような状態を急性湿疹と呼びます。

多くの場合にはそのまま治癒していきますが、場合によっては慢性湿疹として色素沈着を残すことがあります。慢性湿疹になることを病理学的には苔癬化と言います。苔癬化と言うのは皮膚が全体に肥厚したことを言います。 

湿疹の原因には外的要因と内的要因があります。外的要因としては金属や食べ物、ハウスダスト、化粧品、細菌といった刺激があげられます。元々皮膚に傷があるということも湿疹ができやすい条件となってきます。

内的要因として挙げられるのはもともとの健康状態や、皮脂の分泌状況、発汗の状態、アレルギーの有無、アトピー素因などがあります。

湿疹と一口に言っても、 様々な湿疹があります。 よく見られるのが接触性皮膚炎として様々な物質に触れることで肌が荒れてくる湿疹です。 他にもアトピー性皮膚炎や、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、慢性単純性苔癬などがあります。 

蕁麻疹と湿疹を見分けるには?

蕁麻疹と湿疹で大きく異なるのが時間経過です。先ほど述べたように蕁麻疹はすぐに症状が出てきて皮疹が完成します。一方で湿疹はだんだんと皮疹ができてきます。 

また湿疹は水疱ができたり、傷口がじゅくじゅくとしてしまうこともあり、 治った後も色素沈着として色が残ってしまうこともあるのです。蕁麻疹は皮膚が盛り上がることはありますが傷口はなく、水ぶくれや膿がたまることもなく、慢性化しなければ跡を残さずに治るのが特徴です。

蕁麻疹と汗疹の見分け方

汗疹というのは いわゆる「あせも」です。大量に汗をかいた後に皮膚にぶつぶつができる状態を言います。

汗疹の原因は、発汗によって老廃物が出てくる時にその老廃物のせいで汗の通り道である汗管がつまり、 皮膚の中に汗が溜まってしまうことによって起こってきます。溜まってしまった汗が刺激となって、周辺の皮膚が炎症を起こすことによってブツブツができてきて、 ひどい時には赤くなってきて痛みや痒みを起こしてきます。

汗疹には、3つのタイプがあります。水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹です。それぞれ汗が詰まる深さが違うことによって分類がなされています。

水晶様汗疹は、 皮膚表面の角層で汗管が塞がってしまいます。紅色汗疹では 表皮の有棘層で、深在性汗疹では真皮内で汗管が詰まってしまいます。

汗疹ができやすい場所としては、汗が溜まって止まりやすい場所になります。 すなわち首回りや脇、背中やお尻、 服やベルトで締め付けられている部分などにできてきます 。

水晶様汗疹では、直径1~3mm程度のちいさな水疱が多発します。このとき、かゆみや痛みなどの自覚症状がないのが特徴です。

紅色汗疹は赤い丘疹が多発します。軽いかゆみやチクチクとした痛みをともなってくることが多いです。

深在性汗疹では扁平に隆起した丘疹が敷石状に多発します。繰り返し高温にさらされる場合に起こってきます。このような深在性汗疹が起こっている場所では汗が出なくなっていますので、体温調節能力が低下し、熱中症を起こしてしまうこともあります。 

蕁麻疹と汗疹を見分けるには? 

水晶様汗疹や紅色汗疹であれば、ちいさな水疱や丘疹が多発しますから、蕁麻疹と見た目が異なります。一方で深在性汗疹では蕁麻疹と同じく真皮層に病変がありますから、見た目が似通ってきます。

見分けるポイントはやはり症状の経過です。蕁麻疹は急激に症状が広がり、また早いうちに症状が改善します。一方で汗疹はだんだんとできて、なかなか治らないことが多いです。また、できる場所も汗疹は特徴的ですから鑑別がつくでしょう。

ただし、中にはなかなか見分けがつかないものもあります。すぐに消えない皮疹でかゆみがある場合は皮膚科を受診しましょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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