金属アレルギーとは?症状の特徴と検査・治療を解説

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ネックレスや指輪などの装飾品をつけたとき、つけたところが赤くなったりかゆくなったりといった経験は無いでしょうか。もしかしたらそれは金属アレルギーの症状かもしれません。ここでは金属アレルギーの特徴を確認し、検査と治療について解説します。

金属アレルギーとは

腕が赤くなり、かゆみに悩む女性

金属アレルギーは様々な金属に接触することによって生じる、アレルギー性の疾患です。特に接触によって皮膚炎が起こってきますから、接触性皮膚炎の一種と考えられています。

金属は身近にあふれていますから、普通に生活することで接触します。金属が原因でアレルギーが起こっているとはなかなか気づかれないこともあり、原因不明の難知性の湿疹が、実は金属アレルギーであったということもあります。

金属アレルギーは比較的よく見られるアレルギーで、日本人のおよそ10人に1人が金属アレルギーを持っていると言われています。 

ではどうして、金属に触れるだけでアレルギーが起こるのでしょうか。多くの場合は金属が汗によって溶けてイオンの状態になります。その金属イオンが、皮膚のタンパク質と結合することで、体が異物と認識し、アレルギー反応が起こってきます。

 そのため、汗をよくかくような夏の時期に症状がひどくなる場合が多いです。 

また、金属アレルギーには全身性金属皮膚炎というものがあります。これは、金属が直接皮膚に触れることで生じるのではなく、口腔内にある金属が唾液によってイオン化し、体内に入ることで起こる接触性皮膚炎のことです。歯の治療などで金属が口の中にある状態の時に起こってくることが多いです。他には粉塵を吸い込んだり、食物で金属を摂取することによって発症することがあります。 

遅延型アレルギーに分類される

金属アレルギーは、遅延型アレルギーに分類されます。どのような機序でアレルギーが起こってくるのでしょうか。

アレルギーを説明する上で、欠かせない言葉があります。感作と誘発です。

金属は、汗に触れるとイオンになって体内に入り込みます。体内のタンパク質と金属は結合し、免疫複合体により異物として記憶されます。そうすることによって免疫細胞は、次に異物が体内に侵入してきた時にすぐに攻撃できるようにします。これを感作と言います。

感作された物質が体内に再び入ってくると、過剰な免疫反応が起こります。一旦金属とタンパク質が結合して新しい物質ができるという反応を経由するので、アレルギーが起こるまでに時間がかかります。そのため、遅延型アレルギーと呼ばれるのです。 

金属アレルギーは、金属に接してから概ね24時間から48時間経過してから症状が出てくることがほとんどです。感作を十分にしてないような初期の場合にはさらに時間がかかり、数日経ってから症状が出てくる場合もあります。 

原因になりやすい金属

金属アレルギーの原因になりやすい金属があります。よくアレルギーを起こすものとして、ニッケル、コバルト、 クロムが挙げられます。

ニッケルは、貴金属やステンレスに含まれます。コバルトは貴金属やメッキに含まれています。クロムは革製品のかぶれの原因であって、メッキやステンレスにも使用されています。いずれも接触の機会が多い金属となります。

その他に反応が出やすい金属としては、水銀やパラジウムなどの頻度が多いとされています。また、その他の金属も含めて、食べ物に含有されることがあります。

例えばニッケルは豆類や様々な野菜、ワイン、タバコなどに含有されているため、気づかずに摂取してしまい全身性の金属アレルギーを起こすことがあります。 

食品に関しては、チョコレートに多くの金属が含まれています。ニッケルやクロム、コバルト、銅、亜鉛など、様々な金属物質が含まれています。ナッツ類やコーヒー、紅茶にも多く含まれているため、金属アレルギーを持っている人はこのような食品に注意する必要があります。

金属アレルギーの症状の特徴

体のかゆみに悩む女性

金属アレルギーでは、どのような症状が起こってくるのでしょうか。 

接触性皮膚炎の症状

ピアスや指輪、ベルトのバックル、メガネのフレーム、服のジッパー、ボタン、財布やバッグのチェーン、金属物質を含む鍋やフライパンなど、様々な金属製品が接触する部位に小さな丘疹や紅斑が出現します。丘疹や紅斑の上には、小さな水疱や、膿疱を伴うこともあります。多くの場合はかゆみを伴い、引っ掻くことによる傷口ができている場合もあります。 

全身型金属アレルギーの症状

全身に現れる金属アレルギーの症状としては、かぶれやかゆみなどを伴うアトピー性皮膚炎、扁平苔癬、皮膚掻痒症などがあります。

さらに全身型金属アレルギーが起こると、皮膚だけではなく、体全体に色々と症状が出てきます。例えば頭痛や肩こり、めまい、疲労感やぼーっとしたような感じの体調不良が続く、物忘れや記憶力の悪化などがあります。

金属アレルギーの検査と治療

処方された塗り薬

金属アレルギーを疑った場合には、検査を行います。

検査のためによく行われるのがパッチテストです。皮膚に金属を貼り付けてしばらく放置して剥がした後、24時間から48時間経過してから観察し、皮膚に異常が出ているかどうかを見るテストです。

金属アレルギーが起こるのと全く同じ環境を再現することによって、アレルギーが起こりやすい状態を作り出して観察します。 

特に歯の詰め物が原因で金属アレルギーが起こっているのではないかと考えられる時には、歯科用金属シリーズパッチテストという検査があります。この検査は、歯の詰め物に使われる金属を網羅したパッチテストです。もしこれで陽性になった場合には、歯の詰め物の表面を削ってその金属のサンプルからアレルギーを起こすものかどうかを分析します。 

金属アレルギーを根本的に治療する方法はありません。症状を起こさないためには、アレルギーの原因となった金属に触れないことが対策になります。特に歯の詰め物が原因でアレルギーが起こっている場合には、詰め物をセラミックやプラスチックなど、アレルゲンフリーの素材を用いたものに交換する治療が行われます。 

現在出ている皮疹に対しては、副腎皮質ステロイドの外用剤を使用することで炎症や痒みなどの症状を抑えることができます。

こうした治療につなげるためにも、何かおかしいと思ったら皮膚科を受診することをおすすめします。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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