ストレスや肥満で喘息になる?喘息を引き起こすさまざまな原因

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喘息は咳が止まらなくなるだけではなく、空気の通り道である気管が狭くなることでつよい息苦しさを感じるつらい病気です。

ここでは喘息の症状がひどくなる原因について解説します。

ストレスは喘息の原因になる?

ストレスを感じると、喘息の症状がひどくなると感じている患者さんはたくさんいます。

ストレスを感じると体の免疫に影響が現れます。免疫反応が活発になることで気道への免疫反応が活発化し、それだけで喘息の症状がひどくなることもあります。

また、免疫反応の異常によってウイルスに感染しやすくなる面もあります。後述する通り、ウイルス感染は喘息の増悪原因の一つですから、ウイルスに感染しやすくなるということは喘息の症状を増悪させる一因となるということです。

またストレスは交感神経を活性化させます。実は気道は交感神経の刺激がかかると狭くなり、交感神経の刺激が弱まると広がるという特徴を持っています。ストレスで交感神経が活性化されると気道が狭窄し、喘息の症状が増悪します。

このように、ストレスはさまざまな面から喘息の症状を増悪させるのです。

肥満は喘息の原因になる?

肥満も喘息を増悪させる因子として知られています。高度肥満の方もそうですが、急激に体重が増加したときも喘息が増悪することが多くなります。

肥満が喘息を増悪させる機序についてはさまざま提唱されています。まず肥満によって気管周囲の脂肪組織も増加し、気管が狭くなる機序が説明されています。

また、内臓脂肪が増加すると横隔膜が押し上げられ、肺が広がりにくくなります。気管や気管支自体に対する影響はあまりないのですが、肺が広がりにくいと息苦しさを感じたり、呼吸機能の検査で異常が出てきたりしますから、自覚症状や検査結果として喘息が悪化したとされます。

最近では、肥満によって脂肪細胞が増えること自体が喘息を増悪させると考えられています。脂肪細胞からはさまざまな炎症を引き起こすサイトカイン(血液中を流れてさまざまな反応を引き起こす物質)が分泌されています。脂肪細胞の増加によって分泌されたサイトカインが気道の粘膜に作用し、気道の炎症が引き起こされる結果、喘息の症状が増悪するといわれています。

喘息の場合は減量も治療の重要な要素となります。

喘息を引き起こすさまざまな原因

他にも、喘息を引き起こすさまざまな原因があります。

アレルギー

喘息はアトピー型喘息と非アトピー型喘息に分かれます。アトピー型喘息は小児に多く、体内でのアレルギー反応によって気道に炎症が引き起こされ、喘息の症状が出てくる疾患です。アレルギーを引き起こすアレルゲンはダニやハウスダスト、花粉など日常にありふれた物質であることが多いです。

喫煙

喘息の場合、喫煙は絶対に控えた方がよいものです。

タバコの煙に含まれる物質によるアレルギー反応によって喘息が起こることもありますが、多くの場合はアレルギー反応ではなく直接的に気道に炎症を引き起こすことによって喘息を招きます。すなわち、アレルギー性素因がなくてもタバコを吸えばアレルギーを発症する可能性があるということです。

また、喘息があるのに喫煙をした場合は喘息を増悪させる複数の条件がそろっています。

先ほど説明した通り、直接気道粘膜に炎症を引き起こさせる作用がありますから、喘息によって炎症が起こっている際にはさらに炎症を増悪させ、喘息の症状はひどくなります。

また、タバコの煙は気道クリアランスを低下させます。気道クリアランスというのは気管や気管支の中の物質を体外に排泄するための機能のことです。

実は気道の粘膜面には細い線毛という構造があります。絨毯の毛のように無数の毛のような構造が表面に出ているのですが、この線毛自体は自分自身で動くことができます。異物が線毛に接すると、体外に排泄しようとして線毛が動き、線毛から線毛へと次々と受け渡すことで異物を気管から外へと排泄しているのです。

タバコの煙はこの線毛の運動を低下させることが分かっていますから、アレルゲンとなる物質が気道に入ってきても排泄することがなかなかできず、炎症が強まり、長引いてしまうのです。

また、タバコの中に含まれるニコチンは血液中に吸収され、交感神経を刺激します。ストレスの項目で説明したとおり、交感神経の刺激は喘息を増悪させますから、喫煙によっても同じように交感神経刺激から喘息を増悪させるのです。

このように、喫煙は喘息に非常に悪い影響を与えます。喘息をお持ちで喫煙をされている方は禁煙されることを強くおすすめします。

アルコール

アルコールを摂取すると喘息が起こるアルコール誘発喘息という病気があります。

アルコールを摂取すると、肝臓で分解されアセトアルデヒドという物質になります。アセトアルデヒドはアセトアルデヒド還元酵素によって分解され、無毒化されます。

日本人にはこのアセトアルデヒド還元酵素の働きが弱い人が多く、俗に言う「アルコールに弱い」人が多いといわれています。すなわち、アセトアルデヒドがなかなか分解されず体内に貯留しやすいといえます。

アセトアルデヒドは体内でヒスタミンという物質を増やす働きがあります。このヒスタミンは炎症を引き起こす物質で、気道にも作用し、気道粘膜の炎症を引き起こすことで喘息を発症するのです。

アルコールの後に喘息の症状を認める人には禁酒がすすめられます。

ウイルス

風邪を引いた後に咳が長引く人がいます。また、風邪を引くとよくヒューヒューいうと言う人もいます。これらはいずれもウイルスによって喘息の症状をきたしていると考えられます。

喘息がある人は気道粘膜で慢性的に炎症が起こっている状態です。そこにウイルスが付着して体の免疫がウイルスを排除しようとして炎症を引き起こします。

もともと気道の炎症が起こっているところに炎症がさらに起こるわけですから症状もひどくなります。また、元々の炎症がひどくなってなかなか治らず、長引く頑固な症状をきたすのです。

気温・気圧の変化

気温が急に下がったり、気圧が下がって雨が降りそうになったりした時に喘息の症状がひどくなる人がいます。

気温が下がると、吸入する空気も冷たい空気になります。吸入した空気はある程度鼻や口の中で暖められますが、それでも外気が非常に低ければ、普段よりかなり冷たい空気が気道に入ってくることになります。

冷たい空気はそれ自体が気道粘膜には刺激になります。刺激によって反応しやすい状態になっている気管支喘息の患者の気管はそのような刺激に容易に反応し、発作を引き起こします。

寒暖差が激しい季節は風邪を引きやすい季節でもあり、それによって喘息がひどくなる場合もあります。

また、気圧の変化も体に対する負荷が変化しますから、ストレスとなり喘息の症状が増悪するようです。実際、台風が近づいてくると喘息がひどくなる人は多くなります。

大気汚染

春になると花粉が飛散し、喘息の症状がひどくなる人が多くなります。最近はPM2.5と呼ばれる物質が大気中に飛んでいることが注目されていますが、PM2.5に限らずさまざまな物質が大気中には飛散しています。

これらの物質を吸入すると、気道粘膜に付着し炎症が引き起こされます。これによって喘息が引き起こされることもありますし、その物質に対してアレルギー反応を示す人であればアレルギー反応によって喘息の症状が出現する場合もあります。

解熱鎮痛薬

成人喘息の約10%は、アレルギーによるものではなく解熱鎮痛薬によって起こってくると言われています。解熱鎮痛薬には大きく分けてアセトアミノフェンという種類と、NSAIDsと呼ばれる種類のものと2種類ありますが、その中でもNSAIDsによって喘息が引き起こされます。

NSAIDsはエヌセイズと読み、非ステロイド系抗炎症薬の略語です。痛みは多くの場合炎症によって引き起こされるため、炎症を抑えることによって痛みを抑えるのがその機序になります。喘息が引き起こされるのはその炎症を抑える機序によって起こってくるのです。

炎症というのは、プロスタグランジンという物質が身体の中で作用することによって起こってきます。プロスタグランジンは炎症が起こっている場所でアラキドン酸という物質から体内で合成されることによって増加し、炎症をより強いものとします。

NSAIDsはアラキドン酸からプロスタグランジンを合成することを阻害する作用を持っています。プロスタグランジンが合成されないことによって炎症が起こらなくなり、痛みが抑えられるというわけです。

しかし、アラキドン酸からはプロスタグランジンだけではなく、ロイコトリエンという物質も合成されます。そしてプロスタグランジンの合成が阻害されると、余ったアラキドン酸からロイコトリエンの合成が増加し、通常よりもロイコトリエンが急激に増加してしまいます。

ロイコトリエンは、気管支粘膜に作用すると粘膜の浮腫を来し、また気管支粘膜下にある平滑筋を収縮させることで気管支の狭窄をもたらします。また好酸球というアレルギーに関与する白血球も増加させます。

こうした機序によって喘息発作が起こってくるのです。

このようなNSAIDsの投与に起こってくる喘息発作のことをアスピリン喘息、あるいはNSAIDs過敏喘息と呼びます。このような発作が起こるため、喘息の患者さんに対するNSAIDsの使用には慎重になるべきですし、アスピリン喘息と診断がされている場合には投与が禁忌となります。

成人から喘息を発症した場合、副鼻腔炎や鼻茸を合併している場合、嗅覚異常がある場合、アレルギー検査が陰性である場合、季節性がない場合などはアスピリン喘息の可能性があります。

喘息の衛生仮説

日本をはじめとする先進国では花粉症や喘息など、アレルギー性疾患が増加しています。一方で発展途上国ではあまり見られていません。この原因を説明する一つの仮設が、アレルギーの衛生仮説です。

衛生仮説というのは、乳幼児期の衛生環境が個体の免疫系の発達へ影響を及ぼして、その個体がアレルギーになりやすいかどうかを決めると言う仮説です。つまり、衛生環境が良い状態で乳幼児期を暮らすと、アレルギーになりやすくなると言う仮説です。

原因ははっきりと分からず仮説の域を出ていませんが、有力な説として言われているのが、ヘルパーT細胞というリンパ球のバランスが崩れるためという説です。

Tリンパ球にはTh1細胞とTh2細胞という種類があります。Th1細胞はウイルスや細菌に対する防衛反応を起こします。一方でTh2細胞は寄生虫に対する防御反応を起こすとともに、過剰になればアレルギー反応を起こします。

産まれたときにはTh2細胞が多い状態で生まれてきます。その後、細菌やウイルスに感染することでTh1細胞が増加し、正常なバランスとなります。

しかし、産まれてから清潔な環境で暮らすと、Th1細胞の増加が不十分となり、Th2細胞の方が多くなった結果、アレルギーが起こりやすいという説です。仮説ではありますが、喘息を引き起こす原因として考えられています。

家族歴

両親ともに喘息の場合、子どもが喘息を発症する確率はそうでない場合に比較して3~5倍高いとされています。また双子の場合に発症率は38~62%と高い値となっており、遺伝の関与が示唆されました。

また、研究ではいくつかの遺伝子が、喘息の発症に関与するとして発表されてきています。おそらく家族歴も関与しているのであると考えられています。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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