前兆はある?突然死の原因に多い心臓突然死と女性のリスク

心臓を大切に
お悩み

突然死とは、瞬間死あるいは急性症状の発現後24時間以内の死亡で、外因死を除いた自然死のことをいいます。突然死の原因で多いのは心臓の病気です。

また、女性は閉経や更年期の影響によって心臓疾患のリスクが高まることが知られています。ここでは心臓突然死と女性のリスクについて見ていきましょう。

突然死とは

突然死とは、それまで健康的に日常生活を送っていた人が、急速な経過で死に至ることを指します。不整脈など心臓に生じた異常や、脳血管疾患などが原因となり起こることがあります。

突然死に至る可能性のある不整脈としては、心室細動や持続性心室頻拍、完全房室ブロックなどがあり、脳血管疾患が原因で突然死することもあります。

突然死は、睡眠中や仕事中、歩行中など日常生活のなかで突然生じて、短時間で急変し死亡する場合には、突然倒れて失神(意識消失)して反応がなくなる場合もあります。このほか悲鳴のようなうめきを数回発したり、口から泡を出したりすることもあります。

また、原因によっては突然死する前に病気に関連した症状が出現することもあり、心筋梗塞が原因となっている場合には、胸の痛みや冷や汗、胸の圧迫感、息苦しさ、吐き気や嘔吐などの症状が現れることがあります。

突然死の原因に多い心臓突然死

心電図と聴診器

心臓突然死とは、心室細動のような致死的心室性不整脈に突如襲われ、心臓の収縮運動に異常が生じ、脳を含む全身に血液が循環できず死に至ってしまう病気であり、突然死の原因として多く認められます。

日本では心臓突然死によって亡くなっている人は年間約8万人に上るといわれており、年齢や性別に関わらず誰にでも起こり得ます。

心臓突然死にはさまざまな原因があるとされており、心筋梗塞や心筋症などのほか、遺伝性の不整脈もそのひとつです。

遺伝性の不整脈のなかでも広く知られているのが、先天性QT延長症候群とブルガダ症候群であり、これら不整脈を遺伝として引き継いでいる人の場合、血縁者が心臓突然死しているケースがみられます。

遺伝性不整脈は心臓の筋肉や血管からは異常がわからないうえに、自覚症状もなく、心電図から発見するしかないため、遺伝性不整脈に気付かず、心室に不整脈が生じる心室細動に急に襲われて亡くなってしまうことがあります。

心臓突然死の前兆はある?

動悸や息苦しさをを訴える女性

虚血性心疾患などの心臓の病気が原因で突然死が起こる場合には、典型的には前兆として胸痛ないし胸部の苦悶感、肩から上腕にかけての痛み、悪心・嘔吐、場合によっては下顎痛、歯痛、高齢者では腹痛や腹部不快感などが出現することがあります。

これらの症状が続くと全身の熱感や発汗が強くなることが知られていて、これらは心臓の動きが悪くなり、それを防ぐために自律神経の交感神経が作動して闘争的な生理状態となるためです。

また、短時間で急変して突然死する場合、仕事中、歩行中、乗車中、テレビを観ているときなどの安静時、用便中あるいはその直後、就寝中や性行為中に突然倒れて意識消失(失神)し、反応が無い状態となります。

時として甲高いいびきや悲鳴のようなうめき声を発することもあれば、急性左心不全による肺水腫に伴って口から白色、またはピンク調の泡を出すこともあります。

甲高いいびきは、心停止による脳虚血に伴って舌がのどに落ち込んで舌根沈下するために、終末呼吸がいびきのように聞こえます。

更年期の女性の心臓病リスク

心臓を大切に

更年期の女性はエストロゲンの減少によって心臓病のリスクが上がることがあります。どのような影響があるのか確認しておきましょう。

エストロゲンの低下が心臓に与える影響

日本人の女性は平均50歳で閉経し、その前後5年間、つまり45~55歳の間を更年期と呼んでいます。この時期は女性ホルモンの分泌が急激に低下し、それに伴って、顔のほてり・のぼせ・発汗・冷え性・頭痛・情緒不安定・疲れやすいなど様々な更年期症状が現れます。

女性は更年期や閉経を迎える年齢に差し掛かると、心臓病の発症率が急増する傾向がありますが、これには明確な理由があります。

女性において、更年期や閉経が近づく頃に心臓病が急増するのは、エストロゲン(女性ホルモン)が減少するのが原因です。

エストロゲンには、血管を広げる作用や抗酸化作用、コレステロールの代謝をよくする作用など、血管や心臓を守ってくれる働きを担っています。

閉経によってエストロゲンが減少し血管や心臓を守る効果が薄れることで、心臓病の発症率が上がってしまい、特に心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患と呼ばれる心臓病が多くなる傾向があります。

虚血性心疾患が増加する

女性の心臓病の頻度は、男性と違い40歳ごろまでは非常に少ないですが、更年期から急激に増加してきます。

特に、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の発症頻度が増加していくことが知られていて、この背景には、閉経が密接に関係していると考えられます。

なお、女性は男性に比べて女性ホルモンのみならず喫煙による健康被害の悪影響を受けやすく、タバコを吸う女性は、吸わない女性より心筋梗塞になるリスクが8倍高いといわれています。

また、同じ喫煙量でも男性の2倍も肺がんの発症率が高いことが指摘されています。

微小血管狭心症を発症しやすい

微小血管狭心症は、命に関わるほどの病気ではありませんが、狭心症などの診断をわかりにくくしてしまうという点では、気をつけるべき症状です。

微小血管狭心症における患者は更年期女性が多く、胸痛が30分程度続く、運動時・安静時ともに起こる、みぞおちや肩に痛みが出ることもあるなどの特徴があります。

微小血管狭心症は、更年期の女性が発症しやすい病気と紹介されていることが多いですが、実は更年期女性のうち、微小血管狭心症になる人は1割程度と言われています。

微小血管狭心症は完全に治すのが難しい病気です。高血圧や脂質異常症などの動脈硬化の危険因子を抱えている方は、医師の診断のもとで治療や改善を行うことが大切です。

女性の心臓病は気づきにくい?

女性は、狭心症などで心臓に異常がある場合でも、みぞおちや肩などの一見心臓とは関係のないような箇所に痛みを感じることが多く、心臓の病気であることに気づきにくい傾向があります。

特に40代後半〜50代の女性は定期的に健康診断を受けて、自覚のない身体の異常がないかをしっかり確認することが重要です。

まとめ

これまで、突然死の原因に多い心臓突然死と女性における疾患リスクなどを中心に解説してきました。

突然死を防ぐためにも普段から健康診断などを受け、病気のリスク因子の評価を受けることが重要です。

突然死のリスクがある場合には、禁煙や適正な体重コントロール、食事内容の見直し、運動療法、薬剤の使用などでリスク因子への治療介入を行うこともあります。

特に、女性は、閉経を機に身体が大きく変化しますので、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患の発症率が増えてしまうことを念頭に、予防的な行動を心がけることが大切です。

今回の情報が参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

プロフィール

関連記事