漢方薬のメーカーはどこがいい?各漢方メーカーの違いを解説!
「漢方薬」と言えば、皆さんどこのメーカーを最初に思い浮かべますか?
比較的有名なのはCMでもお馴染みの「ツムラ」「クラシエ」あたりかと思いますが、実は、漢方のメーカーはそれだけではないんです。
今回は、日本で販売されている漢方薬のメーカーについての違いを比較してみたいと思います。
目次
ツムラ
ツムラは、日本の漢方市場のうち8割以上を占める最大手メーカーです。おそらく、皆さんが一番最初に思い浮かべるのは、このメーカーではないでしょうか。
創業したのは、今から100年以上も前の明治26年です。当時は、西洋医学が中心に据えられ、それまで主流だった漢方医学は排斥の危機に瀕していました。そのような中で、創業者となる津村重吉は、漢方の復権に情熱を注ぎ、現在のツムラを創業しました。今日では、ツムラは漢方製剤を扱うメーカーとしてトップのシェアを誇り、日本で最も多い漢方製剤のラインナップを取り揃えています。
剤型の特徴は、荒い粉状の顆粒です。
クラシエ
日本の漢方市場では、ツムラに次いで2番目のシェアを誇っています。ただし、処方せんがなくても、お客様自身が薬局やドラックストアで購入できるOTC(Over The Counter)と呼ばれる一般用漢方製剤のシェアでは、日本一です。
より漢方薬を身近に感じられるよう、飲みやすさや使いやすさを追求したり、わかりやすい記載や商品デザインを施し、自分の体質や症状で選ぶことができるよう工夫されています。「漢方薬は難しくてよくわらない」というこれまでの漢方薬の概念からの脱却を目指し、誰でも気軽に利用できる位置づけとなるような取り組みを行っているメーカーです。
また、クラシエは、同じ漢方薬でも1日3回服用するタイプと、1日2回服用するタイプの2種類を取り揃えていることも特徴です。日中は、お仕事や外出などで服用することが難しかったり、飲み忘れてしまうことが多いというような、より現代人向けに設計された漢方薬と言えるでしょう。
剤型の特徴は、細かい粉状です。
コタロー
正式な会社名は「小太郎漢方製薬株式会社」です。あまり聞きなれないかもしれませんが、このメーカーも歴史ある漢方薬メーカーの一つです。
実は、古来から伝わる漢方薬を手軽に服用できるよう日本で初めて「エキス剤」を製造し、販売したメーカーです。漢方薬独特の飲みづらさを改良した、錠剤やカプセル剤も商品ラインナップとして揃えており、漢方薬が苦手な方でも服用しやすい剤型となっているのは、お客様にとって嬉しい限りでしょう。
それぞれのメーカー、どこがいい?
漢方薬は同じ処方名のものであっても、メーカーによって剤型や生薬成分の配合比、用法・用量が異なることがあります。
しかし、いずれの3社も製剤過程に大差はなく、厳しく管理された工場で、品質の均一化も徹底され製造されています。そのため、どのメーカーが良いということはなく、こうした違いを考慮し、ライフスタイルや飲みやすさ・飲み心地、味など、お一人お一人に合ったものを選択することが大切になります。
例えば、漢方薬のラインアップが豊富なメーカーは断然ツムラです。そのため、医師から処方される漢方処方も、ツムラのものが圧倒的に多く、日頃から使い慣れているツムラを選択されるケースが多いかもしれません。
一方、「多忙で1日3回の服用は面倒」「服用回数が多いと飲み忘れてしまう」といった悩みを抱えていらっしゃる方は、1日2回タイプのものを取り揃えているクラシエを、また、カプセルをご希望ということであれば、コタローを選択するなど、患者それぞれのニーズに合ったものをご利用いただくとよいでしょう。
同じ漢方薬でもメーカーによって量が異なる
一般の方にはあまり知られていませんが、実は同じ漢方薬でも構成される生薬の量が異なる場合があることは上述しました。
次に、その具体例をご紹介しましょう。風邪薬として有名な葛根湯について、各メーカーによる構成生薬の配合比率を比べてみます。
ツムラ葛根湯エキス顆粒
本品中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する
- 日局カッコン 4.0g
- 日局タイソウ 3.0g
- 日局マオウ 3.0g
- 日局カンゾウ 2.0g
- 日局ケイヒ 2.0g
- 日局シャクヤク 2.0g
- 日局ショウキョウ 2.0g
クラシエ葛根湯エキス顆粒
本薬1日量(7.5g)中
- 日局カッコン 8.0g
- 日局タイソウ 4.0g
- 日局マオウ 4.0g
- 日局カンゾウ 2.0g
- 日局ケイヒ 3.0g
- 日局シャクヤク 3.0g
- 日局ショウキョウ 1.0g
上記の混合生薬より抽出した、日局葛根湯エキス5200mgを含有する
コタロー葛根湯エキス細粒
本剤7.5g中
- 日局カッコン 4.0g
- 日局タイソウ 3.0g
- 日局マオウ 4.0g
- 日局カンゾウ 2.0g
- 日局ケイヒ 2.0g
- 日局シャクヤク 2.0g
- 日局ショウキョウ 1.0g
上記の混合生薬より抽出した葛根湯の水製乾燥エキス4.8gを含有する
3社の各生薬の配合量を比較してみると、例えば、主成分の葛根は、ツムラとコタローの場合はいずれも4.0gと同じ量ですが、クラシエは 8.0gと2倍量含まれています。また、それ以外の生薬についても、各社によって含有量が若干異なっていることがおわかりいただけるかと思います。
なぜ構成する成分の量が異なるのか?
では、なぜ各社によって構成する成分の量が異なるのかという点について、簡単に触れておきます。
漢方薬に配合する生薬の種類と分量は、「日本薬局方」において厳密に定められています。例えば、「日本薬局方」で定める葛根湯には、全部で4種類の処方パターンが認められているため、この4種類のうちのどの処方に基づいた処方であるかによって、含有される生薬の配合量が異なってくるのです。
ただし、「配合される生薬が多いから効果がある!」といったような治療効果への影響は、それほどないと言われています。また、漢方薬は、患者それぞれの体質などを考慮して処方されるため、量が多いから良いとは一概には言えず、逆に多いと副作用の可能性も出てくるでしょう。
まとめ
漢方薬メーカーそれぞれの特徴や違いについて、おわかりいただけましたか?
今回は、比較的流通量の多い3つのメーカーを例にあげましたが、そのほかにも「オースギ」「テイコク」「JPS」などがあります。どのメーカーの漢方薬も、「日本薬局方」の基準を満たした処方構成となっていますので、ご安心ください。ただし、同じ処方名のものでも、メーカーによって飲み心地や味などが違うこともあるため、服用してみて飲みにくかったり、味が苦手だと感じた場合は、他のメーカーのものを検討してみるのもよいでしょう。
漢方薬は、患者の体質や体調、季節などを考慮して処方され、効果も人それぞれです。そのため、ご自分の体質や生活バターン、好みにあった漢方薬を選ぶことが大切になります。漢方薬の選択に迷われた場合は、漢方専門の医師や薬剤師に相談してみましょう。