胃弱体質の人に効果的な16種類の漢方薬と選び方について

消化器症状

胃弱体質は神経質な人に多いです

胃弱という場合には、ふつう胃アトニーをさします。これは胃の筋肉に緊張がなく、だらりとしている状態で、食物がはいると、その重みで胃がたれさがってしまうので、胃無力症ともいいます。

あるいは、胃下垂症の人に、胃アトニーや慢性胃炎がからんでいても、胃弱になりやすいです。

また、慢性胃炎の人も、つねに消化器症状を訴えるので、胃弱という分類にはいるでしょう。

胃弱体質の人の症状

胃アトニーの症状

食欲不振・おくび・げっぷなどだが、実際にはエックス線で検査してみないと、はっきりしたことはわかりません。

ただ、これは病気とはいえず、やはり体質と考えたほうがよさそうです。どちらかといえば、やせた神経質な人に多く、胃はとくに神経作用に影響されやすいだけに、どうしても慢性的になりがちです。とくに、無力性のアトニーでは、からだを動かすと、ポチャポチャという振水音が胃から聞こえます。これはたるんでいる胃の中に、空気・胃液・食物がたまっていて、ゆれ動くための音です。振水音があれば、一度医師にみてもらったほうがよいです。

胃下垂症の症状

胃下垂は、胃袋が長くたれさがった状態で、これも病気とはいえません。ただ、病的な状態の人では、重くるしさや痛みを訴えることがあります。痛みは食事後に起きやすいです。便秘することも多いです。

これもほとんどが体質的なもので、先天性のものです。ところが、近ごろでは、タクシーやトラックの運転手の胃下垂症が、職業病として問題になっています。これは食後すぐに運転すると、食物の重みが自動車の動揺によって必要以上に胃の筋肉に拡張伸展を強いるからだと考えられています。

慢性胃炎の症状

胃が重い、食欲がない、胃に鈍痛がある、疲れた感じがする、口の中・のどが苦い、あるいは違和感がある、口が臭い、げっぷが出る、吐きけがある、便秘する、あるいは下痢する、舌が白か褐色で苔が出るといった訴えがありますが、ときには自覚症状がないこともあります。

正確に慢性胃炎の診断をくだすには、エックス線検査ではわからず、内視鏡と胃生検を行わなければなりません。といっても、胃症状を訴える人のすべてに、胃カメラを実施するわけにはいかないから、不明の場合も多いです。

急性胃炎から移行することもありますが、ふつうは少しずつ進行するようです。つまり、長期にわたる暴飲暴食・不規則な食生活・運動不足などがからんでいます。ただ、多くの場合、栄養の不足・体質・アレルギーなどとも無縁ではないです。

漢方はすべて虚証・水毒による

胃弱体質を、溜飲(りゅういん)(胸がつかえる)・痰飲(たんいん)(胃内停水)・飲癖(いんへき)(胃内停水の慢性化)・停飲(ていいん)(胃内停水で振水音がある)・澼囊(へきのう)(胃アトニー)などと分類し、水毒(前述参照)によるものとします。当然、処方は利水剤です。いずれにしても、虚証タイプの人で、実証の人にはありえません。

胃弱体質の人に効果的な漢方薬

平胃散

胃無力症の軽いもので、みぞおちがつかえて膨満感がある人に一般的に用います。

六君子湯

血色がわるく、食後に眠くだるくなり、頭痛・めまいがあり、脈にも腹壁にも力がない人に用います。

半夏白朮天麻湯

上の症状で、とくに頭痛・めまいがひどく、足が冷える人によく用いられます。

苓桂朮甘湯

腹に力はあるが、胃がふくれ、めまい・動悸があり、尿の出がわるいという人に。上の二つの処方名に含まれている白朮や朮は、植物名でオケラの根です。健胃・鎮痛・利尿の効があり、とくに水毒を去る生薬として知られます。

茯苓飲

腹に力があって、体力は中程度かそれ以下で、胃の停滞感と振水音が顕著なときに。処方名の茯苓は、マツホドというキノコの一種の菌核で、これもまた有名な利水剤です。

小建中湯

腹痛を起こしやすく、疲れやすくて顔色がわるく、手足がほてり、心悸亢進(しんきこうしん)ある人に。

半夏厚朴湯

不安感などの神経症状が強く、頭が重い、不眠、腹壁がゆるんでいる胃下垂に。

加味逍遙散

不定愁訴があり、頭重・めまい・動悸・便秘・生理不順がある胃下垂の人に。

補中益気湯

元気がなく、食欲もなく、手足が冷える人に用いる。あまりにも虚弱な人には不可です。

桂枝加芍薬湯

腹部に振水音があり、ガスが充満して腹満はあるが、腹部に充実感はない人に。

真武湯

食欲がなく、手足が冷えやすく、下痢・胃内停水があり、衰弱ぎみの人に用います。

附子人参湯

血色がわるく、食欲がない、少し食べても満腹してしまう、冷える傾向がある人に。

半夏瀉心湯

みぞおちがつかえてかたく、食欲不振、軽い胃痛、気持ちがわるい、下痢するものに一般的に。処方名の瀉心の「心(しん)」は心下でみぞおちのこと、「瀉(しゃ)」は補の反対で取り去るの意。

生姜瀉心湯

上の症状で、げっぷが強い人に。

柴胡桂枝湯

胃腸薬としてよく使われる。とくに胃痛があり、肋骨の下を押すと抵抗がある人に。

旋覆花代赭石湯

慢性胃炎で、胃痛はかるく、体力衰え、腹力が弱く、おくびの強い人に。

胃に負担をかけない食事を工夫する

胃弱な人は、コーヒー・コーラ・お茶など、あまり水分をとらないほうがよいです。また胃に負担をかけないために、高カロリーで消化のよいものを工夫し、少量をよくかんで食べます。水分の多いものはよくないから、おかゆなどは厳禁です。

こういう人は「胃がそこにあることをいつも気にしている」ものです。ただでさえ神経質な人が、慢性的な症状によって、その神経はさらに自分の胃に集中してしまいます。したがって、不安・不眠などを避け、精神を安定するようにしたいです。

民間療法

梅干し一個、ヒネショウガ(生姜)のおろしたもの少々に熱い番茶をそそぎ、よくかきまぜ、冷めたものを飲みます。梅肉エキスでもよいです。

タンポポ(蒲公英)も健胃剤である。根なら一五グラム、葉なら三〇グラムを一日量とし、煎じて飲みつづけるのも効果があります。

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