遺伝する?アルツハイマー型認知症になりやすい人とは

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アルツハイマー型認知症になりやすい人は、どのような人でしょうか。遺伝は関係するのでしょうか。

ここではアルツハイマー型認知症になりやすい人の特徴や、関連のある病気について解説します。

アルツハイマー型認知症は遺伝する?

アルツハイマー型認知症には遺伝が関係しない孤発性と、遺伝が関係する家族性の2つのタイプがあります。

家族性アルツハイマー型認知症は、発症年齢が早く20歳代後半~50歳代に発症しやすいといわれています。この遺伝は優性遺伝形式であり、原因遺伝子としてAPP、PSEN1、PSEN2が同定されており、両親のどちらかが家族性アルツハイマー型認知症であると、その子供は50%の確率でアルツハイマー型認知症になると考えられています。

しかし、アルツハイマー型認知症の90%は遺伝と関係のない孤発性アルツハイマー型認知症といわれています。

アルツハイマー型認知症と関連のある病気

いくつかの病気が認知症のリスクを高めることがわかっています。ここでは関連のある病気を紹介します。

糖尿病

糖尿病の方は、健康な人と比較してアルツハイマー病に約1.5倍なりやすく、血管性認知症に約2.5倍なりやすいと言われています。また、糖尿病治療の副作用で重症な低血糖が起こると脳がダメージを受け、認知症リスクが上昇します。

さらに、糖尿病が引き起こすインスリン抵抗性の発症がアルツハイマー病の要因であるアミロイドβの蓄積を促すと考えられています。

糖尿病にならないような食生活をすることが大事ですが、すでに糖尿病の人は食事療法、運動療法、服薬治療などを指導に従って行うことが何より大切です。

歯周病

歯周病も認知症のリスクを高めると考えられています。一つの要因としては歯周病により噛む力が損なわれることが挙げられます。噛む力が損なわれると、噛むことで脳の中枢神経に与えていた刺激が減少し、それにより認知症のリスクが上昇するといわれています。

また、歯周病菌が体内に入ることでアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの受容体が増加し、アミロイドβの蓄積量が増加するという研究もあります。

2019年にはアルツハイマー病の患者の脳から歯周病菌が見つかり、この歯周病菌が脳の海馬を破壊していることが報告されています。

慢性腎臓病

腎臓機能障害患者を対象とした横断研究では、認知機能障害のリスクが47%増大することが示されています。また、透析患者は健康な人と比較すると認知機能の低下について2倍以上のリスクがあるという報告もあります。

慢性腎臓病と認知症の危険因子として高血圧や糖尿病、脂質異常症、加齢などが共通しているということのほか、腎不全に対して適切な治療を行わないことによる尿毒症により脳神経症状が生じること、腎機能低下による血管へのダメージなどが要因として考えられます。

高血圧

高血圧も認知症と深い関係があります。福岡県の久山町の40歳以上の全住民を対象とした疫学調査である久山町研究によれば、血管性認知症の発症リスクは、高血圧でない人と比較して、収縮期血圧160以上または拡張期血圧100以上の高血圧の人は、中年期で10.1倍、老年期で7.3倍といわれています。

高血圧により動脈硬化が起きてしまうと、脳梗塞や脳出血などによって脳の神経細胞がダメージを受けてしまいます。その結果、認知機能の低下をもたらしてしまうのです。

アルツハイマー型認知症になりやすい人

複数の研究結果から、認知症のリスクが高くなる人の特徴があります。いくつかの特徴について見ていきましょう。

短気な人

短気でイライラしやすい人は、仮に協調性があってもコミュニケーションがうまくいかない傾向にあります。些細なことで怒ってしまったり、自分の思い通りにいかないと人に当たってしまうことで、周りから嫌がられ、避けられるようになってしまいます。

その結果、独りになってしまうことが多く、人との関わりによる脳の刺激が得られなくなってしまいます。その結果、脳が衰えてしまうことで認知症を発症してしまいます。

神経症傾向が強い人

常に危機感がある神経質な人は、小さなことが気になってストレスを感じやすい傾向にあります。ストレスを感じやすいため、マイナス思考になりやすくうつ気味になることが多いです。ストレスやうつ症状は認知症になる可能性が高くなってしまいます。

協調性のない人

協調性がない人は、他人との関わりを持ちたがらないことが多く、会話をする機会が少ない傾向にあります。つまり、協調性がないと社会的に孤立しやすくなります。孤立してしまうとコミュニケーションの機会が減るだけでなく、脳の衰えにもつながります。

一人暮らしの人

日本は、世界と比較すると認知症にかかる割合が高い傾向にあります。その原因として、高齢者の一人暮らしが多いことが挙げられます。一人暮らしの場合、コミュニケーションの機会が大きく減ってしまいます。

昔と比較すると近所付き合いや地域の催しものも減少しており、人とのつながりをつくる機会が減りました。さらに、認知症の症状が少しでも現れると、反社会的な行動がみられるため、近隣住民とのトラブルを起こす可能性があります。近隣住民とのトラブルは引きこもりを招き、結果として認知症の進行を早めてしまう可能性もあります。

大量飲酒をする人

大量飲酒の傾向にある人やアルコール依存症の人は、認知症を発症するリスクが高くなります。アルコールを大量に飲むと、脳梗塞などの脳血管障害を起こして認知症になる場合や、脳が萎縮して小さくなることで認知症を引き起こす場合があるからです。大量飲酒は認知症だけでなく、がんや高血圧症のリスクも高めてしまうため、注意が必要となります。

ここではアルツハイマー型認知症について詳しく見ていきました。アルツハイマー型認知症は、遺伝性はかなり低く、性格や生活によるものが高いとされています。

生活習慣は運動、睡眠、食事など日々の生活の中で意識して改善することが可能です。これらの対策をとることで、動脈硬化や肥満といった生活習慣病につながるリスクも軽減し、脳血管の血流改善にも効果的となります。生活習慣の改善を心がけていきましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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