甘草の服用で血圧が上がる!?関係性と副作用を解説
甘草は抗炎症作用や解毒作用、去痰作用など幅広い効能を持つことで知られる生薬で、漢方薬だけでなく西洋薬、健康食品、食品添加物、化粧品など様々な分野で利用されています。しかし、実は自分の知らないところで血圧をあげる原因の一つになっているかもしれません。
今回はその甘草と血圧の関係について解説していきたいと思います。
目次
甘草と血圧の関係
甘草は、古来より世界各地で使用されている生薬です。身近な漢方薬では葛根湯に配合され、また風邪薬や胃腸薬などの市販薬、さらに甘草エキス成分や抽出物は健康食品や食品の甘味料として醤油や菓子類などにも幅広く利用されています。
血圧が上がる原因は色々ありますが、実は甘草が血圧上昇と関係があることはよく知られています。どの薬にも副作用は付きものですが、甘草にはその症状の一つとして血圧が上がる”偽アルドステロン症”という副作用が起こるこ可能性があるのです。しかし、必ず起こるわけではなく、服用量が増えると発症する傾向が高くなります。ただし個人差が大きく、人によっては少量でも起こることもあり、また既往歴、併用薬など様々な要因が影響してきますので、量に関わらず何かいつもと違うなと感じたら早めに医師や薬剤師に相談しましょう。
副作用を理解したうえで漢方薬を服用することは、とても重要なのです。
血圧が上昇する理由は『グリチルレチン酸』
甘草には主要成分であるグリチルリチンが含まれています。このグリチルリチンは腸内で代謝されてグリチルレチン酸に変わり、吸収されて効果を示します。グリチルレチン酸が体内で増えると、コルチゾールというホルモンが増加して抗炎症作用などが発揮されます。またこの増加したコルチゾールは、腎臓に作用して体内に食塩(ナトリウム)と水をため込み、カリウムを排泄させるアルドステロンというホルモンの受容体に働いて、血圧上昇やカリウムの減少(低カリウム血症)、むくみ等を引き起こす原因になります。
血圧は日々の体調変化や心理的影響など、その時のコンディションによっても変動するものですが、服用後に少しでも血圧上昇やむくみなどの異常を感じたら、医師の診察を受けることをおすすめします。副作用も早めの発見、適切な治療がポイントになってきます。
注意するべき甘草の飲み合わせと服用量
漢方薬も飲み合わせや服用量に注意する必要があります。特に甘草は多くの漢方薬に含まれていることから、甘草を含む漢方薬を2種類以上併用する場合は、甘草の含有量に注意を払う必要があります。また漢方薬だけでなく、病院で処方される医療用医薬品や薬局などで購入できる風邪薬などの市販薬との飲み合わせにも気を付けなければなりません。
甘草はカリウムを体外に排泄させ、低カリウム血症を引き起こします。病院で処方される医薬品にもカリウムを体外に排泄させるものがあるので、それらを併用する場合も低カリウム血症に注意しなければなりません。(低カリウム血症の症状:四肢の脱力感、浮腫、呼吸困難、筋肉痛、筋力低下、動悸など)
医師による処方や薬剤師などの専門家の指導のもとで漢方薬を服用している場合は心配ありませんが、ご自身の判断で漢方薬を購入する際には飲み合わせや服用量、服用期間に注意しましょう。
甘草が多く含まれている漢方薬は『甘草湯』
甘草の含有量が1番多いのは「甘草湯」です。その名の通り甘草しか含まれていない漢方薬です。甘草湯には「8g」もの甘草が含まれており、特に続けて服用する場合は注意が必要となります。次に多いのは「芍薬甘草湯」で、こむら返りによく使用されます。これもその名の示す通り「甘草」と「芍薬」の2種類からなります。芍薬甘草湯には甘草が「6g」含まれています。次に多いのが甘麦大棗湯で、「5g」含まれています。
以下の処方には「3g」含まれています。
- 「桔梗湯」
- 「黄蓮湯」
- 「桂枝人参湯」
- 「人参湯」
- 「五淋散」
- 「小青竜湯」
- 「芎帰膠艾湯」
- 「炙甘草湯」
以下の処方には「2.5g」含まれています。
- 「半夏瀉心湯」
漢方薬の名称に「甘草」と記載されてなくても安心はできません。なぜなら漢方薬の約7割以上に甘草が含まれているからです。また上記のものは甘草の含有量が多い方剤ですが、少ない量でも副作用は起こり得るため、いつもと違う症状に気づいたら早めに医師や薬剤師に相談してください。また甘草は、漢方薬以外にも食品などの甘味料としても使用されているため、知らないうちに多量に摂取している可能性にも要注意です。
副作用が現れたらすぐ相談!
副作用と思われる症状が現れたら、自己判断せず必ず医師や薬剤師に相談しましょう。副作用が現れた際に速やかに対処するためにも、正しい知識を身に付けることが大切です。
甘草の副作用を把握して正しく服用しよう!
以上のように、漢方薬に配合されている甘草は生薬の中でも適用範囲は幅広く、漢方薬以外にも多くの製品に利用されています。一方、甘草による副作用は漢方薬の中ではよく知られたもの内の一つです。そのためこうした副作用を日頃からご自身で把握するように心掛け、正しく服用することによって体の様々な不調に役立てていくようにしましょう。