家族の水虫にご用心!夫の水虫のせいで突然「手の水虫」に…
冬の乾燥する時期でもないのに手も足もガサガサする。手のひらに湿疹のような水ぶくれができてしまってどんどんひどくなる…。こういった症状がある場合は「手の水虫」かもしれません。
こうした自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「手の水虫」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
手湿疹かと思いきや「手の水虫」…。再発を予防するにはどうすれば?
優希さん(47歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。
先日、夫のせいでとんでもない目にあったんです。実は私、手の水虫の治療をしているところなのです。足に水虫ができるならまだわかりますが、手にも水虫ができるなんて、生まれてこのかた全然知りませんでした。
もともと炊事に洗濯にと水仕事も多く、主婦湿疹なども経験済みですが、今回はなんだかやけに熱をもったように手のひらがフツフツとかゆく、保湿しても湿疹が一向に治らなかったんです。
ほとほと困り果てて皮膚科に行ったら、先生が大真面目な顔で「手の水虫になっていますね」なんていうじゃありませんか。
最初は冗談かと思いましたが、なんでも家族の中に水虫に感染している人がいると、その家族の触れたものやタオル、バスマットなどからも感染してしまうらしいんです。私自身はほとんど家にいますし、温泉にもトレーニングジムにも行きません。水虫と急に言われても身に覚えがないので、夫に確認したのですが…。
なんと「足に水虫できちゃったからいま薬塗ってるんだよ〜。最近はいい薬があるね!」なんて言うんです。洗濯だってスリッパの整頓だって私がしているんだから、一言くらい伝えてくれればいいものを…。本当にひどいですよね。
いくら自分が水虫に感染しやすい環境にいないとしても、こんなこともあるんだなって思いました。今後、いつまたこんなことがあるとも限りませんから、予防法や対処法があればぜひ教えて頂けないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
手の水虫は、湿疹や手荒れなどと勘違いして間違ったセルフケアをしてしまうことも多いんです。違和感を感じた際に皮膚科に行く判断をされたことは良かったと思います。
今回は、手の水虫の原因や予防・改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
白癬菌に感染した部位を触ることが手の水虫の原因に
手の水虫は正式には「手白癬(てはくせん)」といい、白癬菌というカビの一種が皮膚の角質層に感染することが原因になります。手の水虫になる方の多くは、足などの他の部位に白癬菌の感染がみられることが多く、患部に手指で触れることによって手にも白癬菌が付着し、感染している可能性が考えられます。
手に水虫ができると手のひらがガサガサと乾燥したようになったり小さな水泡ができることがありますが、かゆみが出ることは少ないため、手湿疹などの症状とも見間違えやすいので注意が必要です。
進行すると皮膚が厚くなり皮がむけたり、爪にまで感染が進んで「爪白癬」という爪の水虫になってしまうこともあります。
手の水虫は市販薬の塗布でも改善が期待できますが、爪の水虫は市販薬では治療できないため、皮膚科を受診して治療する必要があります。
東洋医学では、体の余分な「熱」を取り除いて症状を緩和したり、体を潤して栄養を与える漢方薬で免疫力を高めることが手の水虫への対処法とされています。
次の章では、このような「手の水虫」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
手の水虫の予防&対策のためのセルフケア3選
1.こまめな手洗いで感染予防をする
手に白癬菌が感染してしまった方の多くは、足にも白癬菌が感染して水虫になっていることが多いため、まずは感染しやすい足の感染予防やケアをきちんと行い、対策することが大切です。
温泉やトレーニングジム、プールなど多数の人が出入りする場所の公共の履物やマットなどには、足に感染している白癬菌がついている可能性が高いと言えます。それらをむやみに手で触れることは避けましょう。
しかし仮に白癬菌の付着したものに触れても、すぐに手に感染してしまうわけではありません。手を洗い、付着した菌を洗い流すことで感染を防ぐことは可能ですので、こまめな手洗いで手指を清潔に保つようにしましょう。
2.感染者との備品の共用を避けましょう
自分が白癬菌に感染していなくても、家族や一緒に過ごしている人が水虫にかかっている場合、感染者の皮膚からはがれ落ちる角質の中に棲息している白癬菌に感染してしまうことがあります。
家族や同居者が白癬菌に感染している場合は、バスマットやタオル、スリッパなどをしっかり区別し、共用しないことが大切です。
また、白癬菌が手に付着しただけで、すぐに水虫になるわけではありませんが、手指にアカギレ、ささくれなどの傷がある場合、傷ついた角質から菌が繁殖しやすくなってしまいます。日頃から手指のケアを行い、手荒れや傷がある場合は早めに治療しておくようにしましょう。
3.白癬菌の感染が明確な場合は抗真菌剤の塗布を
手の水虫は、他の原因での手荒れや湿疹などと症状が似ているため、症状があってもすぐには見分けがつきにくいことがあります。
白癬菌の感染による水虫であれば、抗真菌剤を塗布することで改善することができますが、手湿疹やアトピーによる肌荒れと勘違いしてステロイドの含まれる外用薬などを塗布してしまうと、むしろ症状を悪化させてしまう可能性があります。
症状が白癬菌の感染によるものだと明確にわかっている場合は、市販の抗真菌剤を塗布するのも良いですが、いつもとは違う症状や皮膚の違和感を感じたり、初めての症状だと感じる場合には、自己判断は禁物です。皮膚科を受診し、適切な治療薬の処方をしてもらうようにしましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
手の水虫を改善するために、病院での治療や市販薬の塗布などの選択肢に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、十味排毒湯(ジュウミハイドクトウ)です。炎症の熱やかゆみを発散させ、ジクジクした患部の膿を排出して症状を改善する効果があります。
また、患部に激しい熱感や痛みのある方には、「熱」を冷まして発散させ、炎症を抑え、患部の余分な水分を排出する竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)も良いでしょう。
一方、患部が乾燥して熱を伴ってかゆい場合には、温清飲(ウンセイイン)がオススメです。
こまめな手洗いで白癬菌の付着と感染を避けましょう
今回は、手の水虫に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
白癬菌の手への感染を防ぐためには、菌が付着する可能性のあるものへの接触をなるべく避け、こまめに手洗いをすることや、身近に感染者がいる場合は備品の共用をしないことも大切です。少しでもただの手荒れや乾燥による症状とは違う違和感を感じたら皮膚科で診断を受けるようにしましょう。
また、こうした気になる水虫の症状改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。