すねがつる原因は?糖尿病とこむら返りの意外な関係
こむら返りとは、痛みを伴う筋肉のけいれんのことであり、運動中や運動後、就寝中に起こることが多く、強い痛みを伴い大変苦痛なものです。
こむら返りの原因はいくつも考えられますが、ここでは特に、糖尿病とこむら返りの意外な関係について見てみましょう。
糖尿病でこむら返りになりやすい理由
糖尿病の患者さんがこむら返りになりやすいのには、次に挙げるような理由があります。
糖尿病性神経障害
糖尿病に特徴的な合併症である糖尿病性神経障害は、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症とともに糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
糖尿病性神経障害は高血糖状態が長く続いた結果、全身の神経に障害が起こる合併症です。
高血糖が長く続くことで、神経周囲の血管が傷んだりするだけでなく、神経そのものの性質が変わってしまい、神経の働きを悪くさせてしまうからです。
糖尿病性神経障害は主に2つの障害が発生します。
自律神経障害という形で、胃腸や心臓などの内臓の働きを調節している神経に起こり、代表的な症状としては、立ちくらみ、排尿障害、下痢、便秘、勃起障害などが現れます。
手足の感覚や運動をつかさどる神経に起こる感覚・運動神経障害に関連する症状としては、足のしびれ、冷え、こむら返りなどが現れて、特に全身の神経の中でも足先・足裏から起こりやすいと言われています 。
全身の神経の中でも足先・足裏から感覚・運動神経障害が起こりやすく、何かが足に貼りついているような違和感や、正座をしていないのにしびれる、チクチク細かく刺すような痛みなど、人によってさまざまな症状が現れます。
マグネシウム不足の人が多い
こむら返りに関係するミネラルはカルシウム、カリウム、マグネシウムなどがあります。
カルシウム、カリウムはメディアで取りあげられることも多く関心も高いものですが、比較的知られてなくて大切なのがマグネシウムです。マグネシウムは神経、筋肉の伝達に関与して、不足するとこむら返り症状が起きやすくなります。
マグネシウムを補充すると改善することが知られていますし、さらにマグネシウムが足りないと、神経疾患、精神疾患、不整脈、心疾患、骨粗鬆症などが起こりやすくなります。
インスリン抵抗性の成因のひとつに、マグネシウムの慢性的な摂取不足があり、糖尿病の発症リスクが高まります。
日本人のマグネシウム摂取量は、平均で足りてないと言われており、戦後の日本人において大麦や雑穀などの全粒穀物の摂取が減ったことが原因ともいわれています。
マグネシウムは穀物の糠や胚芽の部分、アーモンドなどのナッツ類、ゴマ、昆布やワカメなどの海藻、海苔などに豊富に含まれています。
動脈硬化の進行
糖尿病に合併する動脈硬化の進行によって、閉塞性動脈硬化症(ASO)という病気を発症する可能性があります。
ASOとは足の動脈硬化性変化により動脈の壁が厚くなり、血管の中が狭くなったり、詰まってしまう疾患です。
足への血液が不足することで手足の冷えや歩行時の足の痛みがおこったり、足にできた傷の治りが悪くなったりします。
最も重症になり足の壊死が進んでいる場合の生命予後は、大腸がんや乳がんと言った主要な悪性腫瘍と比較してもより不良であることがわかっています。
ASOは、特に60歳以上の男性に起こりやすいとされていますが、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙など動脈硬化を起こす原因を抱えた人に合併しやすく、疫学的調査では60歳以上の人のうち700万人前後がASO患者であると推測されています。
特に、歩くと足のしびれやふくらはぎが痛くなる、足のだるさやこむら返りが起こりやすい、足や指の傷が治りにくいなどの特徴がある場合には、ASOの検査をしてみましょう。
他にもある?すねなどの筋肉がつる原因
すねがつる原因は糖尿病だけではありません。代表的な原因には次のものがあります。
脱水
足のつりとは「筋肉の緊張と弛緩のバランスが崩れる状態」のことであり、さまざまな要因でバランスが崩れるのですが、中でも多い原因が水分不足とミネラルの不足です。
ある研究では、体重の2%程度、脱水を起こさせたあとに水分を摂取することで筋肉のけいれんが起こりやすくなったとし、体内の電解質、特にナトリウムと塩化物が薄まると筋肉のけいれんが亢進しやすいと考えられます。
夏にこむら返りを起こしやすい方は、水分だけをとるよりは、塩飴を一緒にとる、あるいは経口補水液に切り替えるなど、適度に電解質をとるようにするとよいでしょう。
日中の筋肉疲労
筋肉がつるという現象は、筋肉にある、伸びたり縮んだりする神経からの命令を受け取るセンサーが誤作動を起こして、筋肉が強く縮んで動かせなくなってしまうことで生じます。
ふくらはぎがつってしまうのを「こむら返り」と言いますが、これは、ふくらはぎのことを「こむら」と呼んでいた名残です。
日中の筋肉疲労に伴って、特に負担がかかりやすい筋肉として、ふくらはぎがつってしまうことが多いのですが、すねやお尻、ふくらはぎ以外の筋肉がつる場合も珍しくありません。
熱中症
熱中症になると、よく「筋肉痛が起こる」、「手足がつる」、「筋肉が痙攣する」という症状が出ますし、熱中症のならないまでも、「暑くなると、よく夜中に足がつる」という訴えをよく耳にします。
なぜ熱中症になると筋肉痛が起こったり、手足がつったりするのかというと、高温多湿の中で、短時間に大量の汗をかいて、水だけを補給した場合に、「筋肉痛」や「手や足の痙攣」、「こむら返り」などの症状が出やすくなるためです。
汗をかくことにより、水分だけでなく、電解質も失われることになり、血液中の塩分(ナトリウムなど)が失われると、太ももや、ふくらはぎ、腕、腹などの筋肉に痛みを伴ったけいれんが起こります。
電解質とは、ヒトの体内の水分に含まれる、ナトリウムやカリウムなどのイオンのことであり、体内に溶け込んでいて、全身の細胞の水分量の調節や筋肉の収縮、神経の伝達などを支えています。
電解質は身体機能の維持に重要なため、汗をかくことで水分とともに大量に失うと、体はそれ以上の電解質の損失を防ぐために発汗を止め、体温上昇にブレーキがかからなくなってしまいます。
そのため、どんなに水分だけを補給しても、電解質を補給しなければ、体は電解質濃度を維持するために、水分を汗や尿として排出してしまいます。
暑いなかで、めまいがする、手足がつる、手足が冷たくなるなどのサインが出たら、熱中症に伴って水分と電解質が失われているかもしれませんので、市販のスポーツドリンクか経口補水液、ミネラルウォーターなどで水分と電解質の両方を摂取しましょう。
椎間板ヘルニア
一般的に、高齢になってくると椎間板の水分が減ってきて、椎間板が潰れてはみ出してしまいますし、年配の方だけではなく、交通事故やスポーツなどでも椎間板が潰れてしまったりします。
椎間板が潰れて、後ろにはみ出してきた状態を椎間板ヘルニアといいます。
椎間板の後方には、太い脊髄神経があり、そこからたくさん枝分かれして体中に走っています。
脊柱管が狭い、あるいは椎間板ヘルニアによって脊髄神経が障害されていたら、足の筋肉に伝達する命令がうまく届かなくなってしまいます。
筋肉が緊張して、過度のテンションや締め付けを解除するメカニズムがうまく働かなくなることによって、足のつりが起こってくると考えられています。
まとめ
これまで、すねがつる原因、糖尿病とこむら返りの関係などを中心に解説してきました。
こむら返りやすねなどの筋肉がつる原因はいろいろあり、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、糖尿病性神経障害や脱水、日中の筋肉疲労や熱中症の初期の症状としても引き起こされます。
このような足の症状がある際には、例えば入浴中にお風呂の中で足をよく動かすということが大事ですし、寝る前には足の指を上に引っ張るようにふくらはぎの部分をよく伸ばしてストレッチするといったセルフケアが効果的です。
心配であれば、整形外科や内科など専門医療機関を受診しましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。