大黄を含む漢方薬はどんな効能があるの?便秘治療に使われる大黄とは

漢方事典

漢方の下剤として知られる「大黄」は便秘の「将軍」とも呼ばれるほど、便秘の治療においては中心的な存在の生薬成分です。大黄が含まれる漢方薬にはいくつかの種類があり、体質や症状によって使い分けることが大切です。そこで今回は大黄の効能と大黄を含む漢方薬について紹介していきます。

大黄とはどんな生薬?

大黄とは、タデ科のダイオウ属植物の根および根茎を乾燥したものです。

大黄は大腸を刺激することで腸のぜん動運動を促します。腸を刺激して排便を促すということで、効果が得られる確実性が高いことから漢方の便秘薬に多く用いられています。

他にも、消炎、健胃、血の巡りをよくする駆瘀血作用があります。

その主成分は便秘によく使用される植物のセンナにも含まれるセンノシドであり、腸内細菌によりレインアンスロンに変換されて効果が発揮されます。腸内細菌は個人により異なるため、効果の違いに個人差が現れることがあります。レインアンスロンを成分のまま胃に入れてしまうと強い胃痛を引き起こしますが、腸に入ってから活性体へと変化するためセンノシドは胃を刺激することなく服用できます。

大黄が便秘の将軍とも言われる理由は?

大黄は他の生薬と組み合わさって、非常に高い効果をもたらします。他にも下剤として、センナ、アロエなどがあり、古くから中国でも用いられてきましたが、食事が欧米化して変化したり、運動不足、ストレスなどによる便秘に悩む人が増える中、優れた緩下剤としての顔を持つ「大黄」に注目が集まるようになってきたのです。

さらに、他の下剤では効果が得られなかった場合にも大黄を使用することで解消できる場合も多く、虚証や実証などの体質によらず効果が得られるため使いやすい生薬でもあります。

大黄を配合している漢方薬

大黄を含む便秘に使われる漢方薬にはたくさんの種類があります。同じ大黄を含んでいても、他の生薬との組み合わせで効果も変われば、適した体質も異なります。それぞれの処方の特徴を理解しておきましょう。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

大黄配合の漢方薬として最も有名と思われるのが、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)です。配合生薬が大黄と甘草だけという非常にシンプルな処方であり、即効性が高いことが特徴です。大黄が腸の運動を促して、甘草が腸の調子を整え、大黄の効きすぎによる副作用を緩和しています。体力に関わらず使える漢方薬です。

桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)

体力は虚証から中間証程度の人で、腹部膨満感、しぶり腹、腹痛などがある人に用いられる漢方薬です。

麻子仁丸(ましにんがん)

腸の潤滑油のように油分を補う麻子仁が主成分ですが、大黄も含まれています。便が硬くコロコロの兎の糞状になる人に適した漢方薬です。高齢者の腸内の乾燥による便秘にも用いられます。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

がっちりした体格の元気な人向けの処方で、イライラして精神が不安定になりやすく、のぼせ、便秘、生理不順などがある人に適した漢方薬です。

潤腸湯(じゅんちょうとう)

虚証から中間証の人向けの処方で、便が乾燥して硬くなりやすい便秘に適した漢方薬です。

大柴胡湯(だいさいことう)

体力が充実しているタイプの人の慢性の便秘、肩こりなどの改善に適した漢方薬です。脇腹からみぞおちにかけての張りが強い人に向いています。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

体力のあるがっちりタイプの人で、お腹周りに脂肪がつきやすい人、便秘がちで高血圧ぎみの場合に適した漢方薬です。

同じように大黄が含まれていても、体質や便秘以外に併せ持っている症状によって適した漢方薬は異なります。なかなか便秘が改善しなくて悩んでいるならば、まずはよく自分の体質を見極めて適した漢方薬を見つけることが大切です。

効果が良いからといって使いすぎには要注意!

大黄配合の漢方薬は大腸の刺激作用が強いので、スッキリ感が得られやすく、つい使いすぎてしまう人もいます。しかし、本来は自分の排便リズムを取り戻すことが大切です。漢方を飲み続けると次第に便秘しにくい体質に変わっていくので、排便リズムを作るための補助として取り入れていくと良いでしょう。

大黄甘草湯のように大黄の副作用を他の生薬と組み合わせることで和らげている場合であっても、使いすぎにより下痢や腹痛を引き起こすことがあります。また、ダイオウやセンナを使い続けることで大腸の中が黒くなってしまう「大腸メラノーシス」を引き起こすことも報告されているので注意しましょう。

大黄配合の漢方を適切に使ってスッキリしよう!

大黄配合の漢方薬は非常に優れた緩下作用をもつため、最初は少量ずつ服用を始めることをおすすめします。自分の排便の状態を見ながら用量を調整するようにしましょう。また、よく効くからといって漢方薬ばかりに頼りきりになるのではなく、食生活を見直し、運動を取り入れるなどの生活習慣の改善も行うようにしましょう。

万が一、大黄を配合した漢方薬を使っても排便がない場合には、速やかに病院を受診して大腸検査などを受けることをおすすめします。

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