違いを解説!検診と健診、一般健診と特定健診、対策型と任意型

コラム

健診と検診はどちらも「けんしん」と読みますが、実はそれぞれ異なる意味を持った言葉です。

また、健診には一般健診と特定健診があり、検診には対策型と任意型があります。少し複雑で分かりにくいと感じられる方もいらっしゃることでしょう。ここでは検診と健診の違いと、それぞれの特徴について解説します。

健診と検診の違い

健診と検診にはそれぞれ目的があります。「健康状態を調べる」ために実施する健診に対して、検診には「特定の病気を早期発見する」という目的があります。

健診とは

健診は「健康診断」のことで、自分の健康状態を確認して病気の予防をすることを目的としています。

健診とは「健康状態を調べる」ための診断を指す言葉であり、病気を予防し、健やかな生活を送るため、一次予防・二次予防・三次予防という概念があります。

一次予防は、病気にならないようにする、二次予防では病気になってしまった人を早期発見・早期治療する、そして三次予防においては病気になってしまった人の後遺症の進行を防ぐという目的があります。

昨今では、身近な環境を整えることで未然に病気を防ぐ「0次予防」という考え方も周知されています。

健康診断を実施する主な役割は、尿や血液を採取し、体に悪いところがないか全体的にチェックする「一次予防」に該当します。

検診とは

検診は、特定の病気を発見するために行う検査のことを指しています。

検診を実施する主な目的は、個々の病気を早期発見し、早期治療につなげることです。いわゆる予防医学のうち、「二次予防」に該当するのが検診であると考えられています。

例えば、代表的な検診内容としては、がんの早期発見を目的とした「がん検診」があります。

検診には、大きく分類して、主に地方自治体が実施している「対策型検診」と、医療機関などで任意に受診できる「任意型検診」の2種類があります。

一般に年齢が上がれば上がるほど、体は長年の生活習慣の乱れや不摂生によって病気を発症しやすくなるため、積極的に検診を活用するようにしましょう。

一般健康診断と特定健康診査の違い

健診は職場などで定期的に実施する「一般健康診断(定期健康診断)」と、生活習慣病の予防や早期発見を目的とした「特定健康診査」の2種類があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

一般健康診断とは

一般健康診断(定期健康診断など)は、日本でもっとも多く実施されています。

労働安全衛生法では、事業者が労働者に対して1年に1回以上定期健康診断を実施することが義務付けられていて、その具体的な検査内容は身体計測、血液検査、尿検査、胸部X線など基本的なものが中心となります。

一般健康診断はその他にも、雇い入れ時健康診断や、海外に6か月以上派遣する労働者を対象とした健診、給食従業員の検便、深夜業従事者がその業務への配置替えの際に行う健康診断、及び6か月に1回定期に行う健康診断なども含まれます。

それ以外にも、受診を希望する場合は一般健康診断よりも検査項目が増えた「付加健診」、女性が対象の「乳がん・子宮頸がん検診」や「子宮頸がん検診」、肝炎検査を受けたことがない人が対象の「肝炎ウイルス検査」などの健診を受けられます。

特定健康診査とは

特定健康診断は2008年からできた健診で、メタボリック症候群やその予備軍を減少させることを目的としてスタートした制度であり、対象者は40〜74歳の方です。

厚生労働省の統計によれば、2020年度の特定健康診断の受診者数は約3000万人程度と言われています。

特定健康診査は、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の原因となる「メタボリックシンドローム」を予防するために実施する健診内容です。

男性は腹囲が85cm以上で女性は90cm以上、さらに「高血糖」「脂質異常」「高血圧」に該当するかどうかを判断して、生活習慣病を発症する可能性が高い、なおかつ生活習慣を改善することで予防できると判断された場合に、特定保健指導を受けることができます。

検査した結果、生活習慣病の発症リスクが高いと判明した場合には、保健師、管理栄養士など専門医療スタッフによる栄養生活指導などを中心に実施されることになります。

特定保健指導では「動機付け支援」と「積極的支援」があります。

いずれも、個々のライフスタイルにあった目標を立てて、実行に移せるように保健師などの専門医療スタッフがサポートしてくれます。

対策型検診と任意型検診の違い

検診には対策型検診と任意型検診があり、受診料と検査の項目が異なります。

対策型検診とは

対策型検診は住民の病気予防のため、市町村などが実施している検診であり、受診料が安く無料で受診できる検診もあります。

胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5大がんの早期発見を目的に、自治体が一定の対象年齢の住民に対して検査方法を指定して、公共的な予防対策として実施する内容となっています。

自己負担金は、ほとんどの場合にはひとつの検診につき一律500円であり、ワンコイン検診とも呼ばれています。

がん検診の場合は肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がんの5大がんの早期発見が可能となります。

任意型検診とは

病気の早期発見・早期診察を目的とする任意(自由診療)の健康診断として、任意型検診の代表例が人間ドックです。

任意型検診は医療機関が独自に提供している検診を意味しており、対策型検診よりも検査項目が多く、医療機関によっては先進的な機器を用いた検査が可能となっています。

人間ドックでは、一般健診や特定健診の基本的な健診内容だけでなく、上部消化管内視鏡検査やCT、MRIなどの画像検査項目、あるいは女性特有の病気や脳に特化した検査など、医療施設によってさまざまな種類のオプションやコースが準備されています。

検診費用は原則として全額自己負担となり、医療機関が提供する検診プランに応じて流動的に変化します。

まとめ

これまで検診と健診、一般健診と特定健診、対策型と任意型の違いなどを解説してきました。

いわゆる健診は、自分の体が健康であるかどうかを確認する一方で、検診は、がん等の病気がないかどうか特定の病気を調べるものです。

いずれも自分の体や日頃の生活習慣と向き合う機会となり、定期的に受けることが大切です。

一般健康診断は、国が事業者に対して労働者に年1回の定期健康診断への受診を義務づけているものであり、その実施目的は、おもに健康状態の維持と、早期に病気を発見することが挙げられます。

一方で、特定健康診断はメタボリックシンドロームに焦点を当てた健診です。糖尿病などの生活習慣病を予防する保健指導が必要な方を見つけ出すために実施されています。

さまざまな種類と目的がある「健診」と「検診」をうまく利用して、毎日の健康維持や病気の予防、早期発見・早期治療に役立ててください。

今回の情報が参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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