胆石の原因とは?なりやすい人の特徴と予防法

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食生活の欧米化に伴って、近年では胆石の患者数が増加していると指摘されています。特に肥満体形で脂質異常症を罹患している方や、女性の発症率が高い傾向があります。

ここでは胆石になりやすい人の特徴や予防法について解説します。

胆石の原因

胆石とは、胆道や胆嚢に結石が形成される病気の総称であり、胆石は胆汁内に含まれているコレステロールやビリルビンなどの代謝成分が結晶化して固まることによって作られます。

胆石が形成されるとみぞおち周辺に痛みを感じる人もいれば、ほとんど無症状で経過する方もいらっしゃいます。

胆石に罹患する割合は食生活の欧米化や高齢化などの要因によって増加傾向にあり、頻度はおよそ10人に1人(約10%)といわれています。

胆石の原因は、肥満体形、日常レベルにおける過食などの不規則な食生活習慣、過労やストレスなどさまざまな因子が影響しています。

胆汁内部の成分は、胆汁酸やコレステロール、ビリルビンを始めとする胆汁色素で構成されていますが、これらの成分バランスが破綻すると、胆石が形成されると考えられています。

特に、コレステロールから作られる胆石に関しては、胆汁内部のコレステロール濃度が上昇することで発症しやすくなりますし、ビリルビンカルシウム石の場合には胆道領域における細菌感染によって発症します。

胆石になりやすい人の特徴

胆石になりやすい人にはいくつもの特徴があります。

食事の量が多い人

一度に多くの食事を摂取すると体は自然とそれらの食べ物を消化するために胆汁をたくさん分泌放出します。

胆汁が限られた通り道である胆道において一挙に大量に流れ出ることで、胆汁そのものが停滞してつまりやすい状況となり、胆のうや胆管に負担がかかって胆石が形成されやすいと考えられています。

したがって、普段の食生活では一度に大量に食べ物を摂取することを控えて、ゆっくりと食べて腹八分目にしておくことが望ましいと考えられます。

食事を抜くことが多い人

例えば、朝食や昼食を普段からあまり食べないといった不規則な食生活を送っている場合には、規則正しく食事をしていないことによって胆汁が濃縮されることが多くなり胆石が出来やすい原因となります。

胆汁成分が濃厚になると相対的に水分が減って胆汁内のコレステロール成分が結晶化しやすい環境になります。

また、食事間が長く空きすぎると、一定間隔後の食事の際に通常以上に胆汁を合成しなければならず、胆嚢などに負担がかかることになるので、日常的に食事を抜かないように心がけて、ある程度決まった時間に食事を取るように意識しましょう。

肥満や脂質異常症の人

肥満は胆石のリスク因子として有名です。また、肥満の方が無理して過度なダイエットを行うと胆石を形成するリスクを上昇させることが指摘されています。日常レベルで適度な食生活と運動習慣を心がけることが大切です。

血中のコレステロール濃度や中性脂肪値が高い脂質異常症を抱えた人の場合には、それだけ健常者よりも胆石の元となる材料成分が体内にあふれている状態であるとも考えられます。

特に、胆石の材料となる胆汁内部にはコレステロール成分が含まれていることからも、常日頃からジャンクフードや揚げ物など脂肪分が多い食事を過剰に摂取しているケースでは胆石が溜まりやすくなります。

お酒をたくさん飲む人

適度なアルコールの飲酒自体は虚血性心疾患や脳梗塞のみならず胆石発症リスクをも軽減させる効果があるといわれていますが、過剰にアルコールを摂取すると逆に胆石が形成されやすくすると指摘されています。

大量の飲酒は脂質異常症や肥満体形を招くことからも、それらに関連するコレステロール胆石が出来やすいと考えられます。

アルコールそのものが、胆汁の内部濃度を濃縮してしまうことに繋がるため、普段から飲み過ぎには注意しましょう。

女性

女性は40歳以降になると、女性ホルモンが減少して、それと同時にコレステロール代謝が悪化して肥満傾向に陥り、胆石ができやすくなる心配があります。

コレステロール成分が女性ホルモンの材料になっているため、中年期以降に女性ホルモンの産生量が減ってしまうことで血中のコレステロール値が増加しやすくなることで、胆石が形成されやすくなります。

また、多産経験や経口避妊薬服用なども胆石を生成するリスク要素と考えられています。

胆石の予防方法

胆石の予防方法を紹介します。

適度に運動する

デスクワークなどで一日中身体をあまり動かさずにずっと座った姿勢を持続している、あるいは甘い菓子や脂肪分の多い間食を摂取しながらテレビを長時間鑑賞して体を動かさない生活を送っていると胆石が形成されやすくなります。

規則正しい食事をし、無理のない範囲で適度な運動をしながらストレスを解消するのも胆石症を予防する上で重要です。

適切に運動を実践することは、生理的に胆汁の流れを良くして、体重を上手くコントロールするのにも有効です。普段から軽い歩行や水泳など有酸素運動を行うように心がけましょう。

油脂の多い食事を避ける

コレステロールを始めとする脂肪分が豊富な食事は肥満体形を作りやすくして、さらに脂質異常症の罹患率を上昇させて胆石症の重要なリスク因子となります。

脂質が多い食事は胆石の発症リスクを高めるので、過剰摂取は避けましょう。豆類やわかめ、昆布などの海藻類に含まれている水溶性食物繊維にはコレステロール成分の吸収を抑制する働きがあるので上手に取り入れるとよいでしょう。

食事の間隔を空けすぎない

食事の間隔が長すぎると、通常以上に一度に胆汁を合成する必要量が増して胆嚢に負担がかかり胆石ができやすくなります。

また、食事の摂取時間が不規則になってしまうと、胆汁を排泄する時間間隔も不規則になってしまい胆汁濃度が急激に濃厚になることで新たに胆石が形成されやすい環境が作られます。あるいはもともと存在していた胆石が粗大になる危険性もあります。

ですから、普段からなるべく食事間隔を一定にし、食事を抜くことなく、1日3食を規則正しく摂取するように心がけましょう。

青魚を食べる

いわしやあじ、さばなどの青魚を普段からあまり摂取しない場合には胆石が作られやすいことが判明しており、それには青魚の内部に多く含まれているエイコサペンタエン酸エステル(EPA)が関連しています。

EPAは、体内の中性脂肪成分やコレステロール血中濃度を下げて、血液をさらさらにして、動脈硬化の進行を抑制する効果が期待されています。

青魚を摂取することで良好なタンパク質やEPAの栄養成分を取り入れることができ、胆石発作軽減に繫がると考えられます。

胆石の原因、胆石になりやすい人の特徴と予防法を中心に解説してきました。

胆石にならないために、普段から脂っこい食事を出来るだけ控えて、一度に大量の食事を摂取しないように心がけると同時に、偏った食事や不規則な生活を避けるようにしましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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