ゼンマイを食べて得られる効果、効能とは
▼利尿、整腸、貧血
雪国の早春はまだ寒いです。だけど確かな芽吹きが訪れます。ゼンマイも春を告げる山菜です。「乾く岩濡るる岩ぜんまいあまた萌ゆ」(日郎)という句のように湿り気のある山野を好み、大きな群落となります。新芽の先が「の」の字形に渦巻き薄茶色の綿毛をかぶっていますが、若葉が開かないうちに採って食用にしてきました。アク抜きをして日干しにしたものを保存食に使います。
ゼンマイとは
ゼンマイは羊歯類に属するゼンマイ科の多年草です。形も味もワラビに似ていますが、明るい野原や焼けた山腹を好むウラボシ科のワラビとは対照的です。綿毛を脱ぐと若葉が開いて羊歯らしくなっていきます。そうなってしまっては食べられません。若い芽が銭のように円く渦巻いているので「銭巻き」と呼ばれたのが語源とも言われています。干しゼンマイの産地は東北や四国地方に多いです。
ゼンマイの効果、効能
山菜の中でもポピュラーなゼンマイは、干したり水煮の形で売られています。アクが強すぎて生では食べられないからです。茹でるとき少量の重曹を加えるとアクが抜けますが、茹でたあと流水にさらすと食べやすくなります。天日に干したゼンマイは生にくらべてビタミンA、Cなどが減るものの、蛋白質とカリウムの含有量は増えるから血圧の安定やむくみによいです。
生のゼンマイにはビタミンB群の1つである葉酸が豊かで、貧血の民間薬といわれるほどです。さらに抗酸化力と免疫力を高めるビタミンAやCも含んでいるから、幅広い病気の予防に役立ちます。不溶性の食物繊維は便の量を増やして腸を活発にし、有害物質を排出してくれる効果もあるから、腸の掃除をする役割もあるわけです。ただ都会で生のゼンマイを求めるのは無理です。干しゼンマイで我慢するしかないようです。
また調理のとき注意すべきことがあります。ゼンマイにはワラビの場合と同じように、ビタミンB1を分解するアノイリナーゼという酵素を含んでいるから、豚肉などといっしょに調理しないよう心がけることです。むしろ油を使うことで脂溶性のビタミンAも効率よく吸収できるから、ゼンマイを油揚とコンニャクで炒めた煮物などは理にかなっているでしょう。これだと整腸作用も期待できます。
民間療法など
ゼンマイは古くから食べられてきた山菜だけに民間療法も多いです。腰痛や膝の痛みには乾燥させたゼンマイの煎じ液を飲むとよく、その煎じ液は子どもの虫下しにもなると山村に伝えられています。ゴマ油と甘草を加えたゼンマイの煎じ液を飲むと腹痛に効くともいいあますが、体験から得た知恵でしょうか。
わたしは子どものころ、よく山菜採りに行きました。「ぜんまいは綿をかむりて遅日かな」とか、「ぜんまいや松風ただに聴くばかり」などの句に出会うと、馴れ親しんだ生れ故郷の山河がよみがえってきます。山菜の味には栄養価を超えた特別な付加価値があるような気がしてなりません。