見逃し注意!気づかないほど軽い水疱瘡の見分け方と対応方法
水疱瘡(みずぼうそう)は皮疹が出る病気で、他の人に感染させるため小児の場合は出席停止にもなる感染症です。しかし、全例で高熱と全身の皮疹が出るわけではないため、場合によっては水疱瘡と気づかずに生活を続けてしまうことがあります。ここでは症状が軽く、気づかないこともある水疱瘡について解説します。
目次
水疱瘡とは
水疱瘡は水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症で、正式名称を水痘といいます。特に2歳から8歳頃の小児に多く、空気感染するウイルスですから免疫がない集団に感染者が一人出ると一気に感染が広がることもあります。
ウイルスは空気感染として広がりますが、体の中に入ると気道粘膜に付着して、その場所やリンパ節で増加します。そして、ある一定以上ウイルスが増加すると血液に混ざり全身に広がっていくのです。
水疱瘡の症状
症状としては、発熱や全身倦怠感が出るのと同時に体全体、特に体幹部を中心に皮疹が出てきます。皮疹は、最初は赤っぽい皮疹ですが、だんだんと水疱(水ぶくれ)を形成します。水ぶくれの中身はだんだんと膿となり、膿疱と呼ばれる状態になります。そのまま経過を見ていると、だんだんと乾燥してかさぶたのように変化してきます。
このような皮疹の変化は、全体で同時に起こるのではなく、皮疹1つ1つが変化していきますから、症状が強いときには全身にさまざまな種類の皮疹が出ていることになります。
症状は発熱から数えるとおおむね1週間程度で収まります。全ての発疹がかさぶたになると感染力が無くなるため、登園・登校も許可されます。ただし、その後もしばらくはかさぶたのまま残っているので、完全に症状が消失するまでは1か月程度かかることもあります。
対症療法による治療
基本的には重症化することも無く、治療としては特異的な治療もありませんので対症療法を行うのみです。自分自身の免疫で沈静化します。しかし、成人や免疫力が低下した人に感染すると重症化して肺炎などを合併することがありますので注意は必要になります。
水疱瘡の感染経路
感染経路としては、気道の粘膜で増殖したウイルスが、呼吸や咳、くしゃみなどで排出される場合もありますし、かさぶたにまだなっていない水疱の中身にもウイルスが存在しますから、その皮疹が破れてウイルスを含んだ中身が放出されることで排出される場合もあります。
帯状疱疹との関係
水痘で注意しなければならないのは、成人になってから帯状疱疹を発症する可能性があるということです。ウイルスは、症状が無くなっても神経細胞の中にとどまっていて、免疫が弱くなったときに増殖を急に始めて神経に沿って広がり、皮疹を形成します。成人用のワクチンもありますが、小児期にかからないことが重要ですので、小児期の予防接種など感染対策はしっかり行いましょう。
気づかないほど軽い水疱瘡もある?
熱が出て特徴的な皮疹がいくつも体幹部をはじめとして全身にできれば、何かおかしいと思ってすぐに小児科に連れて行く親がほとんどだと思いますが、時折それほど症状が無く、水疱瘡なのかどうか判断がつかない場合があります。どのような状況でしょうか。
軽い症状の水疱瘡の特徴
軽い水疱瘡と言っても、ウイルスは口から入ってきて、粘膜で増殖して体の中には広がっています。しかしこのとき、免疫の力が強いと血液中の免疫細胞がウイルスをすぐに退治しますから、症状が軽微で済みます。
免疫力が強い場合としては、元々抵抗力が強い人という場合もありますし、ワクチンを接種したあとで水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を持っている場合も考えられます。
このようなときには、熱が出ずに皮疹しかない場合や、皮疹が体幹部の一部だけで済む場合、皮疹が膿瘍にまで至らずすぐに枯れてしまう場合等があります。
軽い水疱瘡でも感染する
軽いから感染力も弱いと考えるかもしれませんが、それは間違いです。先ほど説明したように、水痘帯状疱疹ウイルスは体内に入り込むと粘膜で増殖し、体中に広がります。そのため、体中に広がっている時点で粘膜での増殖がおこっているということになります。
そうすると、粘膜の細胞の中には水痘帯状疱疹ウイルスは大量にいますし、ウイルスは他の人に感染しようと細胞の表面に出てきて、それが呼吸や咳、くしゃみに合わせて外界へ放出されます。
その放出されたウイルスが口に入ることで、他の人への感染が成立してしまうのです。
特に予防接種を打っていない人、成人で免疫力が下がっている人、高齢者などの近くには近寄らせないようにして、本人や周囲も手洗いうがいをして感染対策をするようにしましょう。
水疱瘡と間違えやすい病気や症状
水疱瘡と間違えやすい病気にはどのような病気があるのでしょうか。
手足口病
手足口病は、その名の通り手、足、口に皮疹ができる病気です。おもに4歳以下の乳幼児にかかる病気で、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスが感染することによって引き起こされます。
発熱が伴うことも多いですが、皮疹のみとなることも時折あります。よくできるのは左右の手足の先の方になります。手のひらや足の裏にもできるのが特徴的です。乳幼児では肘や膝、臀部まで広がることもありますが、体幹部にできることは稀です。
また、皮疹だけではなくのどに水疱やアフタ(潰瘍)ができるのも特徴です。そのため、乳児では痛みのために水分を飲めないという症状が出ることもあります。
皮疹の種類としては水ぶくれが主となります。その他、周りが発赤してきます。1つ1つの皮疹は水疱瘡とあまり変わりないため、皮疹の形だけから水疱瘡と手足口病を鑑別することは困難ですが、皮疹の分布によって容易に鑑別は可能です。
手足口病の場合は、体調不良がなければ特に登園・登校不可という判断にはなりません。また、皮疹は1週間後に水ぶくれの中身が吸収されて淡褐色となり、治癒します。
基本的には発熱は3日以内に解熱することがありますが、稀に髄膜炎などのように重症化するときもあります。髄膜炎は嘔吐や頭痛を伴い、高熱が2日以上続くなどの特徴がありますので、ご注意ください。
治療は対症療法として痛み止めを内服する程度となります。
水いぼ
水いぼは、正式名称としては伝染性軟属腫という病気です。伝染性の皮膚病で、ポックスウイルスというウイルスの感染によって発症します。皮膚が弱かったり、薄かったりといった状態のときに感染しやすいため、乳幼児やアトピー性皮膚炎の子どもなどは発症しやすくなります。
皮疹は、皮膚全体がぷくっと膨れたような様子を認めます。基本的には白色ですが、時にはピンクや赤みを帯びた色になることがあります。大きさは大きくても5mm程度です。中身は水分ではなく、白い塊が詰まっています。
ときどきかゆみを伴います。かゆいからと言ってかいてしまうと、つぶれて中身が放出され、周りにウイルスがまき散らされます。それによって周囲に感染が広がり、増えていってしまいます。
基本的に治癒すると跡は残りません。水疱瘡とは見た目が全く違い、すぐに鑑別が可能です。
虫刺され
虫刺されも、水疱瘡と鑑別が必要な疾患になります。虫に刺された場所には丘疹(きゅうしん)や膨隆疹が認められます。
虫刺されは多くの場合、四肢の露出部に出てきます。体幹部に虫刺されができることはあまりないでしょう。また、水疱瘡ほど大量にできることもありません。鑑別は比較的容易です。
軽い水疱瘡の対応方法
軽い水疱瘡とはいえ、前述のように周囲に感染させる力はありますから感染対策は必須です。
まず体幹部に皮疹がある場合は、水疱瘡の可能性があると必ず疑うようにしましょう。そして疑ったら受診が必要です。ただし、いきなり小児科を受診すると他の人に感染させてしまう可能性がありますから、かならず連絡をしてから受診するようにしましょう。
受診して、水疱瘡の可能性があると言われた場合には、自宅で安静にしてください。手洗いやうがいは本人、家族ともに必要です。また、他の乳幼児や高齢者など、感染すると重篤化する可能性がある人の近くには近寄らせないようにしてください。
基本的には安静にしていれば改善してきます。登園・登校は小児科医の指示に従ってください。特に皮疹が少量だと、全て枯れたと判断するのが難しいことがあります。迷ったときは小児科で相談するようにしましょう。